「ラボ型開発は月額いくらで、何ができるのか」——予算を組む段階で、この問いに答えられる資料は意外と少ないものです。単価は安いと聞くが、ブリッジSEやPM、管理費が乗ると総額はいくらになるのか。自社の規模で効率が出るのか。国内で採用するより本当に安いのか。見積もりを取る前に、相場と内訳の物差しが欲しい方は多いはずです。
結論から言うと、ラボ型開発の費用は「人月単価×人数」ではなく、「エンジニア人件費+ブリッジSE/PM+インフラ+管理費」の総額で読むべきです。市場の目安としては、オフショア開発白書2025年版(オフショア開発.com)のベトナムのプログラマー40.1万円・ブリッジSE59.0万円・PM71.4万円が参考になります。当社は実務3年1,500USD(約22.5万円)・5年2,000USD(約30万円)・ブリッジSE3,000USD(約45万円)を公開しており、日本人PM+2〜3人月の最小構成で月額約80万円からです(1USD=150円換算の目安)。ただし、管理費が「一式」の見積もりや、BrSE・PMが別料金の見積もりは総額が読めません。
内訳と総額で読めるようになると、2社の見積もりを同じ物差しで比べられ、予算申請の根拠も作れます。逆に、単価だけで比べると、安く見えた会社に後からBrSE・PM・管理費が乗り、総額で逆転することがあります。
本記事では、月額費用の内訳と役割別・体制別の相場、体制別シミュレーション3パターンと年間費用、請負・SES・国内採用との比較、費用を抑える方法と最低予算の目安、契約時に確認する項目、よくある質問の順に解説します。他社の相場は出典を明記し、当社の数字は公開単価から試算しました。
私は人材業界の出身で、2018年からホーチミンでベトナムオフショア開発の体制づくりに携わり、約100社の相談に乗ってきました。相談で最も多いのが「見積もりの内訳が違って比べられない」というものです。この記事を読み終えるころには、自社の想定体制で月額と年間費用を試算し、見積もりを内訳で読めるようになるはずです。
目次
- ラボ型開発の費用の内訳と相場
- 月額費用の内訳(表)
- 役割別の人月単価(表): 国内とベトナム、当社の公開単価
- 体制別の月額相場(表): 国内とベトナム
- 見積もりは「総額」と「単価に何が含まれるか」で読む
- 体制別シミュレーション3パターンと年間費用、請負・SES・国内採用との比較
- シミュレーション(表): 小規模3名、中規模7名、大規模14名の体制例
- 当社の公開単価での試算(表)
- 契約形態別のコスト比較(表): 請負・SES・ラボ型
- 国内採用との比較
- 費用を抑える方法と契約時の確認
- 費用を抑える5つ
- 最低予算の目安
- 契約時に確認する7項目(費用に直結するもの)と、当社の単価に含まれるもの
- ラボ型開発の費用でよくある質問
- Q1. 最低予算はいくらですか?
- Q2. 請負と比べて高いですか、安いですか?
- Q3. 国内採用とどちらが安いですか?
- Q4. 見積もりの管理費はどう見ればよいですか?
- Q5. 途中で人数を減らしたら費用は下がりますか?
- まとめ: 費用は内訳と総額で読み、体制別に試算し、小さく始めて拡張する
ラボ型開発の費用の内訳と相場——月額は「人件費+ブリッジSE/PM+インフラ+管理費」、体制別・国別の目安

ラボ型開発の月額費用は、エンジニアの人月単価に人数を掛けた金額だけではありません。日本語で要件を橋渡しするブリッジSE、チームを管理するPM、開発環境やツールのインフラ費、開発会社の管理費が乗ります。この構造を知らずに単価だけで見積もりを比べると、総額で逆転が起きます。まず内訳を押さえ、次に役割別・体制別の相場を見てください。
月額費用の内訳(表)
費目 | 内容 | 金額の考え方 |
|---|---|---|
エンジニア人件費 | 人月単価×人数。経験年数・技術領域で変動 | 白書2025のベトナムPG40.1万円・シニア50.0万円。当社は1,500USD(約22.5万円)〜 |
ブリッジSE(BrSE) | 日本語で要件を翻訳・調整。1チームに1名が目安 | 白書2025のベトナムBrSE59.0万円。当社は3,000USD(約45万円) |
PM | 進捗・品質・体制の管理。小規模ではBrSEが兼務 | 白書2025のベトナムPM71.4万円。当社は日本人PMをフロントに置き最小構成に含む |
インフラ・ツール | 開発環境、クラウド、ライセンス、コミュニケーションツール | 利用規模に応じた実費 |
管理費(オーバーヘッド) | 採用・労務・オフィス・セキュリティ運用など | 会社により「一式」。当社は公開単価に含む |

市場相場の出典はオフショア開発白書2025年版(オフショア開発.com、2026年9月21日確認)、当社の単価は自社サイトの公開単価です。ポイントは、エンジニアの人月単価だけを見ていると、BrSE・PM・インフラ・管理費が別に積み上がって総額が大きく変わることです。「エンジニア3名でいくら」ではなく、「この金額に何が含まれるか」を必ず確認してください。
役割別の人月単価(表): 国内とベトナム、当社の公開単価
役割 | ベトナムの市場相場(オフショア開発白書2025年版) | 当社(公開単価・1USD=150円換算目安) |
|---|---|---|
プログラマー(実務3年目安) | 40.1万円 | 1,500USD(約22.5万円) |
SE・シニア(実務5年目安) | 50.0万円 | 2,000USD(約30万円) |
ブリッジSE(実務10年目安) | 59.0万円 | 3,000USD(約45万円) |
PM | 71.4万円 | 日本人PMをフロントに配置(最小構成に含む) |
ベトナムの市場相場はオフショア開発白書2025年版(オフショア開発.com、2026年9月21日確認)の値です。当社の単価は、2,000名以上のIT人財データベースから直接アサインし、協力会社や紹介経由の仲介マージンが構造的に発生しないため、市場相場(当社調べで実務3年3,000USD、5年4,000USD、10年5,000〜6,000USD)の約1/2で公開しています。為替で円換算は動くため、円建ての予算は公開時点のレートで見直してください。
体制別の月額相場(表): 国内とベトナム
体制別の月額は、上の役割別単価に人数を掛け、そこにBrSE・PM・インフラ・管理費を足して積み上げます。同じ「5名体制」でも、BrSE・PMを何名入れるか、管理費に何が含まれるかで総額は大きく変わるため、人数だけの相場表で比べないでください。当社の公開単価での試算は後述します。
見積もりは「総額」と「単価に何が含まれるか」で読む——管理費「一式」は要注意
見積もりを比べるときは、職種別単価×人数の合計に、BrSE・PM・インフラ・管理費を足した総額で見てください。そのうえで「単価に何が含まれるか」を確認します。設計レビューやコードレビュー、リリース前のチェックが単価に含まれる会社と、別料金の会社では、同じ単価でも中身が違います。管理費が「一式」で内訳を開示できない会社は要注意です。次章では、この内訳をもとに、体制別の月額と年間費用を試算します。
体制別シミュレーション3パターンと年間費用、請負・SES・国内採用との比較

内訳が分かれば、自社の想定体制で月額と年間費用を試算できます。ここでは公開されている試算例3パターンと、当社の公開単価での試算、請負・SESとの契約形態別の比較、国内採用との比較を並べました。予算申請の資料にそのまま転用できるよう、出典と算出方法を明記しています。
シミュレーション(表): 小規模3名、中規模7名、大規模14名の体制例
規模 | 体制の例 |
|---|---|
小規模(3名) | BrSE兼PM 1名+SE 1名+PG 1名 |
中規模(7名) | PM 1名+BrSE 1名+SE 2名+PG 3名 |
大規模(14名) | PM 1名+BrSE 2名+SE 4名+PG 7名 |
規模が上がるほど、エンジニア以外(PM・BrSE)の人数も増えます。見積もりでは、この体制表に役割別の単価を掛けた金額に、管理費とインフラ費が別で乗るのかどうかを必ず確認してください。
当社の公開単価での試算(表)——日本人PM+実務3年2名で月額約80万円〜
体制 | 構成 | 月額(目安) | 年間(目安) |
|---|---|---|---|
最小構成 | 日本人PMフロント+実務3年目安2名(2〜3人月) | 約80万円〜 | 約960万円〜 |
3名(実務3年) | 1,500USD×3名=4,500USD | 約67.5万円〜+PM | 約810万円〜+PM |
3名(実務5年) | 2,000USD×3名=6,000USD | 約90万円〜+PM | 約1,080万円〜+PM |
5名(3年3名+5年1名+BrSE1名) | 4,500+2,000+3,000=9,500USD | 約142.5万円〜 | 約1,710万円〜 |

当社の最小構成は、日本人PMをフロントに置き、2〜3人月のエンジニアを組み合わせて月額約80万円からです。他の行は公開単価からの算出値で、1USD=150円換算目安です。日本人PMの設計レビュー、Gitプルリクエストによるコードレビュー、リリース前ダブルチェックは単価に含まれるため、PM費や管理費を別途積む必要はありません。同じ「3名体制」でも、公開単価と含まれる範囲で総額が変わることが分かります。
契約形態別のコスト比較(表): 請負・SES・ラボ型
契約形態 | 費用の特徴 |
|---|---|
請負 | 完成責任を負う分のリスクプレミアムが上乗せされる。仕様変更は追加見積もり |
SES | 時間単価×稼働。自社で管理する工数が別途かかる |
ラボ型 | 月額固定。リスクプレミアムなし。長期ほど単価が安定し、立ち上がり後は効率が上がる |
同じ規模の開発でも、上乗せされるものが違うため総額は変わります。長期になるほど、この差は開きます。ただし、要件が確定した単発の開発では、請負の固定価格と完成責任のほうが合理的です。契約形態の違いは「準委任 請負 違い」の記事で整理しています。
国内採用との比較——採用費・社会保険・福利厚生を含めて比べる
国内でエンジニアを1名採用する場合、年収に加えて社会保険料の会社負担、福利厚生、採用費、育成の期間がかかります。これらを含めた国内体制と比べると、ベトナムのラボ型は大きく低い水準になります。しかも採用の成否や退職のリスクを開発会社側が引き受ける形になります。
当社が支援している介護記録SaaS「CareViewer」では、日本語BrSE1名とフルスタックエンジニア2名の体制に切り替え、開発コストを従来の半分以下に抑えながら継続開発を続けています。国内採用が難しい中堅企業ほど、この差は大きい。費用は「単価」ではなく「同じ成果を出す体制の総額」で比べる、というのが約100社を見てきた私の教訓です。
費用を抑える方法と契約時の確認——最低予算の目安、6か月から、増減員、閑散期の使い方、補助金、当社の単価に含まれるもの

ラボ型の費用は、単価交渉よりも「体制の設計」と「契約条件」で決まる部分が大きいものです。ここでは、費用を抑える5つの方法、最低予算の目安、契約時に確認する項目、当社の単価に含まれるものを整理します。
費用を抑える5つ
- 小さく始めて拡張する: 6か月契約から始め、成果を見て増員する。最初から大人数で組むと立ち上がりの数か月の固定費が膨らむ
- 増減員の申請期限を確認する: 縮小や増員の予告期間は会社ごとに違う。繁閑に合わせて人数を変えられる契約なら、固定費を可変にできる
- 閑散期の稼働を投資に回す: テスト自動化、ドキュメント整備、技術的負債の返済に充てる。請負では見積もりに乗りにくい作業をラボ型で計画的に進める
- PM込みの体制で日本側の工数を減らす: 発注側の管理工数(要件の言語化・指示・進捗管理)は隠れたコスト。日本人PMやBrSEが巻き取る体制なら、発注側は優先順位の判断だけで済む
- 補助金を確認する: IT導入補助金など、システム開発費の一部が対象になる制度がある。対象要件と申請時期は年度で変わるため、公募要領で確認する
最低予算の目安——複数名なら固定費を回収できる規模が必要、継続前提かつPM込みなら1〜2名からでも成立
専属チームをBrSE込みで複数名組む前提なら、ある程度の月額規模がないと固定費を回収できません。一方で、継続する開発があり、日本語のやり取りをPMが巻き取る体制なら、1〜2名の小規模でも成立します。当社が1名から契約し、最小構成を月額約80万円からにしているのは、この「継続前提の小規模」に応えるためです。逆に、稼働が薄い月が続く案件や、月30万円以下の不定期な改修は、請負やスポット契約のほうが安く済みます。ラボ型が向かない案件は「ラボ型開発 デメリット」の記事で詳しく整理しています。
契約時に確認する7項目(費用に直結するもの)と、当社の単価に含まれるもの
- 稼働時間の定義: 月の稼働時間、祝日(ベトナムは2026年で年12日。労働法112条の法定は11日で、2026年からベトナム文化の日が加わる。テト休暇は2026年2月14日〜22日)の扱い、残業の単価
- 増減員の条件: 増員のリードタイム、縮小の予告期間、最低人数
- 最低契約期間と解約条件: 6か月〜1年の縛りの有無、予告期間、終了時の引き継ぎ
- 単価に含まれるもの: PM・BrSE・レビュー・テスト・インフラが含まれるか別料金か
- 管理費の内訳: 「一式」ではなく、何にいくらかを開示できるか
- 為替の扱い: USD建てか円建てか、為替変動時の見直しルール
- 成果物の帰属と支払い条件: 著作権、契約終了時の引き渡し、支払い先(海外送金の要否)
当社の場合、契約と支払いは日本国内の法人と日本法準拠で行い、海外送金は不要です。単価には日本人PMの設計レビュー、Gitプルリクエストによるコードレビュー、リリース前ダブルチェックが含まれます。契約前に候補者と面談し、増員は約1週間、縮小・交代は1か月単位で調整できます。相談で多いのが「2社の見積もりの内訳が違って比べられない」というものですが、上の7項目を両社に聞けば、同じ物差しで比べられます。あなたが手元に持っている見積もりは、総額と「含まれるもの」で読むと、どちらが安いでしょうか。
ラボ型開発の費用でよくある質問

費用について相談の場で繰り返し聞かれる質問を5つにまとめました。予算申請や見積もり比較の際にお使いください。
Q1. 最低予算はいくらですか?
複数名のチームを組む前提なら月額100万円以上が効率の目安とされます。継続前提でPM込みの体制なら、当社は日本人PM+2〜3人月で月額約80万円から対応しています。
Q2. 請負と比べて高いですか、安いですか?
同じ規模の開発なら、完成責任のリスクプレミアムがない分、ラボ型のほうが総額は低くなりやすい。ただし、要件が確定した単発の開発では、請負の固定価格のほうが予算管理は楽です。
Q3. 国内採用とどちらが安いですか?
採用費・社会保険・福利厚生・育成期間を含めると、ベトナムのラボ型は国内体制より大きく低い水準になります。加えて、採用の成否と退職のリスクを開発会社側が引き受けます。
Q4. 見積もりの管理費はどう見ればよいですか?
会社によって計上の仕方が違います。「一式」で内訳を開示できない場合は、何が含まれるか(採用・労務・セキュリティ運用・PM工数など)を質問してください。開示できない会社は避けたほうが安全です。
Q5. 途中で人数を減らしたら費用は下がりますか?
契約で縮小の予告期間と最低人数が決まっていれば、その範囲で下がります。当社は1か月単位で縮小・交代に対応しています。契約前に確認すべき、最も費用に効く条件。
まとめ: 費用は内訳と総額で読み、体制別に試算し、小さく始めて拡張する
ラボ型開発の費用は「人月単価×人数」ではなく、エンジニア人件費にブリッジSE・PM・インフラ・管理費を足した総額で読んでください。ベトナムの市場相場はオフショア開発白書2025年版でプログラマー40.1万円・ブリッジSE59.0万円・PM71.4万円、当社の公開単価は実務3年1,500USD(約22.5万円)・5年2,000USD(約30万円)・ブリッジSE3,000USD(約45万円)で、日本人PM+実務3年2名の最小構成が月額約80万円からです(1USD=150円換算の目安)。単価と「含まれる範囲」で総額が変わります。
請負は完成責任を負う分のリスクプレミアムが乗るため、同じ規模ならラボ型のほうが総額は低く、長期ほど差が開きます。国内採用と比べても、採用費・社会保険・福利厚生を含めれば大きく低い水準になります。費用を抑えるには、6か月契約から小さく始め、増減員の予告期間を確認し、閑散期の稼働をテスト自動化やドキュメントに回し、PM込みの体制で日本側の工数を減らし、補助金を確認する。最低予算は、複数名の専属チームなら固定費を回収できる月額規模が必要ですが、継続前提でPM込みなら1〜2名からでも成立します。
見積もりは、稼働時間の定義・増減員の条件・最低契約期間・単価に含まれるもの・管理費の内訳・為替・成果物の帰属の7項目を両社に聞いて、同じ物差しで比べてください。ラボ型の全体像はラボ型開発とは、デメリットと向かない案件はラボ型開発のデメリットもあわせてご覧ください。現在の体制と要件をお聞かせいただければ、公開単価に基づく概算見積もりでお答えします。合わない案件にはその旨も率直にお伝えします。