「ベトナムのIT人材の給与は実際いくらなのか。平均月収5万円という統計と、月40万円の見積もりの差はどこから来るのか」——オフショア委託や現地採用の予算を組む担当者から、こうした相談をよく受けます。人材紹介会社の記事と開発会社の記事で数字が違い、どれを信じてよいか分からない。シニアは日本と変わらないと聞いて、「安い」という前提が揺らいでいる方も多いはずです。
結論から言うと、ベトナムのIT人材の給与は2026年時点で、中堅(3〜4年)のバックエンドエンジニアで月3,010万VND(約18万円)、8年超で5,490万VND(約33万円)が中央値です(ITviec 2025-2026)。日本側には経験年数の層別に集計した公的統計がないため一律の倍率では比べられませんが、層が上がるほど日本との差は縮まり、CTOクラスでは日本の情報通信業の平均に近づきます。「一律に安い」は通用しません。そして「日本企業が払う単価」は、この給与に法定費用23.5%・13か月目給与・テトボーナス・採用費・日本語人財のプレミアム・PM/BrSE・会社の利益を積み上げたもので、給与の1.5〜2.5倍になるのが構造です。
この構造を押さえれば、統計の平均月収と見積もりの差は説明でき、オフショア委託でも直接雇用でも、昇給率と為替を織り込んだ予算が組めます。逆に「給与=単価」「額面×12が人件費」と考えたまま進めると、必ず計画が狂います。
本記事では、ベトナムIT人材の市場(人口・IT人材数・卒業生・日本語学習者・主要都市・採用難)、職種・経験年数別の給与水準と日本との比較、社会保険と賞与の慣行、昇給率と離職の目安、そして給与から単価への積み上げと当社の公開単価との対応、離職への対処の順に、出典と年版を明記しながら整理します。為替は1USD=150円、1万VND=約60円の換算目安で併記します。
私は人材業界の出身で、2018年からホーチミンでベトナムオフショア開発の体制づくりに携わり、約100社の相談に乗ってきました。給与の相談で最も多いのは「この単価は給与の何倍なのか」という問いです。この記事を読み終えるころには、その問いに自分の言葉で答えられ、社内説明に使える数字が揃っているはずです。
目次
- ベトナムIT人材の市場
- 市場の基礎数値
- 主要都市の比較
- 需要側の現実
- ホーチミンで見ている供給と需要のずれ
- ベトナムIT人材の給与水準【2026年版】
- 職種・経験年数別の月給中央値
- 日本との比較と日本語人財のプレミアム
- 給与の外側に乗る費用
- 昇給率と離職の目安
- 給与と「日本企業が払う単価」の関係
- 現地給与から単価への積み上げ
- 当社の公開単価との対応
- 給与が上がっているのに単価が安定している理由
- 離職への対処
- ベトナムIT人材の給与でよくある質問
- Q1. ベトナムのITエンジニアの年収はいくらですか?
- Q2. 日本語ができると、いくら給与が高くなりますか?
- Q3. 社会保険の会社負担は何%ですか?
- Q4. ベトナムIT人材の離職率は高いのですか?
- Q5. 現地給与が上がると、オフショアの単価も上がりますか?
- まとめ: 給与は職種・経験年数で見て、外側の費用を足し、単価は内訳で判断する
ベトナムIT人材の市場——人口1億人、日本語学習者17万人、日本語要件のIT求人は3.5〜4.0%、主要3都市

給与の数字を読む前に、その給与を決めている市場を押さえておきます。ベトナムのIT人材は「若くて多くて安い」と一括りに語られがちですが、2026年の実態は「新卒層の供給は厚い一方、経験3年以上と日本語ができる人財だけが各国企業に取り合われている」という偏った市場です。この偏りが、後で見る経験年数別の給与差と日本語プレミアムの正体になります。まずは供給側の基礎数値から確認します。
市場の基礎数値——日本語学習者は約17万人、日本語要件のIT求人は3.5〜4.0%
項目 | 数値 | 出典・年版 |
|---|---|---|
人口 | 約1億人(2023年に1億人突破)、生産年齢人口6,700万人以上 | JETRO 基礎的経済指標(2025年) |
日本語学習者 | 約17万人(169,582人) | 国際交流基金「海外日本語教育機関調査」2021年度 |
日本語スキルを要求するIT求人の比率 | 3.5〜4.0% | TopDev「Vietnam IT Market Report 2024-2025」(2026-09-21にレポート本体で確認) |
IT人材の需給 | 不足を感じる企業56.8% | JETRO/現地報道(2023年度) |
ここで注目していただきたいのは、日本語に関する2行の落差です。日本語学習者は約17万人いるのに、日本語スキルを求めるIT求人は全体の3.5〜4.0%しかありません。「日本語ができるITエンジニア」は、母集団としては存在しても、求人側が要件に入れた瞬間に候補者が一気に絞られる層だということです。この希少性が給与に乗ります。
主要都市の比較——ホーチミン・ハノイに求人が集中し、ダナンは小規模
都市 | IT求人の母数 | 特徴 | 給与水準の傾向 |
|---|---|---|---|
ホーチミン | 国内最大 | 商業の中心。外資・スタートアップが集中し、転職市場が最も活発 | 全国で最も高い(基準) |
ハノイ | 大規模 | 首都。国営系・大手SI・通信系が厚い。大学からの新卒供給が多い | ホーチミンとほぼ同等〜やや低い |
ダナン | 小規模 | 中部の開発拠点。生活費が低く、定着率が高いとされる | ホーチミン比で低い傾向 |
都市別のIT求人数・給与を、ベトナム政府が公式に発表している統計は確認できません。求人メディアや人材会社が公表するシェアの数字は各社の掲載案件を母数にした独自集計のため、本稿では掲載していません。ダナンは人件費を抑えやすい一方、シニア層と日本語人財の母数が小さく、増員や交代に時間がかかります。当社が拠点をホーチミンに置いているのは、人財の厚みと交代のしやすさを優先しているためです。
需要側の現実——日系企業の48.2%が「従業員の採用が困難」、賃上げ率はアジア上位
供給の数字だけを見ると潤沢に思えますが、需要側の数字は逆を示します。JETROの2025年度海外進出日系企業実態調査では、ベトナムに進出する日系企業の48.2%が経営上の問題点として「従業員の賃金上昇」「人材の採用が困難」を挙げており、採用難を挙げる比率はここ2年で大きく伸びました。賃上げ率もアジア主要国の中で上位に位置し、年5〜7%の昇給が続いています。
つまりベトナムは「人が余っている国」ではなく、「未経験層は余り、即戦力は足りない国」です。この構図は日本の採用市場とよく似ていて、給与も同じ形で動きます。新卒・1年未満の給与は横ばいに近く、経験3年以上と日本語人財の給与だけが毎年上がっていく。統計の「平均月収」を見て安いと判断すると、実際に採用や委託をする層の相場と2倍以上ずれるため要注意です。
ホーチミンで見ている供給と需要のずれ——若手は集まるが、3年以上と日本語は取り合い
私は人材業界の出身で、2018年からホーチミンでベトナムオフショア開発の体制づくりに携わり、約100社の相談に乗ってきました。現場の感覚も統計と同じです。未経験〜2年の候補者は募集をかければ集まります。一方、実務3年以上でレビューを任せられる層と、日本語N2以上で仕様の行間を読める層は、募集をかけても集まらず、既に働いている人に声をかけ合う市場になっています。
この2つの層は、日系企業だけでなく、韓国系・シンガポール系、そして欧米企業のリモート案件とも取り合いです。給与は「ベトナムの物価」ではなく「その人を採りたい各国企業の提示額」で決まります。ここを理解しておくと、次章の職種・経験年数別の給与表が、単なる数字の羅列ではなく「誰と取り合っているか」の地図として読めるようになります。
ベトナムIT人材の給与水準【2026年版】——職種・経験年数別の月給、日本との比較、社会保険・13か月目給与・昇給率・離職

ここからが本題です。ベトナムのIT人材の給与を、職種と経験年数の2軸で、出典と年版を付けて整理します。数字の出どころは、ベトナム最大級のIT求人サイトITviecが公表した「Vietnam IT Salary & Recruitment Market Report 2025-2026」(回答1,839名、2025年5〜7月および10〜11月調査)の月給中央値です。中央値なので、平均値より実感に近い水準になります。為替は1万VND=約60円、1USD=150円の換算目安で併記します。
職種・経験年数別の月給中央値——ITviec 2025-2026(回答1,839名)
単位は万VND、括弧内は円換算(万円・1万VND=60円)。「—」は回答数が少なく中央値が公表されていない区分です。
職種 | 1年未満 | 1〜2年 | 3〜4年 | 5〜8年 | 8年超 |
|---|---|---|---|---|---|
バックエンド開発 | 1,240(7.4) | 2,535(15.2) | 3,010(18.1) | 3,990(23.9) | 5,490(32.9) |
フロントエンド開発 | — | — | 3,080(18.5) | 4,180(25.1) | 4,630(27.8) |
フルスタック開発 | 1,010(6.1) | 2,035(12.2) | 3,450(20.7) | 4,180(25.1) | 4,480(26.9) |
モバイル開発 | 1,415(8.5) | 2,880(17.3) | 2,905(17.4) | 3,735(22.4) | 4,570(27.4) |
QA・テスター | 1,415(8.5) | 1,420(8.5) | 2,070(12.4) | 2,530(15.2) | 3,650(21.9) |
プロダクトオーナー・PM | — | 2,530(15.2) | 4,270(25.6) | 6,040(36.2) | 7,500(45.0) |
テックリード | — | 4,530(27.2) | 5,385(32.3) | — | 6,845(41.1) |
データエンジニア | — | — | 5,690(34.1) | — | — |
CTO・CIO・VPoE | — | — | 10,030(60.2) | — | — |

この表から読み取っていただきたいのは3点です。1点目は、経験年数による伸びが大きいこと。バックエンドは1年未満7.4万円から8年超32.9万円へ、約4.4倍になります。2点目は、職種による差が経験年数の差より小さいこと。QA・テスターだけは全レンジで2〜3割低く出ますが、開発職同士の差は同じ経験年数なら1〜2割に収まります。3点目は、マネジメント職が跳ねること。PMは5〜8年で36.2万円、テックリードは8年超で41.1万円と、開発職の1.3〜1.4倍になります。「安いのは開発の実務層まで」というのが数字の示すところです。
日本との比較と日本語人財のプレミアム——層別の公的統計はなく、比較は業種平均で押さえる
日本側には、ソフトウェアエンジニアを経験年数の層別に集計した公的統計がありません。公表されている一次統計は業種単位で、国税庁「令和6年分 民間給与実態統計調査」(2025年9月公表)によれば、情報通信業の平均給与は659.5万円(前年比+1.6%)、給与所得者全体の平均給与は478万円でした。情報通信業の平均給与を月換算すると約55万円です。
前節のITviecの中央値と並べると、ベトナムの開発実務層(3〜4年)の月給中央値は約18万円で、日本の情報通信業の平均月額を大きく下回ります。一方、テックリードやPM、CTOクラスになると日本の業種平均に近い水準まで上がり、層が上がるほど差は縮まります。ただし日本側は業種平均、ベトナム側は職種×経験年数の中央値と母集団が違うため、同じ層同士を突き合わせた倍率として扱うことはできません。「ベトナムは日本の3分の1」と一律の倍率で見積もると、シニアとマネジメント層で計画が狂います。
もう1つ、日本企業にとって重要な変数が日本語です。TopDev「Vietnam IT Market Report 2024-2025」では、日本語または韓国語を業務遂行レベルで要件に含む求人の提示額は、全求人の平均より少なくとも38%高いという結果が出ています(2026年9月21日にレポート本体で確認)。現場の感覚では、N2相当で通常相場の30%増、N1相当で50%増あたりが2026年のホーチミンの相場感です。前章で見たとおり日本語要件のIT求人は全体の3.5〜4.0%しかなく、供給より需要の伸びが速い。当社が2,000名以上のIT人財データベースで日本語N1〜N2相当の層を自前で押さえているのは、この層を都度の公募で確保しようとすると時間もコストも読めなくなるためです。
給与の外側に乗る費用——社会保険等の雇用主負担23.5%、13か月目給与、テトボーナス
給与表の数字は、あくまで従業員に提示する額面(Gross)です。雇用する側が実際に負担する総人件費は、これに法定費用と賞与の慣行が乗ります。
費目 | 雇用主負担 | 従業員負担 | 内容 |
|---|---|---|---|
社会保険 | 17.5% | 8% | うち労災保険料0.5% |
健康保険 | 3% | 1.5% | 医療給付 |
失業保険 | 1% | 1% | 失業給付 |
労働組合経費 | 2% | — | 政令191/2013/ND-CP。公的保険料の算定基礎賃金が対象 |
合計 | 23.5% | 10.5% | 12か月以上の契約で就労する外国人も同率 |
13か月目給与 | 月給1か月分 | — | 法定ではなく慣行。テト前に支給 |
賞与(JETRO 2025年度調査) | 基本給1.6〜1.8か月分 | — | 製造業作業員1.6・製造業エンジニア1.8・非製造業スタッフ1.6・非製造業マネージャー1.7か月 |
法定費用23.5%に13か月目給与とテトボーナスを足すと、総人件費は額面の1.3〜1.5倍になります。月給3,010万VND(約18.1万円)のバックエンドを1人雇う場合、会社が負担する年間の人件費は額面ベースの約1.45倍、月あたり約26万円が目安です。ここに採用費、オフィス、PC、労務管理が乗ります。「額面×12が人件費」と考えたまま予算を組むのは失敗のもとです。料率はジェトロ「外国人就業規制・在留許可、現地人の雇用(ベトナム)」(最終更新2025年9月12日、2026-09-21確認)によります。全職種を含めた総人件費の考え方は「ベトナム 人件費」の記事で詳しく扱っています。
昇給率と離職の目安——年5〜7%の昇給、テト後に動く転職、そして「先送り」の兆し
最後に、時間軸の変数です。JETROの調査では、ベトナムの賃上げ率は年5%台中盤から6〜7%で推移しており、アジア主要国の中で上位に位置します。IT職はこれより高く5〜10%とする解説もあります。3年契約のオフショア予算を組むなら、現地給与ベースで年5〜7%の上昇を織り込んでおくのが安全です。
離職については、ベトナムのIT業界全体を対象とした公的な離職率統計は存在せず、「ベトナムの離職率は20%」といった数字が出典なしに流通しています。断定は避けますが、動き方には明確な季節性があります。13か月目給与とテトボーナスを受け取った直後、つまりテト明けの2〜3月に転職が集中します。2026年のテトは2月14日から22日ですので、この時期にチームが動く前提で採用・引き継ぎの計画を立ててください。
転職の理由は給与だけではありません。ITviecの2025-2026レポートは、給与水準が停滞したことで転職を先送りしている層が一定数いると分析しており、市況が戻れば動きが増える可能性を指摘しています。裏を返せば、相場どおりの給与と成長できる技術環境を用意できれば、定着は十分に見込めるということです。
さて、ここまでで現地の給与は見えました。では、日本企業が受け取る見積書の「月40万円」は、この給与とどうつながっているのでしょうか。次章でその積み上げを分解します。
給与と「日本企業が払う単価」の関係——積み上げの構造、当社の公開単価、給与が上がっても単価が安定する理由

給与の相談で最も多いのが「統計の平均月収と、見積書の月40万円の差が埋まらない」という問いです。答えは単純で、単価は給与そのものではなく、給与を含む総人件費に体制の費用と利益を積み上げたものだからです。費用は「人月単価×人数×期間」で決まりますから、単価の中身を分解できれば、見積もりの妥当性はその場で判断できます。ここでは実務3年目安のバックエンド1名を例に、現地給与から単価までを段階で積み上げます。
現地給与から単価への積み上げ——実務3年のバックエンド1名の試算
単位は万円(月額)。A列は日本語要件なしのエンジニア、B列は日本語N2相当の人財を想定した当社の試算です。金額は目安であり、会社・案件・都市によって変動します。
段 | 積み上げる費目 | A 日本語なし | B 日本語N2相当 |
|---|---|---|---|
1 | 現地給与(額面・ITviec 3〜4年の中央値) | 18.1 | 23.5(+30%のプレミアム) |
2 | 法定費用(社会保険等の雇用主負担23.5%) | 22.4 | 29.0 |
3 | 13か月目給与・テトボーナス(年1.5か月分を月割) | 24.7 | 31.9 |
4 | 採用費・オフィス・PC・ライセンス・労務・教育の按分 | 28.7 | 35.9 |
5 | 日本人PM/BrSE・品質管理(レビュー・テスト)の按分 | 34.7 | 41.9 |
6 | 開発会社の利益・為替変動の吸収 | 40.1 | 48.9 |
合計(=日本企業が払う月額単価) | — | 約40万円 | 約49万円 |

A列の合計が偶然にも、オフショア開発白書2025年版(オフショア開発.com、2026年9月21日確認)のベトナムのプログラマー単価40.1万円と一致します。同白書のブリッジSEは59.0万円、プロジェクトマネージャーは71.4万円ですから、B列の49万円はその中間に位置します。つまり見積書の単価は、現地給与のおよそ1.5倍から2.5倍のレンジに収まるのが構造です。逆に、この積み上げのどの段も説明できない会社は要注意です。単価の内訳を聞いたときに「市場相場です」としか返ってこない場合、間に再委託が入っている可能性を疑ってください。契約形態ごとの単価の考え方は「エンジニア単価」の記事、ラボ型の費用の内訳は「ラボ型開発 費用」の記事で扱っています。
当社の公開単価との対応——1,500USD・2,000USD・3,000USDに何が含まれるか
当社は単価を公開しています。実務3年目安で1,500USD(1USD=150円換算で約22.5万円)、5年目安で2,000USD(約30万円)、10年目安およびブリッジSEで3,000USD(約45万円)です。当社調べで市場相場の約2分の1にあたります。最小構成は日本人PMをフロントに置いて2〜3人月で、月額約80万円からです。
この数字を先ほどの積み上げ表と並べると、1,500USDはA列の40.1万円よりかなり低く見えます。差の理由は3つあります。1つ目は、公開単価が下限の目安であり、スキルセットと日本語要件で変動すること。2つ目は、ITviecの中央値が外資系やプロダクト企業を含む市場全体の値で、受託開発の給与分布とそのまま一致するわけではないこと。3つ目が構造的な理由で、当社は2,000名以上のIT人財データベース(日本語N1〜N2相当を含む)から直接アサインしており、協力会社や紹介を経由する仲介マージンの段がないことです。同じ給与の人財でも、間に1社入れば単価は上がります。単価の差は「誰をアサインするか」と「間に何社入るか」で決まる、というのが実情です。
当社の単価に含まれるのは、パターンA(日本人PM/BrSE+エンジニア・推奨)またはパターンB(エンジニアのみ)の体制、日本人PMによる設計レビュー、Gitのプルリクエストによるコードレビューの標準化、リリース前のダブルチェックという品質3点です。契約と支払いは日本国内法人・日本法準拠で、海外送金は不要です。ブリッジSEの役割と単価の考え方は「ブリッジSE」の記事にまとめています。
給与が上がっているのに単価が安定している理由——USD建て、競争、AI活用、会社側の吸収
ここで矛盾に見える事実があります。現地給与は年5〜7%上がり続けているのに、オフショア開発白書2025年版のベトナムのプログラマー単価は40.1万円で前年比プラス1.8%と、ほぼ横ばいです。理由は4つあると見ています。
1つ目は、契約がUSD建てまたは円建てで、VND高やVND安の影響が直接は出にくいこと。2つ目は、ベトナムがオフショア開発先として43%のシェアを占め、比較される会社の数が増えて価格競争が働いていること。3つ目は、AI活用による生産性の向上で、同じ単価でこなせる量が増えていること。当社もAI活用を前提とした開発体制を組んでいます。4つ目は、昇給分を開発会社側が吸収し、単価に即座には転嫁していないことです。
ただし4つ目は永続しません。現地給与が年5〜7%で上がり続ければ、いずれ単価に反映されます。3年以上の計画を立てるなら、単価の年2〜3%上昇と為替の変動を織り込んでおくのが現実的です。ベトナムのオフショア市場の全体像は「ベトナム オフショア開発 現状」の記事で扱っています。
離職への対処——定着施策と、体制で吸収する当社の位置づけ
給与と単価を理解しても、テト後に主力が抜ければ計画は崩れます。対処は2段構えです。発注側にできるのは、相場どおりの給与水準を受け入れること、技術的に成長できるタスクを用意すること、そしてドキュメントとコードレビューで個人への依存を下げることです。私が現地で見てきた限り、技術的に伸びる実感がないチームからは、給与が相場どおりでも人が抜けます。
開発会社側にできるのは、人財の供給と交代の速さで吸収することです。当社は2,000名以上の人財データベースから直接アサインし、契約前に候補者と面談していただいたうえで、1名から、最短2週間で開始できます。増員は約1週間、縮小と交代(リプレイスメント)は1か月単位で対応します。介護記録SaaS「CareViewer」では、日本語のブリッジSE1名とフルスタックエンジニア2名の体制で、従来の半分以下のコストで継続開発を進めており、週次で優先順位を判断していただく形が定着しています。「想像以上にエンジニアのレベルが高い」という声もいただきました。
教訓として申し上げたいのは、給与表を暗記しても予算は組めない、ということです。必要なのは、給与に何が乗って単価になるかの構造と、給与が上がる市場で誰が何を吸収するかの取り決めです。なお、オフショア委託ではなく現地で直接雇用する場合は、給与設計と社会保険の手続きが自社の責任になります。その進め方は「ベトナム 雇用代行」の記事をご覧ください。
ベトナムIT人材の給与でよくある質問

給与の相談の場で繰り返しいただく質問を5つにまとめました。社内での予算説明にそのままお使いいただける形で回答します。
Q1. ベトナムのITエンジニアの年収はいくらですか?
月給の中央値に13か月目給与とテトボーナスを加えると、年収は月給の13〜14か月分が目安です。ITviec 2025-2026の中央値で計算すると、バックエンド3〜4年で月18.1万円ですから年収約240万円、8年超で月32.9万円ですから年収約440万円になります(1万VND=60円換算)。ここに会社負担の法定費用23.5%は含まれていません。
Q2. 日本語ができると、いくら給与が高くなりますか?
TopDev「Vietnam IT Market Report 2024-2025」では、日本語または韓国語を業務遂行レベルで要件に含む求人の提示額は、全求人の平均より少なくとも38%高いという結果が出ています。現場の相場感では、N2相当で通常水準の30%増、N1相当で50%増あたりです。日本語要件のIT求人は全体の3.5〜4.0%と少なく、需要の伸びが供給を上回っているためです。
Q3. 社会保険の会社負担は何%ですか?
社会保険17.5%(うち労災保険料0.5%)、健康保険3%、失業保険1%、労働組合経費2%の合計23.5%が雇用主負担です(従業員負担は10.5%)。料率はジェトロ「外国人就業規制・在留許可、現地人の雇用(ベトナム)」によります。これに13か月目給与とテトボーナスを加えると、総人件費は額面給与の1.3〜1.5倍になります。
Q4. ベトナムIT人材の離職率は高いのですか?
IT業界全体を対象とした公的な離職率統計は存在せず、流通している数字の多くは出典が不明です。断定は避けますが、13か月目給与とテトボーナスの支給後、テト明けの2〜3月に転職が集中する季節性ははっきりしています。2026年のテトは2月14日から22日です。転職の理由は給与だけではなく、技術的に成長できる環境かどうかも効きます。
Q5. 現地給与が上がると、オフショアの単価も上がりますか?
短期的には連動しません。オフショア開発白書2025年版のベトナムのプログラマー単価は40.1万円で前年比プラス1.8%と、給与の上昇率(年5〜7%)を下回っています。USD建ての契約、比較される会社の増加、AI活用による生産性向上、そして昇給分の開発会社側による吸収が理由です。ただし吸収は永続しないため、3年以上の計画では単価の年2〜3%上昇と為替変動の織り込みが必要。
まとめ: 給与は職種・経験年数で見て、外側の費用を足し、単価は内訳で判断する
ベトナムのIT人材の給与は、ITviec 2025-2026の中央値で、バックエンド開発が1年未満1,240万VND(約7.4万円)、3〜4年3,010万VND(約18.1万円)、8年超5,490万VND(約32.9万円)です。日本側は層別の公的統計がなく一律の倍率では比べられませんが、層が上がるほど差は縮まり、CTOクラスでは国税庁「令和6年分 民間給与実態統計調査」による情報通信業の平均給与659.5万円に近づきます。「一律に安い」は2026年には通用しません。供給側は新卒層の裾野が厚い一方、日系企業の48.2%が採用難を挙げ、経験3年以上と日本語人財だけが取り合いになっているためです。
給与の外側には、社会保険等の雇用主負担23.5%、13か月目給与、テトボーナスが乗り、総人件費は額面の1.3〜1.5倍になります。さらに採用費・オフィス・日本人PM/BrSE・品質管理・会社の利益を積み上げたものが「日本企業が払う単価」で、現地給与の1.5〜2.5倍のレンジに収まります。当社は2,000名以上のIT人財データベース(日本語N1〜N2相当を含む)から直接アサインし、仲介マージンなしで実務3年目安1,500USD(約22.5万円)・5年2,000USD・10年およびブリッジSE3,000USDと単価を公開しています。1名から、最短2週間で開始でき、増員は約1週間、縮小と交代は1か月単位です。
予算を組むときは、現地給与の年5〜7%の上昇と、テト明け2〜3月に人が動く前提を織り込んでください。逆に、単価の内訳を段階で説明できない会社は避けたほうが無難です。全職種を含めた総人件費の考え方はベトナムの人件費、契約形態別の単価はエンジニア単価の相場もあわせてご覧ください。現在の体制と要件をお聞かせいただければ、ベトナムのIT人財で組める体制と概算見積もりでお答えします。合わない案件にはその旨も率直にお伝えします。