円安でオフショア開発は損か——為替が効く3つの経路と、影響を抑える契約の形【2026年版】

2026.09.14|相場|文: 中元 亨

「安いから選んだはずのオフショア開発なのに、請求額が2年で2割増えました」——為替の話は、こうした形でご相談をいただきます。社内では「結局高いのでは」と言われ、判断した立場としては説明に困る。かといって国内に戻せば単価はさらに高い。どこかに落としどころがあるはずだと感じながら、その材料が見つからない状態ではないでしょうか。

先に結論を書きます。円安でオフショア開発のメリットが消えたわけではありません。ただし、為替を誰が負担しているかを知らないまま契約している会社は、確実に損をしています。為替が費用に効く経路は3つあります。契約通貨、請求通貨、そして現地の人件費です。このうち前の2つは、契約の書き方で変えられます。

日本国内の法人と円建てで契約していれば、為替が動いても月々の請求額は変わりません。海外法人とドル建てで契約していれば、動いた分がそのまま乗ります。同じ「オフショア開発」でも、この2つはまったく違う商品です。手元の契約書を開いて、契約通貨・請求通貨・単価の改定条項の3点を確認することから始めてください。

私はTALENTBASE VIETNAMでCOOを務めています。人材業界の出身で、国内エンジニアの採用市場と単価の推移も実務で見てきました。当社は日本国内法人として日本法に準拠した契約を結び、円建てでご請求しています。海外送金も不要です。単価は実務3年で1,500USD、5年で2,000USD、ブリッジSEで3,000USD(1USD=150円換算が目安)と公開していますが、ご請求は円建てです。相場の約1/2という水準になります(当社調べ)。最小構成は日本人PM+2〜3人月の月額約80万円から、1名から最短2週間で開始できます。

この記事では、為替が効く3つの経路、単価差が縮んでもなお差が残る理由、為替の影響を抑える契約の形、そして国内・ニアショア・オフショアを比べるときの軸を整理します。なお、記載する数値はいずれも2026年時点のもので、相場の見通しは書きません。予測を前提にした判断は、かえって危ないからです。

目次
  1. 円安はどこに効くのか
  2. 契約通貨と請求通貨は別物
  3. 現地の人件費も上がっている
  4. 自社の契約はどの経路で影響を受けているか
  5. それでも差が残る理由と、為替の影響を抑える契約の形
  6. 比べるのは「昔の単価」ではなく「今の国内単価」
  7. 日本国内法人と円建てで契約するという形
  8. 単価の改定条項をどう読むか
  9. 国内・ニアショア・オフショアをどう比べるか
  10. 比較の軸に「為替を誰が負担するか」を入れる
  11. 単価差が縮んでも残る価値
  12. 判断のチェックリスト
  13. よくある質問
  14. Q1. 円建てで契約できる開発会社はありますか
  15. Q2. 円高になれば単価は下がりますか
  16. Q3. 為替予約をすれば解決しますか
  17. Q4. ニアショアのほうが安全ではありませんか
  18. Q5. 契約を見直したいのですが、何から聞けばよいですか
  19. まとめ: 為替は外部要因でも、誰が負担するかは契約で決まる

円安はどこに効くのか——3つの経路に分けて考える

契約通貨と請求通貨を契約書で確認する手元

為替の話は、漠然と「円安だから高くなった」と語られがちです。しかし費用に効く経路は分解できます。分解すると、自社が手を打てる部分とそうでない部分がはっきりします。

契約通貨と請求通貨は別物

ひとつ目の経路が契約通貨です。契約書で金額をどの通貨で定めているか。ドル建てで月5,000USDと定めていれば、円での請求額はその月のレートで決まります。当社が目安として使う1USD=150円で換算すれば75万円、そこから10円円高に振れて140円になれば70万円です。相場の水準そのものは日々変わるので、ここで示したのは換算の目安と感度であって、為替の見通しではありません。為替が動いた分は、そのまま請求額に反映されます。

ふたつ目が請求通貨です。契約がドル建てでも、請求と支払いを円で行う取り決めがあることがあります。この場合に論点になるのは、どの時点のどのレートを使うかです。契約時のレートで固定するのか、請求月の仲値を使うのか、一定の幅を超えたときだけ見直すのか。ここが契約書に書かれていないと、毎月の交渉になります。

そして、最初から円建てで契約している場合があります。金額が円で定められていれば、為替がどう動いても月々の請求額は変わりません。この違いは大きく、同じ「オフショア開発」でも別の商品だと考えたほうが正確です。

現地の人件費も上がっている

みっつ目の経路が現地の人件費です。ここは為替とは独立して動きます。私が2018年からホーチミンでエンジニアの採用と体制づくりに携わってきた実感として、現地通貨ベースの給与水準は上昇が続いています。

つまり、日本から見た単価差が縮んだ理由は、円安だけではありません。現地の人件費上昇と円安の両方が効いています。ここを混同すると、「円高になれば元に戻る」という誤った期待を持つことになります。戻るのは為替の分だけで、人件費の上昇分は戻りません。

当社は単価を公開しています。実務3年のエンジニアで月額1,500USD、5年で2,000USD、ブリッジSEで3,000USD(1USD=150円換算が目安)。2026年時点の水準です。公開している理由は、比較の土俵を作りたいからです。単価が見えていなければ、為替の議論も成り立ちません。

自社の契約はどの経路で影響を受けているか

手元の契約書を開いて、3点を確認してください。ひとつ、契約通貨は何か(円かドルか現地通貨か)。ふたつ、請求通貨と、レートの決め方が書かれているか。みっつ、単価の改定条項があるか(改定の頻度と根拠)。

「請求額が2年で2割増えました」というご相談をいただくとき、多くはドル建て契約です。為替が外部要因なのはそのとおりですが、誰がその変動を負うかは契約で決まっています。経路が分かれば、打ち手も決まります。

円安が費用に効く3つの経路(契約通貨・請求通貨・現地人件費)と、それぞれの打ち手、契約書で確認する3点

それでも差が残る理由と、為替の影響を抑える契約の形

円建て契約への切り替えを協議する打ち合わせ

単価差が縮んだのは事実です。ただし、縮んだことと消えたことは違います。比較の前提を整えたうえで、契約でできる対策を見ていきます。

比べるのは「昔の単価」ではなく「今の国内単価」

よくある誤りは、5年前のオフショアの単価と今のオフショアの単価を比べて「高くなった」と結論づけることです。比較すべきは、今のオフショアと今の国内です。

私は人材業界の出身で、国内エンジニアの採用市場と単価の推移を実務で見てきました。国内の単価も上がっています。経験者の採用競争は激しく、提示年収は上昇が続いています。派遣や業務委託の単価も同様です。つまり、両方が上がっているなかで差が縮んだというのが実態に近い。

もうひとつ重要なのは、単価が同じでも「採れるかどうか」が違うことです。国内で経験者を採用しようとすれば、求人を出して数か月待つことになります。その間、事業は止まります。単価の比較表には、この待機期間が表れません。

日本国内法人と円建てで契約するという形

契約でできる対策は明確です。日本国内の法人と、円建てで契約することです。この形なら、為替が動いても月々の請求額は変わりません。もちろん、受注側は為替の変動を吸収する必要があり、その分は単価に織り込まれます。ただし発注者から見れば、予算が月ごとに揺れないという実務上の利点は大きい。

当社は日本国内法人として日本法に準拠した契約を結び、円建てでご請求しています。海外送金も不要です。単価は公開していますが、請求は円建てです。加えて、2,000名以上の人財データベースから直接アサインする体制のため、あいだに協力会社が入らず中間マージンが乗りません。相場の約1/2という水準になります(当社調べ、2026年時点)。

海外法人と直接契約する形にも利点はあります。中間に立つ日本法人がいない分、単価が下がることがあるからです。ただしその場合、為替も送金手数料も準拠法の問題も発注者が引き受けることになります。どちらがよいかは、社内で為替を管理できる体制があるかどうかで決まります。

単価の改定条項をどう読むか

もうひとつ見ておきたいのが改定条項です。円建て契約でも、年1回の見直しが定められていることがあります。確認するのは3点です。改定の頻度(年1回か、随時か)、改定の根拠(物価、現地人件費、為替のどれを指標にするか)、そして通知の期限(何か月前に知らせるか)。

根拠が書かれていない改定条項は、実質的に「相手が決める」という意味になります。次回の更新のときに、根拠と通知期限だけでも入れてもらってください。為替の話は、契約の形の話でもあります。

国内・ニアショア・オフショアをどう比べるか

日本国内法人・円建て契約で提供するTALENTBASE VIETNAMのチーム

最後は比較の作法です。単価だけを並べた表は、比較したように見えて判断材料になりません。軸を足してください。

比較の軸に「為替を誰が負担するか」を入れる

3つの選択肢を並べると、次のようになります。

比較軸

国内(自社採用・国内ベンダー)

ニアショア(国内の地方拠点)

オフショア(海外)

単価

高い

国内水準(都市部より低め)

低い(差は縮小傾向)

為替の影響

なし

なし

契約の形による(円建て・国内法人なら影響を受けにくい)

人材の確保

採用に数か月かかることがある

地域の人材市場に依存

人材プールが大きく確保しやすい

増減のしやすさ

採用と雇用の制約がある

契約による

契約による(月単位で調整できる形もある)

コミュニケーション

同一言語・同一時間帯

同一言語・同一時間帯

時差と言語の設計が要る

立ち上がりの速さ

採用しだい

契約しだい

体制があれば速い

国内・ニアショア・オフショアの比較表に為替を誰が負担するかの行を入れた比較

為替の行を入れるだけで、表の意味が変わります。オフショアでも円建て・国内法人との契約なら、この行は「影響を受けにくい」になるからです。逆に、ドル建て契約なら「直接負う」と書く。同じオフショアが2行に分かれることもあります。

単価差が縮んでも残る価値

費用以外の価値を3つ挙げます。ひとつ、人材を確保しやすいこと。国内で採用できない職種でも、人材プールの大きい市場なら見つかります。ふたつ、増減が速いこと。当社の場合、1名から最短2週間で開始でき、増員は約1週間、1か月単位でリプレイスメントにも対応します。採用と雇用ではこの速度は出せません。みっつ、体制を継続的に持てること。プロジェクト単位の発注と違い、同じチームが積み上げた知識を保持できます。

当社はAIを活用した開発体制を組み、AWS認定も11冠を取得しています。単価だけの競争から離れて、何ができる体制なのかで比べていただきたいと考えています。最小構成は日本人PM+2〜3人月の月額約80万円からです。

判断のチェックリスト

最後に確認する項目です。契約通貨と請求通貨、レートの決め方。単価の改定条項(頻度・根拠・通知期限)。契約主体はどこの国の法人か、準拠法はどこか。増減とリプレイスメントの条件。撤退するときのソースコードとドキュメントの引き渡し。この5点が明確なら、為替がどう動いても判断は続けられます。

当社にご相談いただいた場合も、要件を伺って当社の体制が合わないと判断すれば、その旨を率直にお伝えします。あなたの比較表に、為替の行はありますか。

よくある質問

円安とオフショア開発に関する質問に答える担当者

円安とオフショア開発について、実務でよく届く質問に答えます。いずれも契約の更新や新規の検討で繰り返し聞かれる内容です。

Q1. 円建てで契約できる開発会社はありますか

日本国内に法人を持つ会社なら、円建ての契約と請求に対応できることが多いです。当社は日本国内法人として日本法に準拠した契約を結び、円建てでご請求しています。海外送金も不要です。

Q2. 円高になれば単価は下がりますか

為替の分は影響を受けますが、現地の人件費上昇分は戻りません。相場の見通しは誰にも分からないため、当社では為替の予測を前提にしたご提案はしていません。

Q3. 為替予約をすれば解決しますか

金額が大きく、支払いの時期と額が確定している取引では有効な手段です。ただし、継続的な開発委託のように毎月の支払いが続き、体制の増減で金額も動く契約では、手続きと管理の手間が効果に見合わないことが多いというのが当社の実感です。契約通貨を円にするほうが簡単です。

Q4. ニアショアのほうが安全ではありませんか

為替と言語の面では有利です。ただし単価は国内水準になり、地方でもエンジニアの採用は容易ではありません。選択肢として比べる価値はあります。

Q5. 契約を見直したいのですが、何から聞けばよいですか

契約通貨、請求通貨とレートの決め方、単価の改定条項の3点です。次回更新時に円建てへ変更できるかを確認してください。まずは条件の棚卸しから。

まとめ: 為替は外部要因でも、誰が負担するかは契約で決まる——確認するのは3点

円安でオフショア開発のメリットが消えたわけではありません。ただし、為替が費用に効く経路を知らないまま契約していると、避けられた負担を引き受けることになります。経路は3つです。契約通貨(契約書で金額をどの通貨で定めているか)、請求通貨(請求と支払いをどの通貨で、どの時点のレートで行うか)、そして現地の人件費(為替とは別に上昇している)。前の2つは契約の書き方で変えられ、3つ目は選ぶ相手と体制で変わります。

比較の前提も整えてください。5年前のオフショアの単価と今の単価を比べても意味はありません。比べるのは、今のオフショアと今の国内です。国内エンジニアの単価も上昇しており、差は縮みましたが消えてはいません。加えて、単価表には表れない違いがあります。国内で経験者を採用するなら求人を出して数か月待つことになり、その間は事業が止まります。人材を確保しやすいこと、増減が速いこと、同じチームを継続して持てること。この3つは単価差とは別の価値です。

手元の契約書で確認するのは3点です。契約通貨は何か。請求通貨とレートの決め方は書かれているか。単価の改定条項は、頻度・根拠・通知期限まで定まっているか。次回の更新時には、円建てまたは日本国内法人との契約に切り替えられるかを相手に確認してください。単価の水準そのものはベトナムオフショア開発の単価相場、商流とマージンの構造はオフショア開発の中間マージンもあわせてご覧ください。当社は日本国内法人として日本法に準拠した契約を結び、円建てでご請求しています。海外送金は不要です。単価は実務3年1,500USD・5年2,000USD・ブリッジSE3,000USD(1USD=150円換算が目安、2026年時点)と公開し、最小構成は日本人PM+2〜3人月の月額約80万円から、1名・最短2週間で開始できます。現在の契約と体制をお聞かせいただければ、為替の負担がどこにあるかも含めてお答えします。合わない案件にはその旨も率直にお伝えします。

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