「EORサービスを3社比べたが、料金がどこも同じで決め手がない」——EORの導入を決めた方から、こうした相談をよく受けます。各社が公開する手数料は1名あたり月額199〜699USD(約3〜10.5万円 / 1USD=150円換算の目安)の幅に収まり、グローバル大手は599〜699USDにほぼ横並びです。料金表を並べても差が出ないのだから、決められないのは当然です。
結論から言うと、EORサービスの比較は料金表では終わりません。差が出るのは、料金体系と含まれる範囲、最低契約期間と解約予告とデポジット、為替と送金、契約言語と準拠法、IP(知的財産)と機密の条項、対応国と提供モデル、労務トラブル時の対応、サポート言語と時差、採用支援の有無、乗り換えと出口——この10の軸です。うち後半のほとんどは、料金表ではなく契約書と見積書にしか書かれていません。
比較の手順も、実は決まっています。要件を1枚にまとめ、対応国と提供モデルで候補を3社に絞り、同じ質問票を送り、返ってきた見積もり明細と契約条項を並べる。各社バラバラの様式で資料を受け取っている限り、それは比較ではなく資料集めが実情です。
本記事では、比較の進め方4ステップと10の比較軸の全体像、お金と契約条項で比べる5軸、体制と運用で比べる5軸と各社に送る質問票、グローバル大手と特定国に強い事業者のどちらが自社に「おすすめ」になるか、日本企業がベトナムで使う場合の実務、よくある質問の順に解説します。各社の料金一覧そのものは「雇用代行サービス」の記事、総額の試算は「雇用代行 費用」の記事にまとめてあります。
私は人材業界の出身で、2018年からホーチミンで日系企業約100社の採用と開発体制に関わってきました。EORの相談で見てきた失敗は、たった2つに集約されます。この記事を読み終えるころには、稟議に出せる比較表の形と、各社に投げるべき質問が手元にあるはずです。
目次
- EORサービスの比較は料金表では終わらない
- 手数料は199〜699USDの幅、大手は599〜699USDで横並び
- 比較の進め方4ステップ
- 10の比較軸(一覧表)
- 私が見てきた比較の失敗2つ
- お金と契約条項で比べる5軸
- 軸1 料金体系と含まれる範囲
- 軸2 最低契約期間・解約予告・デポジット
- 軸3 為替と送金
- 軸4 契約言語と準拠法・紛争解決地
- 軸5 IP(知的財産)と機密の条項
- 体制と運用で比べる5軸と、各社へ送る質問票
- 軸6 対応国と提供モデル
- 軸7 労務トラブル時の対応
- 軸8 サポート言語・対応時間と時差
- 軸9 採用支援と軸10 乗り換え・出口
- 各社へ送る質問票(そのまま使える12問)
- グローバル大手か、特定国に強い事業者か
- グローバル大手と特定国特化の対比
- 目的別の早見表
- 日本企業がベトナムで使う場合の実務
- 当社(TALENTBASE VIETNAM)の位置づけと、当社が向かない案件
- EORサービスの比較でよくある質問
- Q1. 手数料が一番安い会社を選べばよいのではありませんか?
- Q2. 比較は何社くらいで行うのがよいですか?
- Q3. グローバル大手と特定国に強い事業者、どちらがおすすめですか?
- Q4. 契約書は日本語で受け取れますか?
- Q5. 契約したあと、他社に乗り換えられますか?
- まとめ: EORサービスの比較は10軸と質問票で並べる
EORサービスの比較は料金表では終わらない——比較の進め方4ステップと10の比較軸

EOR(雇用代行)を使うと決めたあと、多くの担当者が同じ場所で止まります。各社の料金ページを開いて並べても、数字がほとんど変わらないからです。比較が進まない原因は情報不足ではなく、比較している対象が間違っていることにあります。まず、料金表で差が出ない理由と、差が出る場所を押さえてください。
手数料は199〜699USDの幅、大手は599〜699USDで横並び——だから料金表で差は出ない
各社が自社サイトで公開しているEOR手数料は、2026年9月21日時点で、Remofirstが1名あたり月額199USD〜、Deelが599USD、RemoteとOysterが699USDです(いずれも各社の公式料金ページ)。1USD=150円換算の目安で、月額3万円から10.5万円の幅になります。なお料金を公開していない事業者や、見積もりでしか金額を示さない事業者もあります。
この数字を見て「Remofirstが一番安い」と結論づけるのが、最も多い失敗です。EORの請求は「本人給与+現地の雇用主負担の法定費用+手数料」の3層でできており、料金表に載るのは3層目の手数料だけだからです。雇う国が変われば2層目が大きく動きます。同じ手数料でも、雇用主負担の法定費用が給与の数割に達する国と、外国人の社会保険がほぼない国では総額がまったく違います。
しかも、大手は599〜699USDに価格が収束しています。横並びの数字を並べ直しても、差は出ません。
比較の進め方4ステップ——要件を1枚にする、候補を3社に絞る、同じ質問票を送る、明細と契約条項を並べる
比較の順序を先に決めると、迷いが消えます。当社が相談を受けたときに勧めている手順は次の4つです。
- 要件を1枚にする: どの国で、どの職種を、何名、いつから、何年くらい。日本語で運用したいか、契約は日本法人としたいか。この6項目をA4用紙1枚に書き出します
- 対応国と提供モデルで候補を3社に絞る: 雇いたい国がEOR(正社員雇用)の対象に入っているか、その国を自社の現地法人で持つか現地パートナー経由かで、まず候補を絞ります
- 同じ質問票を同じ文面で送る: 各社の営業資料はフォーマットが違います。こちらから同じ12問を投げ、回答を並べて初めて比較になります
- 見積もり明細と契約条項を並べる: 手数料だけでなく、内訳・為替・デポジット・最低契約期間・解約予告・準拠法・IP条項を、社名を伏せた表にして社内に出します
当社がベトナムで雇用代行を引き受ける際も、各社に同じ質問を投げて回答を並べる方法をお勧めしています。営業トークではなく、書面に残った回答どうしを比べられるためです。
10の比較軸(一覧表)——お金と契約の5軸、体制と運用の5軸
質問票の設計図になるのが、次の10軸です。前半5つがお金と契約条項、後半5つが体制と運用にあたります。
No | 比較軸 | 何を見るか | どこに書いてあるか |
|---|---|---|---|
1 | 料金体系と含まれる範囲 | 月額固定型か給与比率型か。手数料に含まれる業務と、別途になる費用 | 料金表+見積書 |
2 | 最低契約期間・解約予告・デポジット | 何か月縛られるか、やめるとき何か月前に言うか、いくら預けるか | 契約書 |
3 | 為替と送金 | 請求通貨、適用レートと為替スプレッド、海外送金の要否 | 見積書+契約書 |
4 | 契約言語と準拠法・紛争解決地 | 自社との契約と現地の雇用契約、それぞれの言語・準拠法・裁判管轄 | 契約書 |
5 | IP(知的財産)と機密の条項 | 成果物とソースコードの権利が自社に移るか。機密保持と再委託の扱い | 契約書 |
6 | 対応国と提供モデル | 雇いたい国がEORの対象か。自社実体で持つか現地パートナー経由か | 公式サイト+質問 |
7 | 労務トラブル時の対応 | 解雇・労働紛争・長期休職で誰が動き、費用は誰が持つか | 質問+契約書 |
8 | サポート言語・対応時間と時差 | 管理画面、問い合わせ窓口、契約書の言語。日本時間で連絡がつくか | 質問+デモ |
9 | 採用支援 | 候補者を探す機能があるか。自社で探すなら人材紹介を別に用意するか | 質問 |
10 | 乗り換え・出口 | 他社や自社現地法人へ移すとき、従業員とデータをどう引き継ぐか | 契約書+質問 |

軸1〜5は契約書と見積書を取り寄せないと埋まりません。軸6〜10は質問しなければ出てきません。つまり10軸のうち、公開情報だけで埋まるのは実質1つだけ、というのが実情です。
私が見てきた比較の失敗2つ——手数料の安さで選ぶ、契約はできたが候補者がいない
私は2018年からホーチミンで日系企業約100社の採用と体制づくりに関わってきましたが、EORの比較で失敗した相談には共通点が2つあります。
1つ目は「手数料の安さで選び、総額で逆転した」ケースです。最安級の事業者を選んだものの、給与の送金に為替スプレッドが乗り、デポジットとして給与1か月分を預け、最低契約期間の縛りがあった。結果として、手数料が高い事業者と契約した場合より年間の負担が増えていた、という話です。料金表だけを見た比較は、失敗のもとです。
2つ目は「契約はできたが、候補者が見つからなかった」ケースです。グローバル大手の多くは雇用管理のプラットフォームで、人を探す機能は含みません。半年間プラットフォームの費用を払い続け、1人も雇えないまま解約した企業を実際に見ています。次章から、10の軸を1つずつ、何を確認すればよいかの形で見ていきます。
お金と契約条項で比べる5軸——料金体系、最低契約期間と解約、為替と送金、準拠法、IPと機密

前半の5軸は、契約書と見積書にしか書かれておらず、しかも契約後には変更できないものばかりです。ここを飛ばして料金の数字だけを比べると、総額と法的リスクの両方を読み違えます。1軸ずつ、確認する項目の形で見ていきます。
軸1 料金体系と含まれる範囲——月額固定型と給与比率型、手数料に含まれる業務・入らない費用
EORの手数料には、1名あたり月額いくらの「月額固定型」と、本人給与の何%という「給与比率型」があります。給与比率型は給与水準の低い国では固定型より安く、給与水準が上がるほど不利になります。ベトナムで実務3年目安のエンジニア(当社公開単価で月1,500USD・約22.5万円 / 1USD=150円換算の目安)を雇う場合、比率型なら固定型より安く見えることがあります。ところが、ブリッジSE級(当社公開単価で月3,000USD・約45万円)を雇うと同じ比率でも金額が倍になり、固定型と逆転します。比率の水準は事業者ごとに異なり公開されていないことが多いため、人数と給与水準を仮置きして両方の型で見積もりを取り、自社の数値で試算するのが確実です。
含まれる範囲も確認してください。一般に手数料に含まれるのは、現地法に沿った雇用契約の作成・締結、給与計算と現地通貨での支払い、社会保険や税の手続き、入退社の手続き、日常の労務管理です。含まれないのは、本人給与、雇用主負担の法定費用(ベトナムは給与の約21.5%+労働組合経費2%)、賞与や13か月目給与、任意の福利厚生、採用費、ビザ・就労許可の支援、為替コストです。総額の試算方法は「雇用代行 費用」の記事にまとめてあります。
軸2 最低契約期間・解約予告・デポジット——資金拘束と出口の条件
料金表に「最低契約期間12か月」と書く事業者はほとんどありません。契約書を取り寄せて確認してください。見るのは次の4点です。
確認項目 | 見るポイント | 差が出る理由 |
|---|---|---|
最低契約期間 | 何か月の縛りがあるか。従業員1名ごとか、契約全体か | 試験的に1名から始めたい企業には致命的な条件になる |
解約予告 | 何か月前の通知が必要か。予告期間中の手数料は発生するか | 30日前と90日前では撤退コストが3倍変わる |
デポジット(保証金) | 給与何か月分を預けるか。返還の時期と条件 | 費用ではなく資金拘束。人数分だけ膨らむ |
初期費用・オンボーディング費 | 契約時の一時金があるか。従業員追加のたびに発生するか | 少人数で何度も追加する使い方では効いてくる |
初期費用ゼロ・デポジット不要をうたう事業者もあります。安い手数料と長い最低契約期間、高い手数料と短い解約予告のどちらが自社に合うかは、雇用の計画期間によって変わります。1年後に現地法人の設立を判断する予定なら、そこで解約できる条件かを先に確認してください。
軸3 為替と送金——請求通貨、適用レート、海外送金の手間
見落とされやすいのが為替です。給与は現地通貨で支払われるため、請求通貨との間で必ず為替の交換が起きます。市場レートにどれだけ上乗せされるか(為替スプレッド)は事業者ごとに異なり、料金表には載らないことがほとんどです。給与総額が大きいほど、この上乗せ分は手数料の差を飲み込みます。見積もり時に「適用レートの決め方」と「上乗せ率」を必ず文書で確認してください。
確認するのは、請求通貨(USD建てか円建てか)、適用レートの決め方(いつの、どこのレートか)、為替手数料が手数料に含まれるか別建てか、そして海外送金が必要かどうかの4点です。海外送金は送金手数料だけでなく、毎月の経理処理の手間としても効いてきます。当社の場合、契約と支払いを日本国内法人(株式会社TALENTBASE JAPAN)で行い、日本法準拠・海外送金不要の形を選べるようにしているのは、この負担を消すためです。
軸4 契約言語と準拠法・紛争解決地——雇用契約と自社との契約は別物
ここは法務部門が必ず引っかかる論点です。EORでは契約が2本走ります。1本は自社とEOR事業者の間のサービス契約、もう1本はEOR事業者と現地の従業員の間の雇用契約です。
自社とEOR事業者の契約については、契約書の言語(日本語か英語か)、準拠法(日本法か、事業者の設立国の法か)、紛争解決地(どこの裁判所か、仲裁か)を確認します。グローバル大手と契約する場合、準拠法が海外で英文契約というケースは珍しくありません。何か起きたときに海外で争えるのか、社内で答えを持っておく必要があります。
現地の雇用契約のほうは、現地法に準拠させる必要があるため、現地語または英語で作られるのが通常です。ベトナムであればベトナム語が原本になります。日本語の対訳や要約を出してもらえるか、契約内容を日本語で確認できるかを聞いてください。日本語の資料がないまま社内の合意形成を進めるのは、要注意です。
軸5 IP(知的財産)と機密の条項——ソースコードの権利は誰に帰属するか
エンジニアやデザイナーを雇う場合、最も重い論点がここです。EORでは雇用主がEOR事業者であるため、従業員が業務で作った成果物の権利は、契約で明示的に移転させない限り自社に来ません。当社が契約書をレビューするときも、雇用契約が現地法に準拠しているか、IP保護と機密保持の条項があるか、データ保護への対応があるか、SOC2やISOなどのセキュリティ認証があるかの4点は必ず確認します。
確認するのは、成果物とソースコードの権利がEOR事業者を経由して自社に移る条項があるか、その移転が現地法で有効か、機密保持の義務が従業員個人にも及ぶか、業務が再委託される場合の再委託先の管理はどうなっているかです。パートナー経由型の場合、実際の雇用法人が別会社になるため、IPと機密の連鎖がどこかで切れていないかを見てください。権利の帰属そのものの考え方は「知的財産 帰属」の記事で整理しています。前半5軸から学べるのは1つで、「料金表の外にあるものほど、後から直せない」ということです。
体制と運用で比べる5軸と、各社へ送る質問票——対応国、労務トラブル、サポート言語と時差、採用支援、出口

後半の5軸は、稼働が始まってからの負担と、やめるときのコストを決めます。営業資料には書かれないため、こちらから質問しなければ出てきません。最後に、そのまま各社へ送れる12問の質問票にまとめます。
軸6 対応国と提供モデル——自社実体で持つか、現地パートナー経由か
各社が掲げる対応国数(2026年9月21日時点の公式サイト表記で、Remofirst 185か国以上、Deel 130か国以上、Oyster 120か国以上、Remote 90か国以上)は、比較の入口としては役に立ちますが、決め手にはなりません。見るべきは2点です。
1点目は、雇いたい国がEOR(正社員としての雇用)の対象に入っているかです。同じ事業者でも、EORで対応する国と、業務委託者の管理だけで対応する国が分かれていることがあります。2点目は、その国をどうカバーしているかです。
- 自社実体型: EOR事業者がその国で現地法人を持ち、自社で直接雇用する。監査証跡が明確で、パートナーの破綻や条件変更のリスクを避けやすい
- パートナー型: 現地パートナーを介して雇用する。対応国を広げやすい反面、実際の雇用法人・責任分担・情報の再委託先を確認する必要がある
どちらのモデルを採っているかは事業者ごと・国ごとに異なり、公開情報からは読み取れないことが多い部分です。雇いたい国ごとに「この国では御社が直接雇用しますか、パートナー経由ですか」と質問して、書面で回答をもらってください。
規制の厳しい業界や、情報管理を重視する企業では、この違いが選定の決め手になります。法務部門が「EOR事業者による直接の実体保有」を求めるなら、候補は最初の段階で絞られます。
軸7 労務トラブル時の対応——解雇・紛争・休職で誰が動くか
平常時のEORは、どの事業者を選んでもさほど変わりません。差が出るのは、辞めてもらう場面、労働紛争になった場面、長期の休職が発生した場面です。雇用主はEOR事業者ですから、現地の労働法に沿った手続きを実行するのはEOR事業者です。
聞くべきは次の4点です。解雇や契約終了の手続きを誰が主導し、どこまで支援するか。解雇に伴う法定の補償や紛争対応の費用は誰が負担するか(追加費用になる事業者もあります)。現地の労務相談に日常的に応じてもらえるか。過去に労働紛争を扱った経験があるか。ベトナムの場合、試用期間・有期契約の更新回数・解雇予告の規定が労働法で細かく定められており、手続きを誤ると無効を争われます。ここを「別途見積もり」で流す事業者は、要注意です。
軸8 サポート言語・対応時間と時差——管理画面、窓口、契約書は別々に確認する
日本語対応は、ひとまとまりの機能ではありません。日本語UI(管理画面)、日本語の問い合わせ窓口、契約書・雇用契約の言語、日本企業の導入実績の4点は、分けて確認してください。日本語サイトがあることと、日本語で労務の相談ができることは別の話です。
あわせて時差を見てください。給与や労務の問題は時間との勝負になります。窓口が欧米にあり、チケットベースで回答が翌営業日になる体制では、月末の給与計算で問題が起きたときに間に合いません。ベトナムは日本との時差が2時間で、日本の営業時間とほぼ重なります。現地の担当者と即日でやり取りできるかどうかは、運用の質を大きく左右します。デモの場で、実際の管理画面の言語と、緊急時の連絡手段を確認してください。
軸9 採用支援と軸10 乗り換え・出口——候補者は誰が探すか、やめるときどうなるか
軸9は、候補者を探す機能があるかどうかです。グローバル大手の多くは雇用管理のプラットフォームで、人材紹介は含みません。候補者が既にいる企業には問題ありませんが、これから探す企業は人材紹介を別に契約する必要があります。当社の場合はグループの人材紹介事業が持つ2,000名以上のIT人財データベース(日本語N1〜N2相当を含む)から候補者を出し、そのまま当社が雇用主となる形をとっており、この断絶が起きない構造にしています。
軸10は出口です。他社へ乗り換えるとき、あるいは自社で現地法人を設立して従業員を転籍させるとき、雇用を継続したまま移せるか、勤続年数や有給の残日数はどう引き継がれるか、給与データや契約書の控えを受け取れるかを、契約前に聞いてください。入口だけ決めて出口を決めない契約は、失敗のもとです。
各社へ送る質問票(そのまま使える12問)
以下をそのまま送り、回答を並べてください。
No | 質問 | 対応する軸 |
|---|---|---|
1 | 貴社の手数料は月額固定型と給与比率型のどちらですか。金額と課金単位を教えてください | 軸1 |
2 | 手数料に含まれる業務と、別途請求になる費用をすべて挙げてください | 軸1 |
3 | 最低契約期間、解約予告期間、デポジットの金額と返還条件を教えてください | 軸2 |
4 | 請求通貨と適用レート、為替手数料の扱い、海外送金の要否を教えてください | 軸3 |
5 | 当社との契約書の言語・準拠法・紛争解決地を教えてください | 軸4 |
6 | 現地の雇用契約の言語と、日本語の対訳・要約の提供可否を教えてください | 軸4 |
7 | 成果物とソースコードの権利が当社に移転する条項と、機密保持・再委託の扱いを教えてください | 軸5 |
8 | 対象国を貴社の現地法人で直接雇用しますか、現地パートナー経由ですか。雇用法人の正式名称を教えてください | 軸6 |
9 | 解雇・労働紛争・長期休職が発生した場合の対応範囲と、追加費用の有無を教えてください | 軸7 |
10 | 管理画面・問い合わせ窓口・契約書それぞれの言語と、日本時間での対応時間を教えてください | 軸8 |
11 | 候補者の採用支援はありますか。ある場合の費用体系を教えてください | 軸9 |
12 | 他社への乗り換えや当社現地法人への転籍の際、雇用継続とデータ引き継ぎはどうなりますか | 軸10 |
12問の回答が並んだ表を見て、社名を伏せても選べる状態になっているでしょうか。そこまで来たら、あとは自社の目的に合う「型」を決めるだけです。
グローバル大手か、特定国に強い事業者か——目的別のおすすめと、日本企業がベトナムで使う場合の実務

10の軸で候補を並べたあと、最後に残る問いが「結局どちらの型がおすすめか」です。答えは企業の規模ではなく、雇う国の数と、候補者を誰が探すかで決まります。ここでは両者の違いを対比し、目的別の早見表にしたうえで、日本企業がベトナムで使う場合の実務と当社の位置づけを説明します。
グローバル大手と特定国特化の対比——強みが出る場面が違う
観点 | グローバル大手(Deel・Remote・Oyster・Remofirstなど) | 特定国に強い事業者 |
|---|---|---|
対応国 | 90〜185か国規模。複数国を1つの基盤で管理できる | 1〜数か国。その国の労働法と給与水準に精通 |
提供モデル | 自社実体型とパートナー型が混在。国によって変わる | 自国に法人を持ち直接雇用する場合が多い |
手数料 | 199〜699USDで公開。大手は599〜699USD | 非公開・個別見積もりが多い |
サポート言語 | 英語が基本。日本語対応は各社・時期で異なる | その国と日本語に特化した窓口を持つ場合がある |
採用支援 | 原則なし(雇用管理のプラットフォーム) | 人材紹介を兼ねる事業者がある |
労務トラブル | 手続きは標準化。個別事情への踏み込みは限定的 | 現地で直接対応できる |
向く場面 | 5か国10名など、多国籍の従業員を横断管理したい | 1か国で人を確保し、長く育てたい |
どちらが優れているという話ではありません。3か国で各1名ずつ雇う企業が特定国特化の事業者を3社契約すると管理が煩雑になりますし、ベトナムで3名を確保して育てたい企業が100か国超に対応する基盤の月額手数料を払う意味は薄い、というだけです。
目的別の早見表——どの条件ならどちらが「おすすめ」になるか
自社の条件 | おすすめの型 | 理由 |
|---|---|---|
3か国以上で雇う/今後も国を増やす | グローバル大手 | 管理を1基盤に集約できる。対応国の広さが直接効く |
コンプライアンスの監査証跡を最優先する | グローバル大手のうち自社実体型 | 雇用法人が明確で、再委託先の確認が要らない |
少人数・低予算で試したい | グローバル大手のうち低価格帯 | 手数料の絶対額が小さい。ただし最低契約期間を要確認 |
1か国で長く雇い、候補者もこれから探す | 特定国に強い事業者(採用支援あり) | 採用と雇用が一体になる。人材紹介の二重契約が要らない |
日本語・日本法人契約・円建てで運用したい | 日本法人を持つ事業者 | 契約・請求・送金の手間が消える |
ベトナムでエンジニアを1〜3名、自社メンバーとして確保したい | ベトナムのIT特化型 | 給与相場と職務理解が採用条件の質に直結する |

早見表の使い方は単純です。自社の条件に当てはまる行を2つ選び、両方が同じ型を指していれば決まりです。指す型が割れた場合は、より優先度の高いほうの行を採用してください。
日本企業がベトナムで使う場合の実務——法定費用、13か月目給与、時差2時間、契約と送金
ベトナムを対象に比較するなら、見積もりに次の要素が入っているかを必ず確認してください。
- 雇用主負担の法定費用: 社会保険等で給与の約21.5%、加えて労働組合経費2%(企業内に組合がなくても納付)。手数料とは別に毎月かかります
- 13か月目給与とテトボーナス: 年13回目の給与とテト(旧正月)前の賞与が慣行です。年額の試算に必ず入れてください
- テト休暇: 2026年は2月14日〜22日。年間の祝日は2026年で12日です(労働法112条の条文上は11日で、2026年からベトナム文化の日が加わります)。稼働日数の前提として合意しておきます
- 時差2時間: 日本の営業時間とほぼ重なるため、現地担当者と即日でやり取りできます。窓口が現地にあるかを軸8で確認します
- 契約と送金: 雇用契約はベトナム語が原本になります。自社との契約を日本法人・日本法準拠・円建てにできるかで、法務と経理の負担が変わります
給与水準の目安として、当社が公開している単価は実務3年目安で1,500USD(約22.5万円)、5年で2,000USD、10年目安・ブリッジSEで3,000USDです(1USD=150円換算目安)。この給与に法定費用と手数料を積み上げたものが総額になります。試算の手順は「雇用代行 費用」の記事に表でまとめてあります。
当社(TALENTBASE VIETNAM)の位置づけと、当社が向かない案件
当社は、上の分類では「ベトナムのIT特化・採用支援付き」に入ります。位置づけを正直に書きます。
- 対応国: ベトナムのみ。拠点はホーチミン。他国は対応できません
- 候補者: グループの人材紹介事業が持つ2,000名以上のIT人財データベース(日本語N1〜N2相当を含む)から直接アサインします。協力会社や紹介経由の仲介マージンは入りません
- 契約: 日本国内法人(株式会社TALENTBASE JAPAN)との契約・日本法準拠・海外送金不要の形を選べます
- 手数料: 公開していません。人数・職種・期間で条件が変わるため、個別見積もりでお答えします
- ラボ型開発との併用: 業務委託(ラボ型)で始めて相性を見てからEORへ、あるいはEORの人財とラボ型チームを併走させる形もとれます。ラボ型は1名から、最短2週間、増員約1週間、縮小・交代は1か月単位です
- 開発体制の実績: 介護記録SaaS「CareViewer」では日本語ブリッジSE1名とフルスタック2名の体制で、従来の半分以下のコストで継続開発しています。品質は日本人PMの設計レビュー、Gitプルリクエストによるコードレビューの標準化、リリース前のダブルチェックで担保しています
一方で、当社が向かない案件もはっきりしています。ベトナム以外の国で雇いたい場合、複数国を1つの基盤で横断管理したい場合、IT以外の職種(営業・経理・製造の現場職など)を雇いたい場合は、グローバル大手や進出コンサル系の事業者のほうが合います。そうした案件では、当社は率直にその旨をお伝えしています。自社の条件を10軸に当てはめたとき、当社の行が残らないなら、残る事業者を選ぶのが正解です。
EORサービスの比較でよくある質問

EORサービスの比較について、相談の場で繰り返し聞かれる質問を5つにまとめました。稟議書の想定問答にもお使いください。
Q1. 手数料が一番安い会社を選べばよいのではありませんか?
手数料は総額の一部にすぎません。総額は「本人給与+現地の雇用主負担の法定費用+手数料」で決まり、さらに為替の上乗せ分、デポジットによる資金拘束、最低契約期間と解約予告の条件が乗ります。手数料が安くても、為替と解約条件で逆転する例は珍しくありません。見積もり明細と契約条項まで並べて比べてください。
Q2. 比較は何社くらいで行うのがよいですか?
3社を推奨します。対応国と提供モデル(自社実体型かパートナー経由型か)で候補を3社に絞り、同じ12問の質問票を同じ文面で送るやり方です。5社以上になると回答の回収と読み込みだけで時間が溶け、2社では比較の基準そのものが作れません。
Q3. グローバル大手と特定国に強い事業者、どちらがおすすめですか?
雇う国の数と、候補者を誰が探すかで決まります。3か国以上で雇う、あるいは今後も国を増やす予定なら、管理を1基盤に集約できるグローバル大手が有利です。1か国で長く雇い、候補者もこれから探すなら、その国の給与相場と職務理解を持つ特定国特化型のほうが、採用条件の質で差が出ます。
Q4. 契約書は日本語で受け取れますか?
契約は2本に分かれます。自社とEOR事業者のサービス契約は事業者次第で、グローバル大手では英文・海外法準拠のこともあります。現地の従業員との雇用契約は現地法に準拠させる必要があるため、ベトナムならベトナム語が原本になります。日本語の対訳や要約を出せるか、準拠法と紛争解決地はどこかを、契約前に必ず確認してください。
Q5. 契約したあと、他社に乗り換えられますか?
乗り換えは可能ですが、条件は契約書次第です。確認するのは、解約予告期間、従業員の雇用を継続したまま移せるか、勤続年数と有給残日数の引き継ぎ、給与データと契約書控えの受け渡しの4点。入口の料金だけでなく出口の条件まで見るのが、比較の最後の仕事。
まとめ: EORサービスの比較は10軸と質問票で並べる——料金表の外に差がある
EORサービスの手数料は1名あたり月額199〜699USD(約3〜10.5万円 / 1USD=150円換算の目安)の幅で、グローバル大手は599〜699USDに横並びです。料金表を並べても差は出ません。差が出るのは、料金体系と含まれる範囲、最低契約期間と解約予告とデポジット、為替と送金、契約言語と準拠法、IP(知的財産)と機密の条項、対応国と提供モデル、労務トラブル時の対応、サポート言語と時差、採用支援の有無、乗り換えと出口という10の軸です。このうち公開情報だけで埋まるのは実質1つで、残りは契約書・見積書と、各社への質問でしか埋まりません。
進め方は4ステップです。どの国で、どの職種を、何名、いつから、何年、日本語と日本法人契約は必要か——この要件をA4用紙1枚にまとめ、対応国と提供モデルで候補を3社に絞り、同じ12問の質問票を同じ文面で送り、返ってきた見積もり明細と契約条項を並べる。社名を伏せても選べる表ができたら、比較は終わりです。型の選択は、雇う国の数と候補者を誰が探すかで決まります。3か国以上なら管理を1基盤に集約できるグローバル大手、1か国で長く雇い候補者もこれから探すなら特定国に強い事業者が有利です。
当社はベトナムのIT人財に特化した採用支援付きの事業者で、2,000名以上のIT人財データベースから直接アサインし、日本国内法人・日本法準拠・海外送金不要の契約を選べます。手数料は人数と職種で変わるため個別見積もりです。逆に、ベトナム以外で雇う場合や複数国を横断管理したい場合、IT以外の職種を雇いたい場合は他社のほうが合うため、その旨を率直にお伝えしています。各社の料金一覧と種類分けはEOR(雇用代行)サービスの種類と比較、総額の試算は雇用代行(EOR)の費用相場をあわせてご覧ください。現在の体制と要件をお聞かせいただければ、EORが合うかどうかの判断と概算見積もりでお答えします。合わない案件にはその旨も率直にお伝えします。