「常駐しているエンジニアに毎朝タスクを割り振っているが、これは偽装請負になるのか」——業務委託で外部のエンジニアを使っている開発マネージャーや総務担当から、こうした相談をよく受けます。人事や監査から「偽装請負ではないか」と言われて初めて調べる方も多い。何がだめで、どこまでなら指示してよいのか。指示をやめたら仕事が回らない、という切実な事情もあります。
結論から言うと、業務委託契約で発注側が行ってはいけないのは、受託側の労働者への直接の指揮命令です。作業の進め方を細かく指示する、勤務時間や場所を厳しく指定する、出退勤を管理する、従わない場合に懲罰を課す、他社との契約を制限する、時間単価で残業代のように払う。これらが重なると、契約書のタイトルが「業務委託契約書」でも実態は労働者派遣とみなされ、偽装請負として職業安定法・労働者派遣法・労働基準法違反に問われる可能性があります。ただし、要件・優先順位・受入基準を伝えることは指揮命令ではありません。
線引きが分かると、仕事を止めずに運用を直せます。成果と優先順位は発注側が決め、日々の作業指示・進捗管理・勤怠は受注側の責任者を通す。この型に変えるだけで、多くの現場は適法に回ります。逆に、名称だけ業務委託にして実態を変えないと、労働局の是正指導、追徴課税、社会保険料の遡及、信用の失墜という失敗のもとになります。
本記事では、指揮命令と指示の違いとNG行為の一覧、偽装請負の4つの類型・判断基準・罰則、SES・ラボ型・オフショアの開発現場で適法に指示を通す方法と契約書の見直し項目、当社の体制、よくある質問の順に解説します。法的助言ではなく相談前の整理としてお読みいただき、最終判断は弁護士・社労士・労働局にご確認ください。
私は人材業界の出身で、SES・派遣・人材紹介の契約実務を扱ったうえで、2018年からホーチミンでベトナムオフショア開発の体制づくりに携わり、約100社の相談に乗ってきました。偽装請負の相談で共通するのは「悪意はなく、線引きを知らなかった」ことです。この記事を読み終えるころには、自社の運用のどこを直せばよいか、契約書に何を書けばよいかが判断できるはずです。
目次
- 業務委託契約で行ってはいけない行為
- 指揮命令と指示の違い
- NG行為の一覧表
- 有効な指示の例
- 私が見てきた2つの相談
- 偽装請負とは
- 4つの類型(表)
- 判断基準——37号告示の2要件と、専属性・報酬の労務対価性。名称ではなく実態
- 罰則とリスク(表)
- 開発現場で起きやすい理由
- 開発現場で適法に指示を通す方法
- 通し方の型(表)
- 「形式だけ責任者型」にしない
- 契約書の見直し項目
- 当社の体制と、指摘を受けたときの進め方
- 業務委託契約で行ってはいけない行為のよくある質問
- Q1. 常駐エンジニアに技術的な質問を直接してよいですか?
- Q2. 準委任で月の稼働時間を決めるのは、時間管理になりませんか?
- Q3. 出社日や作業場所を指定できますか?
- Q4. チャットで直接依頼するのは指揮命令ですか?
- Q5. 偽装請負と指摘されたら、まず何をすればよいですか?
- まとめ: 禁止されるのは指揮命令であって、要件と優先順位の伝達ではない
業務委託契約で行ってはいけない行為——指揮命令と指示の違い、NG行為の一覧

業務委託で外部のエンジニアを使うとき、発注側が「やってはいけないこと」は1つに集約されます。受託側の労働者への直接の指揮命令です。ただし、指揮命令と、業務に必要な情報の伝達(指示)は違います。ここでは両者の違い、NG行為の一覧、有効な指示の例を整理します。なお本記事は法的助言ではなく相談前の整理で、最終判断は弁護士・社労士・労働局にご確認ください。
指揮命令と指示の違い——指揮命令は原則違法、業務遂行に必要な情報の伝達は可
指揮命令は、使用者が労働者を指揮監督して命令する関係です。業務委託契約では委託元と受託企業の労働者の間に雇用関係がないため、委託元がその労働者に直接指揮命令を行うと、実態が労働者派遣であると評価されます。厚生労働省東京労働局は偽装請負を「書類上、形式的には請負(委任(準委任)、委託等を含む)契約ですが、実態としては労働者派遣であるもの」と定義し、違法だと明記しています(2026-09-21確認)。一方で、業務を進めるために必要な情報を伝えることは、指揮命令とは区別されます。
大切なのは、指示が指揮命令に当たらない範囲で行われることです。業務委託の受託者は独立した事業者で、業務の進め方・時間配分・作業場所は原則として受託者の裁量に委ねられます。発注側が決めてよいのは「何を、いつまでに、どの水準で」という成果の定義と優先順位で、「どうやって、何時から何時まで、誰が」という遂行の方法ではありません。
NG行為の一覧表
分類 | やってはいけない行為 | なぜNGか |
|---|---|---|
指揮命令系 | 作業の進め方・手順を細かく指示する(「この方法で」「このツールで」) | 遂行方法は受託者の裁量。指揮命令とみなされる |
指揮命令系 | 個々の労働者に直接タスクを割り振る、業務命令に従わない場合に懲罰を課す | 雇用契約の業務命令権・懲戒権と同じ |
勤怠系 | 勤務時間・休憩・場所を厳しく指定する(「毎日9〜17時にオフィスで」) | 労働時間管理は雇用の特徴。納期までに成果を出す方法は受託者が決める |
勤怠系 | タイムカードの打刻、毎日の出退勤報告を義務付ける、残業を命じる | 勤怠管理は労働者性を強く示す |
専属性 | 他社との契約を制限・禁止する、専念を求める条項を置く | 経済的従属性が高いと雇用に近いと判断される |
報酬系 | 労働時間に応じた時間単価で払い、残業代や休日手当を支払う | 成果や業務の遂行ではなく労働の対価(賃金)とみなされる |
業務内容 | 業務を特定の職務に限定し、受託者に裁量がない | 職務内容の指定は雇用に近い |
機材 | 業務に必要な機材・材料を発注側が全て提供し、受託者がリスクを負わない | 事業者性が低いと判断される |

一覧の項目は、厚生労働省「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」(昭和61年労働省告示第37号、最終改正 平成24年厚生労働省告示第518号)第2条が定める要件と、東京労働局の類型をもとに、システム開発の発注者の視点で並べ直したものです(2026年9月21日確認)。1つだけ当てはまっても直ちに偽装請負とは限りませんが、複数が重なるほど「実態は雇用または派遣」と判断されやすくなります。準委任で月の稼働時間と人数を契約で定めることは可能ですが、出退勤を管理することは別物、という区別が要注意です。
有効な指示の例——安全確保、法令遵守、業務手順の提示、要件・優先順位・受入基準の伝達
反対に、発注側が行ってよいことも整理しておきます。当社が開発現場で運用しているのは、災害時の避難など緊急時の安全確保、個人情報や著作権など法令遵守に関する連絡、そして業務手順の提示(受託側が労働者の配置と指揮命令を行っていることが前提)の3つです。いずれも、個々の作業者への日々のタスク割り振りとは性質が違います。
システム開発ではこれに、要件(何を作るか)、優先順位(何から作るか)、受入基準(どうなれば完了か)の伝達が加わります。これらは成果の定義であって、遂行方法の指揮命令ではありません。週1回の定例で優先順位を決め、チケットで要件を書き、受入テストで完了を判断する。この範囲なら、発注側は必要なことを伝えられます。
私が見てきた2つの相談——毎朝のタスク割り振りと残業依頼、出退勤報告の義務化
私は人材業界の出身で、SES・派遣・人材紹介の契約実務を扱ってきました。相談で多いのは2つの型です。1つは「常駐エンジニア3名に毎朝のスタンドアップで自分がタスクを割り振り、残業も頼んでいたら、人事から偽装請負ではないかと言われた」。もう1つは「業務委託で入っている社内SEに出退勤の報告を求めていたら、労働局の調査で指摘された」。どちらも悪意はなく、線引きを知らなかっただけです。では、実態が偽装請負と判断されるのはどんな場合で、罰則は何か。次章で整理します。
偽装請負とは——4つの類型、判断基準(労働者性)、罰則とリスク

偽装請負とは、契約の名称は請負や業務委託でありながら、実態は労働者派遣や雇用と変わらない状態を指します。厚生労働省東京労働局は典型を4つの類型に整理しており(「偽装請負について」2026-09-21確認)、労働局の是正指導や罰則の対象になります。ここでは4類型、判断基準、罰則とリスク、そして開発現場で起きやすい理由を整理します。
4つの類型(表)——厚生労働省東京労働局の整理
類型 | 何が起きているか | 開発現場での例 |
|---|---|---|
代表型 | 請負と言いながら、発注者が業務の細かい指示を労働者に出し、出退勤・勤務時間の管理を行う | 発注側のマネージャーが常駐エンジニアに毎日タスクを割り振り、残業を指示する |
形式だけ責任者型 | 現場に形式的に責任者を置くが、その責任者は発注者の指示を個々の労働者に伝えるだけで、実態は発注者が指示している | 受注側のリーダーが伝言役で、設計判断もレビューもしていない |
使用者不明型 | 業者Aが業者Bに発注し、BがCに丸投げ。Cの労働者がAの現場でAやBの指示で働き、誰に雇われているか分からない | 多重下請けで、実作業者の雇用主が発注側から見えない |
一人請負型 | 発注者と受託者の関係を請負と偽装し、さらに受託者と労働者の雇用関係も個人事業主の請負として偽装。実態は発注者の指示で働く | 個人事業主扱いのエンジニアが、実質的に発注側の指示で常駐勤務している |
出典は厚生労働省東京労働局「偽装請負について」(https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/roudousha_haken/001.html、2026-09-21確認)です。類型の名称と定義は同ページの表記に合わせています。開発現場で最も多いのは代表型と形式だけ責任者型で、責任者を置けば安心という誤解が形式だけ責任者型を生みます。
判断基準——37号告示の2要件と、専属性・報酬の労務対価性。名称ではなく実態
偽装請負かどうかは、契約書の名称ではなく実態で総合的に判断されます。基準になるのは厚生労働省「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」(昭和61年労働省告示第37号、最終改正 平成24年厚生労働省告示第518号)です。同告示第2条は、請負の形式による契約であっても、(1)自己の雇用する労働者の労働力を自ら直接利用していること(業務の遂行方法に関する指示や評価、始業・終業の時刻や休憩・休日・残業に関する指示、服務規律や配置の決定を自ら行うこと)と、(2)請け負った業務を自己の業務として発注者から独立して処理していること(業務に要する資金を自ら調達・支弁し、民法・商法その他の法律に規定された事業主としての責任を負い、自己の責任と負担で調達した機械・設備・器材または材料・資材で処理するか、企画または専門的な技術・経験を必要とする業務を処理すること)のいずれにも該当する場合を除き、労働者派遣事業に当たると定めています(2026年9月21日確認)。あわせて実務では、特定の企業の仕事しかできない状況になっていないか(専属性)、報酬が成果ではなく労働時間や日数に応じて支払われていないか(報酬の労務対価性)も、労働者性を示す着眼点として見られます。
これらが複合的に認められると、契約書上は業務委託でも実態は雇用または派遣と判断されます。逆に言えば、契約書のタイトルを変えても実態が変わらなければ意味がなく、契約と運用の両方を直す必要があります。
罰則とリスク(表)
根拠 | 内容 | 罰則の目安 |
|---|---|---|
職業安定法(第44条・第64条第10号) | 44条は労働者供給事業を禁止し、供給される労働者を自らの指揮命令の下に労働させることも禁じている | 1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金(64条) |
労働者派遣法(第5条第1項・第59条第2号) | 許可を受けずに労働者派遣事業を行った場合 | 1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金(59条2号) |
労働者派遣法(第24条の2・第40条の6第1項第2号) | 派遣元事業主以外から労働者派遣の役務の提供を受けることの禁止。24条の2自体に罰則の定めはないが、違反した時点で派遣労働者に労働契約の申込みをしたものとみなされる | 罰則なし。労働契約申込みみなし制度の対象 |
労働基準法(第6条・第118条第1項) | 中間搾取の排除。法律に基づいて許される場合のほか、業として他人の就業に介入して利益を得ることを禁止 | 1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金(118条1項) |
税務・社会保険 | 雇用とみなされ、源泉徴収・社会保険料の会社負担分を遡って請求される可能性 | 追徴課税・遡及請求 |
信用 | 是正指導の公表、取引先・求職者からの信用失墜 | — |
罰則の条文と金額は、e-Gov法令検索で職業安定法44条・64条、労働者派遣法5条・24条の2・40条の6・59条、労働基準法6条・118条の条文原文を取得して確認しました(確認日2026-09-21)。刑法等の改正により、法定刑の表記は「懲役」から「拘禁刑」に改まっています。罰則より実務で重いのは、追徴と社会保険料の遡及、そして「あの会社は偽装請負をしていた」という評判です。
開発現場で起きやすい理由——業務委託・雇用・派遣の指揮命令の違いを理解していない
偽装請負が起きる主な原因は、業務委託・直接雇用・派遣で指揮命令の扱いが違うことを理解しないまま外部人材を使うことにあります。直接雇用なら細かい指示も労働時間の管理もでき、派遣なら派遣先が業務の指示を出せますが、業務委託ではどちらもできません。同じ「常駐エンジニア」でも、派遣契約と業務委託契約で発注側にできることが違うのに、現場は同じように扱ってしまう。これが実情です。
当社のラボ型では、2,000名以上のIT人財データベースから直接アサインするため多重下請けが構造的に発生せず、使用者不明型は起きません。日本人PMが設計レビューとコードレビューで実質的な判断を担うため、形式だけ責任者型にもなりません。契約形態の違いを理解し、それに合った体制で運用する。これが約100社を見てきた私の教訓です。
開発現場で適法に指示を通す方法——SES・ラボ型・オフショアの運用、契約書の見直し、当社の体制

線引きが分かれば、仕事を止めずに運用を直せます。ここでは、発注側と受注側の責任者がそれぞれ何を担うかの「通し方の型」、形式だけ責任者型にしないための体制、契約書の見直し項目、当社の体制と、指摘を受けたときの進め方を整理します。
通し方の型(表)
誰が | 担うこと | 残すもの |
|---|---|---|
発注側(プロダクトオーナー役) | 要件(何を作るか)、優先順位(何から作るか)、受入基準(どうなれば完了か)を決める。週1回の定例で判断する | チケット(要件・受入条件)、定例の議事、受入テストの結果 |
受注側の責任者(PM・リーダー) | 要件をタスクに分解し、エンジニアに割り振る。進捗と品質を管理し、勤怠・配置・交代を決める。設計・コードレビューで実質的に判断する | 週次報告、レビュー記録、稼働の報告 |
エンジニア | 責任者の指示で実装・テスト。技術的な質問は定例やチャットで発注側と直接やり取りしてよい(指揮命令ではなく情報交換) | プルリクエスト、テスト結果 |
契約書 | 業務範囲、月の稼働時間と人数、指揮命令の所在、報告の方法、交代条件、解約条件 | 契約書、発注書 |

SESでもラボ型でもオフショアでも、この型は同じです。発注側が個々のエンジニアにタスクを割り振り、勤怠を管理する運用を、責任者経由に変える。技術的な質問や仕様の確認を発注側とエンジニアが直接話すことは、情報交換であって指揮命令ではありません。ただし、その場で作業指示に変わらないよう、決定事項はチケットに書き、責任者が割り振る運用にしてください。
「形式だけ責任者型」にしない——責任者が実質的に判断する体制
責任者を置けば安心、ではありません。責任者が発注側の指示を伝えるだけなら、形式だけ責任者型として偽装請負です。責任者が実質的に判断している状態とは、要件をタスクに分解し、誰が何をやるかを決め、設計とコードをレビューし、品質に責任を持つことです。月1回しか現場に来ないSES会社の責任者では、この実態を作れません。
オフショアのラボ型では、PMやブリッジSEがこの責任者にあたります。当社では日本人PMがフロントに立ち、発注側は要件と優先順位をPMと決め、PMが設計レビュー・Gitプルリクエストによるコードレビュー・リリース前ダブルチェックで実質的な判断を担います。介護記録SaaS「CareViewer」では、週次の定例で発注側が優先順位を決め、日本語ブリッジSEとエンジニア2名がそれを実装する運用を続けています。
契約書の見直し項目——業務範囲と指揮命令の取り決め、稼働時間の定義、専属禁止条項、再委託、フリーランス新法
運用と合わせて、契約書も見直します。1つ目は、業務範囲と指揮命令の所在を明記することです。「業務の遂行に関する指示は受注側の責任者が行う」と書面にします。2つ目は、稼働時間の定義です。準委任の履行割合型で、月の稼働時間に下限と上限の精算幅を設け、人数とあわせて定めることは稼働量の契約であり、出退勤の管理とは別です。「稼働の報告」を受ける形にし、タイムカードや残業命令にしないでください。3つ目は、専属を強制する条項を置かないこと。4つ目は、再委託の可否と、再委託先の管理責任を明記すること。使用者不明型を防ぎます。5つ目は、個人事業主に発注する場合のフリーランス新法(2024年11月1日施行)への対応で、取引条件の書面または電磁的方法での明示と、報酬の支払期日(原則60日以内)を守ることです。
当社の体制と、指摘を受けたときの進め方
当社のラボ型は準委任契約で、契約と支払いは日本国内の法人と日本法準拠です。月の稼働時間と人数、増員(約1週間)と縮小・交代(1か月単位)の条件、成果物の帰属、再委託の扱いを契約書に明記し、発注側からの指示は日本人PMを通します。実務3年目安1,500USD(約22.5万円)から単価を公開し、1名から最短2週間で始められます。海外のエンジニアに日本から指示を出す形でも、契約相手が日本法人でPMが実質的に判断する体制なら、指揮命令の問題は起きにくい構造です。
人事や監査、労働局から指摘を受けたら、まず現状の運用を書き出してください。誰が誰にどう指示しているか、勤怠をどう扱っているか、報酬をどう算定しているか。次に、通し方の型に照らして運用を変え、契約書の条項をそろえ、受注側の会社と合意します。是正は発注側だけでなく受注側にも責任がある事項なので、一緒に文書化するのが現実的です。そのうえで弁護士・社労士・労働局に確認する。あなたの現場は、責任者が実質的に判断しているでしょうか。それとも、伝言役になっていないでしょうか。
業務委託契約で行ってはいけない行為のよくある質問

業務委託の指示の線引きについて、開発の現場責任者や総務担当から相談の場で繰り返し聞かれる質問を5つにまとめました。運用の見直しにお使いください。
Q1. 常駐エンジニアに技術的な質問を直接してよいですか?
かまいません。仕様の確認や技術的な情報交換は指揮命令ではありません。ただし、その場で「今日中にこれをやって」という作業指示に変わらないよう、決定事項はチケットに書き、受注側の責任者が割り振る運用にしてください。
Q2. 準委任で月の稼働時間を決めるのは、時間管理になりませんか?
なりません。月あたりの稼働量に精算幅を設け、人数とあわせて契約で定めるのは稼働の契約で、出退勤の管理や残業命令とは別です。稼働の報告を受ける形にし、タイムカードの打刻や毎日の出退勤報告の義務化は避けてください。
Q3. 出社日や作業場所を指定できますか?
セキュリティ上の理由で作業場所を限定することや、定例の日程を合意することは可能ですが、毎日の勤務時間と場所を発注側が一方的に管理するのは勤怠管理にあたります。合意事項として契約書に書き、運用は受注側の責任者が行う形にしてください。
Q4. チャットで直接依頼するのは指揮命令ですか?
内容によります。要件や優先順位の共有、質問への回答は情報交換です。個々のエンジニアに作業を割り振り、期限を切り、進め方を指定するなら指揮命令に近づきます。依頼は責任者宛てにし、割り振りは責任者が行うのが安全です。
Q5. 偽装請負と指摘されたら、まず何をすればよいですか?
現状の運用(誰が誰にどう指示し、勤怠と報酬をどう扱っているか)を書き出し、通し方の型に照らして運用を変え、契約書の条項をそろえ、受注側の会社と合意してください。そのうえで弁護士・社労士・労働局に確認する。契約と運用の両方を直すのが是正の基本。
まとめ: 禁止されるのは指揮命令であって、要件と優先順位の伝達ではない——契約と運用をそろえる
業務委託契約で発注側が行ってはいけないのは、受託側の労働者への直接の指揮命令です。作業の進め方を細かく指示する、勤務時間や場所を厳しく指定する、出退勤を管理する、従わない場合に懲罰を課す、他社との契約を制限する、時間単価で残業代のように払う。これらが重なると、契約書のタイトルにかかわらず実態で偽装請負と判断されます。一方で、要件・優先順位・受入基準の伝達、安全確保や法令遵守の指示、業務手順の提示は指揮命令ではありません。
偽装請負の典型は、東京労働局の整理で代表型・形式だけ責任者型・使用者不明型・一人請負型の4つで、37号告示第2条の2要件(労働力を自ら直接利用していないか、業務を独立して処理しているか)と、専属性・報酬の労務対価性といった労働者性の着眼点をもとに、実態で総合的に判断されます。職業安定法・労働者派遣法・労働基準法の罰則に加え、追徴課税・社会保険料の遡及・信用失墜のリスクがあります。開発現場で起きる原因は、業務委託・雇用・派遣で指揮命令の扱いが違うことを理解しないまま、同じ「常駐エンジニア」として扱ってしまうことです。
是正と予防は、契約と運用の両方でそろえます。発注側は要件・優先順位・受入基準を決め、受注側の責任者が作業指示・進捗・勤怠を担い、決定事項はチケットと週次報告に残す。責任者は伝言役ではなく、設計・コードレビューで実質的に判断する体制にする。契約書には業務範囲と指揮命令の所在、稼働時間の定義、再委託、フリーランス新法への対応を明記する。当社のラボ型は、日本人PMがフロントで実質的に判断し、日本国内の法人と日本法準拠で契約し、稼働時間と人数を契約で定めています。契約の基礎は業務委託契約とは、ラボ型とSESの違いはラボ型開発とSESの違いもあわせてご覧ください。現在の体制と運用をお聞かせいただければ、指示の通し方と体制の整理、概算見積もりでお答えします。合わない案件にはその旨も率直にお伝えします。契約実務の最終判断は弁護士・社労士・労働局にご確認ください。