SESとは?意味と仕組みをわかりやすく解説——派遣・請負との違い、単価相場、発注側の注意点まで

2026.09.14|体制・運用|文: 中元 亨

「取引先から『SESでエンジニアを常駐させられます』と提案されたが、派遣と何が違うのかわからない」「求人票にSESと書いてあるが、『やめとけ』という声も見かけて不安になった」——SESという言葉は、IT業界の契約や求人で当たり前のように使われる一方で、仕組みを平易に説明した情報は多くありません。準委任・指揮命令権・善管注意義務といった法律用語で説明されて、読むのをやめてしまった方もいるはずです。

先にお伝えしたいのは、SESは2つのことだけ押さえれば全部わかる、ということです。1つは「エンジニアに指示を出すのは常駐先ではなくSES企業」であること。もう1つは「システムを完成させる責任はない」こと。この2点から、派遣との違いも、請負との違いも、「やめとけ」と言われる理由も、発注する側が注意すべきことも、すべて導けます。

SESは正しく使えば、必要なスキルを必要な期間だけ月単位で確保できる柔軟な手段です。一方で、社内に指示とレビューを担う人がいないまま人だけ増やすと、管理役が疲弊し、現場で直接指示を出せば偽装請負の問題が起きます。仕組みを理解したうえで、自社に合う形(SES・請負・PM付きの専属チーム)を選ぶことが、失敗を避ける近道です。

私は人材業界の出身で、SES・派遣・人材紹介の契約構造を実務で扱ったのち、2018年からホーチミンで約100社の開発体制づくりを支援してきました。本記事では、SESの意味と仕組み(3者の関係・準委任・商流)、派遣・請負・SIer・フリーランス・ラボ型との違いの比較表、2026年時点の単価相場と費用の仕組み、発注する側のメリット・デメリットと偽装請負のNG例、そして当社のラボ型との違いの順で整理します。

読み終えるころには、SESという言葉を自分の言葉で説明でき、エンジニアとしても発注者としても、どう関わるべきかを判断できるようになっているはずです。まずは3者の関係から見ていきましょう。

目次
  1. SESとは——意味と仕組みをわかりやすく解説(3者の関係、準委任、指揮命令、商流)
  2. 結論: SESは「エンジニアの働く時間」を買う仕組み。指示はSES企業が出し、完成の責任はない
  3. 登場するのは3者
  4. 法律上は「準委任契約」
  5. 商流(元請け〜3次請け)
  6. SESと派遣・請負・SIer・フリーランス・ラボ型の違い
  7. 比較表: 契約の法的根拠・指揮命令権・完成責任・報酬の発生条件・直接指示の可否
  8. SESと派遣の違いは「誰が指示を出せるか」の一点
  9. SESと請負・SIer(受託開発)の違いは「完成の責任を負うか」
  10. SESとフリーランス・ラボ型の違い
  11. SESの単価相場と費用の仕組み
  12. 国内SESの単価相場(表): フリーランスは70〜90万円が中心帯、当社ラボ型は実務3年目安 約22.5万円
  13. 清算幅(稼働時間の上限・下限)と超過・控除、契約期間の更新と事前通知
  14. 商流が1段階深くなるごとに中間マージンが積み上がる
  15. 海外チームの単価との比較(当社: 実務3年目安 約22.5万円)
  16. 発注する側が知っておくべきこと
  17. 発注者のメリット(柔軟な増減・特定スキル・採用リスク回避)とデメリット(完成保証なし・直接指示不可・ばらつき・長期割高・引き抜き禁止)
  18. 「やめとけ」「グレー」と言われる理由
  19. 偽装請負のNG例(表)と罰則
  20. SESが向く案件・向かない案件と、発注前のチェックリスト
  21. 当社のラボ型
  22. SESとラボ型の体制の違い(表): 指示を出す人、チームか個人か、商流、単価、開始までの期間
  23. 発注者が直接指示しなくてよい
  24. 相談例と進め方: SES3名で管理役が疲弊した会社が、PM付きの専属チームに切り替えた
  25. SESに関するよくある質問
  26. Q1. SESとは何の略ですか?
  27. Q2. SESと派遣はどちらが発注側にとって柔軟ですか?
  28. Q3. 「SESはやめとけ」と言われるのはなぜですか?
  29. Q4. SESのエンジニアに技術的な質問や相談をしたら偽装請負になりますか?
  30. Q5. SESとラボ型、どちらを選ぶべきですか?
  31. まとめ: SESは「誰が指示を出すか」「完成責任がないこと」の2点で理解し、管理役がいなければPM付きの形を選ぶ

SESとは——意味と仕組みをわかりやすく解説(3者の関係、準委任、指揮命令、商流)

SESの仕組み(SES企業・エンジニア・クライアントの3者の関係)を説明する場面

SESは「System Engineering Service(システムエンジニアリングサービス)」の略で、SES企業に雇われたエンジニアがお客様の会社(常駐先)で働き、その技術力を提供するサービスのことです。日本のIT業界で使われる和製の呼び名で、法律に「SES契約」という名前の契約があるわけではありません。この章では、登場人物・お金の流れ・契約の中身・商流の4つに分けて仕組みを説明します。

結論: SESは「エンジニアの働く時間」を買う仕組み。指示はSES企業が出し、完成の責任はない

先に結論を言えば、SESは「成果物」ではなく「エンジニアが働く時間」を買う仕組みです。お客様は月額の単価を払い、エンジニアは決められた時間、誠実に働きます。システムが期日に完成しなくても、エンジニアが約束した時間きちんと働いていれば契約は果たされたことになります。

もう1つ大事なのは、エンジニアに「今日はこの作業をして」と指示を出すのは常駐先の会社ではなく、エンジニアを雇っているSES企業だということです。この2点、「時間を買う(完成責任はない)」と「指示はSES企業が出す」を押さえれば、派遣・請負との違いも、注意点も、あとで全部つながります。

登場するのは3者——SES企業・エンジニア・クライアント(常駐先)の関係とお金の流れ

SESには3者が登場します。SES企業はエンジニアを正社員(または契約社員)として雇います。クライアント企業はSES企業と契約し、「このスキルのエンジニアを何か月お願いしたい」と依頼します。エンジニアはクライアントのオフィス(またはリモート)で業務を行います。

お金の流れは、クライアントがSES企業に月額単価を払い、SES企業がそこからエンジニアに給与を払う形です。クライアントが払う単価とエンジニアが受け取る給与は別物で、その差がSES企業の粗利になります。エンジニアの雇用主はあくまでSES企業なので、社会保険や労務管理、評価や配置の決定もSES企業が担います。常駐先は「働く場所」であって「雇われている場所」ではない、というのがこの仕組みの土台です。

法律上は「準委任契約」——完成義務はないが誠実に働く義務(善管注意義務)はある

SES契約の法律上の正体は、民法656条が定める「準委任契約」です。準委任とは、仕事の完成ではなく「事務の処理」という作業そのものを委託する契約で、報酬は働いた時間や工数に応じて発生します。だからSES企業は「システムを完成させる義務」を負いません。代わりに、通常期待される水準の注意をもって誠実に業務を行う義務(民法644条の善管注意義務)を負います。責任の性質が「結果」ではなく「過程」にある、と捉えると理解しやすくなります。

なお、2020年4月施行の改正民法で、準委任にも「成果完成型」(民法648条の2)が明文化されました。SESの実務では働いた時間に応じて払う「履行割合型」が中心ですが、契約書がどちらの型かで報酬の発生条件が変わるので、発注前に確認しておく箇所です。

商流(元請け〜3次請け)——同じ発注金額でも現場のエンジニアに届くお金は変わる

SESには「商流」と呼ばれる取引の階層があります。エンドクライアントと直接契約する元請け、そこから受注する1次請け、さらに2次請け、3次請けと続き、各段階で中間マージンが引かれます。そのため、エンドクライアントが支払った金額と、3次請けのエンジニアの手元に届く金額には差が生まれ、商流が深くなるほどその差は広がります。

商流が深いほどエンジニアの取り分は減り、情報も伝言ゲームになります。これが後の章で触れる「多重下請け」の問題で、発注する側にとっても、払った単価に見合うスキルの人が来るかどうかを左右する要素です。仕組みがわかったところで、次章では派遣・請負など似た形との違いを整理します。

SESと派遣・請負・SIer・フリーランス・ラボ型の違い——指揮命令権と完成責任で比べる

SESと派遣・請負の契約書を比較する手元

SESの理解でつまずくのは、隣にある似た形との違いです。派遣も請負もフリーランスも、見た目は「外部のエンジニアが自社の開発に関わる」点で同じに見えます。この章では、発注者にとっての実害である「誰が指示を出せるか(指揮命令権)」と「誰が完成の責任を負うか」の2軸に絞って、5つの形を比べます。

比較表: 契約の法的根拠・指揮命令権・完成責任・報酬の発生条件・直接指示の可否

項目

SES(準委任)

派遣

請負(受託開発・SIer)

フリーランス

ラボ型(当社)

法的根拠

民法656条(準委任)

労働者派遣法

民法632条(請負)

業務委託(準委任か請負)

準委任(専属チーム)

エンジニアの雇用主

SES企業

派遣会社

受託会社

なし(個人事業主)

当社

指揮命令権

SES企業

発注者(派遣先)

受託会社

本人(自己裁量)

当社の日本人PM

完成責任

なし(善管注意義務)

なし

あり(契約不適合責任)

契約による

なし(善管注意義務)+PMのレビュー

報酬の発生

作業時間・工数

就業時間

納品・検収後

契約による

月額(人月)

発注者からの直接指示

不可(出すと偽装請負)

不可

契約による

不要(PMと仕様を決める)

必要な許認可

不要

派遣業の許可

不要

不要

不要

SESと派遣・請負・フリーランス・ラボ型の違いをわかりやすく——3者の関係図と、誰が指示を出すか・完成責任があるかの2軸で比べた図

表で最も大事なのは「指揮命令権」と「完成責任」の2行です。派遣だけが発注者に指揮命令権があり、SES・請負では発注者が直接エンジニアに指示を出せません。完成責任は請負だけにあります。この2行を見れば、自社が「直接動かしたいのか」「完成物がほしいのか」「手を借りて自社主導で進めたいのか」で選ぶべき形が決まります。

SESと派遣の違いは「誰が指示を出せるか」の一点

SESと労働者派遣は、エンジニアが常駐して働くという見た目がそっくりです。決定的に違うのは指揮命令権の所在で、派遣では発注企業(派遣先)がエンジニアに直接作業指示を出せます。SESでは指示を出すのはSES企業側で、発注者は直接命令できません。もう1つ、派遣は労働者派遣法の許可を受けた事業者しか行えず、同一の組織単位での受け入れは原則最長3年という期間制限があります。

発注の現場では、この違いが「常駐しているエンジニアに朝会で今日のタスクを直接割り振ってよいか」という日々の判断に直結します。派遣ならよい、SESならSES企業の責任者を通す建付けが要ります。ここを曖昧にすると、第4章で扱う偽装請負の問題になります。

SESと請負・SIer(受託開発)の違いは「完成の責任を負うか」

請負は「仕事の完成」に責任を負う契約で、決めた仕様のものを納期までに納品して初めて報酬が発生します。SIer(システムインテグレーター)は企画から構築・運用までをまとめて引き受ける事業者で、案件の多くを請負で受けます。SESにはこの完成責任がありません。

実務上の差はトラブルが起きた瞬間に現れます。請負なら契約不適合責任を問えますが、SESでは問えず、代わりに善管注意義務違反の有無が問われます。だから「動くものを期日に確実に受け取りたい」なら請負、「自社で舵を取りながら技術者の手を借り続けたい」ならSES、という判断になります。契約の詳細は準委任と請負の違いで整理しています。

SESとフリーランス・ラボ型の違い——雇用の有無と、チーム・PMの有無

フリーランスは個人事業主として直接(またはエージェント経由で)契約します。雇用関係がないため社会保険は本人負担で、指揮命令は本人の裁量です。発注者にとっては手取りの高さから単価が抑えられる一方、進捗管理・品質確認・突然の離脱への備えはすべて自社が担います。

ラボ型は、当社が提供している形で、契約はSESと同じ準委任ですが、個人ではなくPM付きの専属チームを一定期間確保します。エンジニアへの指示・レビュー・進捗管理は当社の日本人PMが担い、発注者はPMと日本語で仕様と優先順位を決めます。SESの「月単位で増減できる柔軟性」は保ちつつ、「発注者が直接指示できない」という制約が、そもそも直接指示する必要がない体制に置き換わる形です。詳しくはラボ型開発とSESの違いで比較しています。では、それぞれの形で費用はいくらかかるのでしょうか。

SESの単価相場と費用の仕組み——月額単価、清算幅、契約期間、商流のマージン(2026年時点)

SESの単価と清算幅を計算する手元

SESの費用は「月額単価×人数×期間」で決まりますが、単価の数字だけを見て決めると月末に想定外の請求が来ます。この章では、2026年時点の単価相場に加え、清算幅・契約期間・商流という費用を左右する3つの仕組みを説明します。数値は公開されている相場情報の目安で、スキル・地域・案件で大きく変わる点はご了承ください。

国内SESの単価相場(表): フリーランスは70〜90万円が中心帯、当社ラボ型は実務3年目安 約22.5万円

区分

月額単価の目安(2026年時点)

備考

SES(若手〜シニア)

金額は非掲載

一次統計がなく、商流・地域・スキルで大きく開くため本記事では金額を示さない

フリーランス

70〜90万円が中心帯

60〜120万円の幅。管理は自社

海外の専属チーム(当社ラボ型)

実務3年目安 1,500USD(約22.5万円)

5年 2,000USD、10年・BrSE 3,000USD

単価はスキル・経験・言語・地域で大きく開くため、一律の相場を断定できるものではありません。発注者が単価と同じくらい確認すべきなのが、次の清算幅です。

清算幅(稼働時間の上限・下限)と超過・控除、契約期間の更新と事前通知

準委任のSES契約では、月の稼働時間に上限と下限を決め、上限を超えた分は超過単価で追加請求、下限を下回った分は控除、という精算ルールを敷くのが通例です。これが清算幅です。単価が同じでも、清算幅の設定次第で月額は動きます。契約前に、基準時間・超過単価・控除の計算方法を確認してください。

契約期間は数か月単位の更新とし、更新や終了の意思表示は一定期間前までとする条項を置くのが通例です。つまり増減には、契約更新のサイクルと通知期限の分だけリードタイムがかかります。「月単位で調整できる」を「いつでも切れる」と読み替えると要員計画が狂います。また、契約中のエンジニアを発注者が直接雇用することは契約違反になる場合がほとんどなので、引き抜き禁止の条項も確認しておきます。

商流が1段階深くなるごとに中間マージンが積み上がる——単価とエンジニアの手取りの差

第1章で触れた商流は、費用にも品質にも影響します。多重下請けを経ると、商流が1段階深くなるごとに中間マージンが上乗せされます。発注者が支払う金額と、実際に手を動かすエンジニアの手取りの差は、商流が深いほど開きます。その差はスキルと定着に表れます。

発注側の対策は、契約先が自社の従業員を出すのか、協力会社の技術者を再委託で出すのかを確認することです。商流が浅い会社ほど単価に見合うスキルの人が来やすく、情報の伝達も正確です。「やめとけ」と言われるSESの問題の多くは、仕組みそのものではなく商流の深さと運用にある、というのが人材業界出身の私の見方です。

海外チームの単価との比較(当社: 実務3年目安 約22.5万円)

比較のために当社の単価を示します。当社のラボ型は、実務3年目安のエンジニアが月額1,500USD(約22.5万円、1USD=150円換算目安)、5年で2,000USD、10年やブリッジSEで3,000USD(約45万円)です。人財データベースから直接アサインするため商流は1段階で、中間マージンはありません。日本人PMを含めた最小構成は2〜3人月で月額約80万円からで、国内SESで1名を確保する予算で、管理役を含めた小さなチームが持てる計算です。単価の詳しい比較はエンジニア単価の相場をご覧ください。

単価表の数字は入口にすぎません。清算幅・契約期間・商流・管理役の有無まで含めて総額と手間を見る。これがSESの費用を正しく読む方法です。

発注する側が知っておくべきこと——メリット・デメリット、偽装請負のNG例、向く案件と向かない案件

SESの発注者がSES企業の担当者を通じて業務を依頼する場面

ここからは、SESを使ってエンジニアを確保する発注側の視点です。SESは正しく使えば柔軟で有効な手段ですが、契約の中身を曖昧にしたまま発注すると、成果の責任をめぐるトラブルや、偽装請負という法的リスクに発展します。この章ではメリット・デメリット、「やめとけ」と言われる理由、偽装請負のNG例、向く案件と向かない案件、発注前のチェックリストを整理します。

発注者のメリット(柔軟な増減・特定スキル・採用リスク回避)とデメリット(完成保証なし・直接指示不可・ばらつき・長期割高・引き抜き禁止)

メリットは3つです。プロジェクトの規模や工程に応じて必要なスキルの人を必要な期間だけ確保でき、繁忙期に増員し閑散期に縮小できる柔軟性。自社にいない特殊な技術(特定のクラウド・機械学習・レガシー対応など)を採用・育成コストなしで使える特定スキルへのアクセス。社会保険や雇用の負担をSES企業が担い、合わなければ契約終了で解消できる採用・雇用リスクの回避です。

デメリットは5つあります。第一に成果物の完成保証がないこと。第二に、業務変更や優先順位の調整をすべてSES企業の窓口経由で行うコミュニケーションコスト。第三に、SES企業によってエンジニアのスキルと管理品質にばらつきがあること。第四に、人月単価の積み上げになるため長期では請負より割高になり得ること。第五に、契約中のエンジニアの引き抜きは禁止されていることです。

「やめとけ」「グレー」と言われる理由——多重下請け、偽装請負、案件ガチャ

SESが「やめとけ」「グレー」と言われる理由は3つに集約されます。1つ目は多重下請けで、商流が深いほどエンジニアの手取りが減り、発注者にとっても単価に見合う人が来にくくなります。2つ目は偽装請負で、SES契約なのに常駐先が直接指示を出している実態が業界に少なくないことです。3つ目はエンジニア側の「案件ガチャ」で、希望と違う案件に配属される問題です。

いずれも仕組みそのものの欠陥ではなく、商流の深さと運用の問題です。商流が浅く、指揮命令のルールが守られ、スキルの確認と交代の仕組みがある会社と組めば、SESは有効に機能します。逆に「安く人手がほしい」という動機だけでSESに寄せると、責任の所在も法的リスクも曖昧になり、失敗のもとです。

偽装請負のNG例(表)と罰則——直接指示はSES企業の担当者経由に

SES契約で発注者がエンジニアに直接・継続的に業務指示を出していると、その実態は「労働者の派遣を受けている」と判断され、偽装請負として労働者派遣法違反に問われるリスクがあります。認定された場合、派遣元・派遣先の双方に1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金(労働者派遣法59条・職業安定法64条)、行政指導・企業名の公表、さらに発注者がエンジニアを直接雇用したとみなされるリスクがあります(条文はe-Gov法令検索で2026年9月21日に確認)。

NGパターン

具体例

業務内容の直接変更

「今週はこの画面を優先して」「この機能を追加して」とエンジニアに直接伝える

技術スタックの直接指示

「このライブラリを使うように」とエンジニアに直接伝える

労働時間の管理

「今日は残業して」「明日は午前だけでよい」とエンジニアに直接伝える

業務評価

SES企業を通さず、発注者がエンジニアを直接評価・注意・指導する

緊急対応の直接依頼

障害時にSES企業を通さず「今すぐ対応して」と直接連絡する

適切な対応は、これらをすべてSES企業の担当者(PMや営業)を通じて依頼することです。「SES企業のPMに連絡→PMがエンジニアに指示」という経路を守ることが、偽装請負を避ける基本です。技術的な質問や情報共有は業務指示に当たらないとされますが、日々のタスクの割り振りや勤務時間の指示は要注意です。

SESが向く案件・向かない案件と、発注前のチェックリスト

SESが向くのは、要件が流動的で自社主導で進める開発、特定スキルの人を数か月から年単位で確保したい局面、運用・保守・テストなど明確な成果物を定義しにくい継続業務、そして社内にエンジニアの業務を管理できるPMやテックリードがいる場合です。向かないのは、「動くシステム」の完成を確実に求める案件、社内にPM・技術管理できる人がいない場合、予算と納期が固定されている案件、スコープの明確な小規模・単発の開発です。

判断は3つの質問で絞れます。成果物の完成を確実に求めるなら請負。社内にエンジニアを管理できるPMがいるならSES(ただし指揮命令ルールを厳守)、いないならPM込みで任せられる形。要件が確定しているなら請負、探索的ならSESかPM付きの専属チーム。私が見てきた失敗は、社内に管理役がいないままSESで3名を入れ、CTOが指示と確認に追われて本来の設計に手が回らなくなったケースです。

発注前のチェックリストは次の5点です。発注者が直接エンジニアに業務指示を出さない運用ルールを社内で共有しているか。業務変更・優先順位の調整はSES企業のPM経由で行う体制になっているか。契約書・仕様書に品質基準(コードレビューの実施・テストの基準)と検収条件が明記されているか。週次・月次の作業報告書の提出を契約に含めているか。契約先が自社の従業員を出すのか再委託なのか、商流を確認したか。

SESは、契約と運用を正しく整えた発注者にとってこそ有効な手段。この5点が整わないなら、次章で示す形を選ぶのが現実的な判断です。

当社のラボ型——SESの柔軟性を保ちつつ、日本人PMが指揮とレビューを担う専属チーム

TALENTBASE VIETNAMの日本人PMがラボ型チームのエンジニアに指示とレビューを行う現場

当社TALENTBASE VIETNAMは、2018年からホーチミンで約100社の開発体制を支援してきました。前章の「社内に管理役がいないならPM込みで任せられる形」として当社が提供しているのがラボ型の専属チームです。この章では、SESとの体制の違い、偽装請負リスクを構造的に避けられる理由、相談例と進め方を示します。

SESとラボ型の体制の違い(表): 指示を出す人、チームか個人か、商流、単価、開始までの期間

項目

国内SES

当社のラボ型

契約形態

準委任

準委任(専属チームを一定期間確保)

構成

エンジニア個人を1名単位で

日本人PM/BrSE+エンジニアのチーム(1名からも可)

エンジニアに指示を出す人

SES企業(実態は発注者が出して偽装請負になりがち)

当社の日本人PM。発注者はPMと日本語で仕様・優先順位を決める

品質の仕組み

会社によりばらつき

日本人PMの設計レビュー、Gitのプルリクエストによるコードレビュー、リリース前のダブルチェックを全案件で標準化

商流

元請け〜3次請けまで様々

人財データベースから直接アサイン(1段階・中間マージンなし)

単価の目安

一次統計がなく金額は非掲載

実務3年 1,500USD(約22.5万円、1USD=150円換算の目安)、5年 2,000USD、10年・BrSE 3,000USD。最小構成は月額約80万円〜

開始・増減

数か月単位の契約更新、更新・終了は事前通知

最短2週間で開始、増員は最短1週間、1か月単位でリプレイスメント・縮小

契約・支払い

国内

日本国内の法人と日本法準拠、海外送金不要。時差2時間

国内SESと当社ラボ型の体制の違い——指示の流れ、発注者の管理負荷、商流、単価、開始までの期間を比べた図

同じ準委任でも、「個人の時間を借りる」SESと「PM付きのチームを持つ」ラボ型では、発注者の管理負荷が違います。

発注者が直接指示しなくてよい——偽装請負リスクを構造的に避け、管理負荷を下げる

前章で、SESの偽装請負は「発注者がエンジニアに直接指示を出す」運用から生まれるとお伝えしました。当社のラボ型では、発注者が指示を出す相手は当社の日本人PMで、エンジニアへのタスクの割り振り・進捗管理・レビューはPMが担います。発注者が直接指示する必要がないため、偽装請負のNG例に当たる場面が構造的に生まれにくくなります(法的な判断は個別の契約と運用によるため、必要に応じて専門家にご確認ください)。

同時に、SESで発注者側に残っていた管理負荷(タスク管理・品質確認・勤怠の把握)がPMに移ります。時差は2時間なので、日本の朝会でPMと仕様を確定し、当日中に現地で実装し、翌朝に日本側がレビューする日次サイクルが回ります。品質の仕組みはオフショア開発の品質で詳しく解説しています。

相談例と進め方: SES3名で管理役が疲弊した会社が、PM付きの専属チームに切り替えた

前章で触れた相談例では、社内に管理役がいないまま国内SESで3名を入れ、CTOが日々の指示と確認に追われ、本来の設計とアーキテクチャの仕事が止まっていました。当社のラボ型に切り替え、日本人PMがフロントに立つ構成にしたところ、CTOはPMと週次で優先順位を決めるだけになり、設計に時間を戻せています。国内SESで3名を確保していたときの費用に対し、当社の3名構成では計算上約100万円から(1USD=150円換算の目安)になります。

当社の進め方は、現在の体制と要件のヒアリング、チーム構成と見積もりの提案、面談によるスキルと相性の確認、最短2週間での開始、月次の体制見直しの順です。SESにするか、請負にするか、ラボ型にするかを含めてご相談ください。現在の体制と要件をお聞かせいただければ、概算見積もりでお答えします。

SESに関するよくある質問

SESの仕組みや契約に関する相談に答える担当者

SESについて、言葉の意味、派遣との違い、評判、偽装請負の線引き、ラボ型との選び方など、エンジニア志望の方と発注担当者の双方からよく受ける質問を5つまとめました。社内の説明や契約前の確認にお使いください。

Q1. SESとは何の略ですか?

System Engineering Service(システムエンジニアリングサービス)の略です。SES企業に雇われたエンジニアが常駐先で働き、その技術力を時間単位で提供するサービスを指します。法律上は準委任契約です。

Q2. SESと派遣はどちらが発注側にとって柔軟ですか?

直接指示したいなら派遣、指示はSES企業に任せて手を借りたいならSESです。派遣は派遣業の許可を受けた事業者に限られ、同一組織単位で原則最長3年の期間制限があります。SESに期間制限はありませんが、直接指示はできません。

Q3. 「SESはやめとけ」と言われるのはなぜですか?

多重下請けで手取りが減る、偽装請負の実態がある、希望と違う案件に配属される、という3つが主な理由です。いずれも商流の深さと運用の問題で、商流が浅くルールを守る会社と組めば有効な手段です。

Q4. SESのエンジニアに技術的な質問や相談をしたら偽装請負になりますか?

技術的な質問や情報共有は業務指示に当たらないとされます。問題になるのは、日々のタスクの割り振り、優先順位の変更、残業や勤務時間の指示、評価を発注者が直接行うことです。これらはSES企業の担当者経由で行ってください。

Q5. SESとラボ型、どちらを選ぶべきですか?

社内にエンジニアを管理できるPMがいて、個人単位で手を借りたいならSES。管理役がいない、またはチームで継続的に開発したいなら、PMが指揮とレビューを担うラボ型。判断の軸は単価ではなく「誰が指示とレビューを担うか」。

まとめ: SESは「誰が指示を出すか」「完成責任がないこと」の2点で理解し、管理役がいなければPM付きの形を選ぶ

SESとは、SES企業に雇われたエンジニアが常駐先で働き、「働いた時間」に対してお金を払う準委任契約の仕組みです。押さえるべきは2点で、エンジニアに指示を出すのは常駐先ではなくSES企業であること、システムを完成させる責任はないことです。派遣との違いは指揮命令権の所在、請負との違いは完成責任の有無、フリーランスとの違いは雇用の有無、ラボ型との違いはPM付きのチームかどうかで整理できます。

単価そのものより、清算幅の設定と契約期間・通知期限、商流の深さまで含めて総額と手間を見てください。発注する側は、直接指示しない運用ルールを社内で共有し、品質基準・検収条件・作業報告を契約に書き、商流を確認したうえで発注する。社内にエンジニアを管理できるPMがいないなら、PMごと任せられる請負かラボ型を選ぶのが現実的です。

当社は、SESと同じ準委任で月単位に増減できる柔軟性を保ちつつ、日本人PMが指揮とレビューを担う専属チームを提供しています。開発力の確保手段の全体像は開発リソースの確保もあわせてご覧ください。現在の体制と要件をお聞かせいただければ、SES・請負・ラボ型のどれが合うかを含めて概算見積もりでお答えします。

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