「同じ要件で3社に相見積もりを出したら、180万円、520万円、1,400万円と返ってきた。どれが正しいのか分からない」——ECサイトの開発を外注しようとしている方から、こうした相談をよく受けます。構築方法が違えば金額が変わるのは分かる。それでも、何がこの差を生んでいるのか、自社はどのレンジで考えればよいのかが、見積書からは読み取れない。
結論から言うと、ECサイト開発の外注費用は、どの構築方法を選ぶかで桁が変わります。ただし発注判断に必要なのは平均値ではありません。「構築方法別のレンジ」「見積もりに含まれない費用」「公開後の保守と改善」の3つを分けて積み上げた初年度総額と、3年間の総額です。この3つを分解せずに総額だけを比べると、安い見積もりを選んだ結果、決済・連携・データ移行・撮影・改善が後から積み上がります。
費用を項目に分解できれば、社内の予算申請も、他社との比較も、要件の取捨選択もできるようになります。逆に「一式500万円」のまま発注すると、どこまでが料金内なのかが曖昧なまま進み、公開直前に追加見積もりが出る。この違いは、契約前に見積書を分解したかどうかで決まります。
本記事では、構築方法別と規模別の費用レンジ、見積もりに含まれない費用の一覧、越境ECと多言語対応の追加コストとセキュリティ要件、公開後の保守と改善の費用感と内製外注の切り分け、そしてオフショア・ラボ型で継続開発する場合の費用構造の順に解説します。金額は出典と時点を明記し、幅のあるものは幅のまま示します。
私は人材業界の出身で、2018年からホーチミンでベトナムオフショア開発の体制づくりに携わり、約100社の相談に乗ってきました。当社ではヘッドレスCMS構成のサイト構築や、Stripeなどの決済代行APIを統合した決済アプリの新規開発と、リリース後の週次保守を担当しています。この記事を読み終えるころには、自社のECサイトにいくら見ておけばよいか、どこを外注しどこを社内に残すかが判断できるはずです。
目次
- ECサイト開発を外注する費用の相場
- 構築方法6分類の費用比較表(モール/ASP・SaaS/オープンソース/パッケージ/フルスクラッチ/ヘッドレスコマース)
- 規模別・年商別の考え方
- 同じ方式でも見積もりが数倍違う5つの要因
- 見積もりに含まれない費用
- 含まれない項目のチェック表(初期費用・月額・手数料の3列で確認する)
- 決済まわり: 決済代行の初期費用と月額、売上に連動する決済手数料
- 物流・WMS連携、基幹システム連携、商品データ移行
- デザイン、撮影とささげ業務、SEO初期設計、公開後の運用改善
- 越境EC・多通貨多言語の追加コストと、セキュリティ要件(カード情報の非保持化)
- 越境EC・多言語の機能別コスト(通貨・決済・配送・翻訳)
- 言語数と対象国で変わる
- セキュリティ: カード情報の非保持化かPCI DSS準拠か、EMV 3-Dセキュアと脆弱性対策
- 公開後の保守と改善の費用感、内製と外注の切り分け
- 保守費用の相場と、保守契約に何が含まれるか
- 「作って終わり」にしないための改善予算
- 内製と外注の切り分け表
- オフショア・ラボ型で継続的に開発する選択肢
- 当社の公開単価と最小構成(日本人PM+2〜3人月で月額約80万円〜)
- ECまわりの実績
- 向く案件と向かない案件
- ECサイト開発の外注費用でよくある質問
- Q1. ECサイトの開発を外注すると、最低いくらかかりますか?
- Q2. 「一式500万円」の見積書は、どう分解すればよいですか?
- Q3. Shopifyのような既製SaaSと自社開発、どちらを選ぶべきですか?
- Q4. 公開後の保守費用はいくら見ておけばよいですか?
- Q5. オフショア開発にすれば本当に安くなりますか?
- まとめ: 費用は方式ではなく要件の分解で決まる
ECサイト開発を外注する費用の相場——構築方法別と規模別のレンジ【2026年版】

ECサイトの開発費用は、どの構築方法を選ぶかで桁が変わります。モールに出店するだけなら既製の仕組みにそのまま乗せられますが、基幹システムと深く連携するフルスクラッチなら設計から作り込むことになり、必要な工数がまったく違います。まずは構築方法ごとの性格を並べ、自社がどの帯にいるのかを確かめてください。なお金額については、公開された一次統計が確認できるものだけを扱い、他社が独自に集計した相場は掲載していません。
構築方法6分類の費用比較表(モール/ASP・SaaS/オープンソース/パッケージ/フルスクラッチ/ヘッドレスコマース)
構築方法 | 初期費用の目安 | 月額・継続費用 | カスタマイズ性 | 構築期間の目安 | 向く規模 |
|---|---|---|---|---|---|
モール型(楽天・Amazon等) | 一次統計がなく非掲載 | 出店料+売上連動の販売手数料 | 低い | 2週間〜1か月 | 個人〜小規模 |
ASP・SaaS型(Shopify、futureshop等) | 一次統計がなく非掲載(サービス利用料と制作費は別建て) | サービス利用料+決済手数料 | 中(アプリで拡張) | 1〜4か月 | 小〜中規模 |
オープンソース型(EC-CUBE等) | 一次統計がなく非掲載 | サーバー代+保守費 | 高い | 2〜6か月 | 小〜中規模 |
パッケージ型 | 一次統計がなく非掲載 | ライセンス料+保守費 | 非常に高い | 4〜10か月 | 中〜大規模 |
フルスクラッチ型 | 一次統計がなく非掲載 | インフラ費+保守費 | 非常に高い | 8〜18か月 | 大規模 |
ヘッドレスコマース | 構成と連携範囲で大きく変動 | インフラ+保守で月10万円〜 | 非常に高い | 3〜8か月 | 中〜大規模・多チャネル |

※構築方法別の初期費用・月額は、公開された一次統計が確認できないため金額を掲載していません。カスタマイズ性・構築期間・向く規模は、当社が受託・支援してきた案件にもとづく実務上の整理です。
同じ「ASP型」でも見積もりが大きく開くのは、サービス利用料と制作費が別物だからです。Shopifyの月額利用料そのものは小さくても、オリジナルデザイン、独自の定期購入ロジック、在庫連携を外注すれば、制作費が別に積み上がります。表を見るときは「サービスの利用料」と「外注する開発費」を必ず分けてください。
規模別・年商別の考え方——予算帯ごとに何ができるか
予算から逆算する場合の考え方も押さえておきます。予算が小さい帯ではモール型・ASP型のテンプレート構築が中心になり、予算が上がるにつれて有料ASPの上位プランやオープンソースでのデザインカスタマイズ、オリジナルデザインと業務に合わせた機能追加、さらに基幹システム連携を含む高度なカスタマイズへと、できることの範囲が段階的に広がります。なお予算帯ごとの金額の目安は、他社の集計しか存在せず公開された一次統計が確認できないため、本記事では示していません。
年商から見ると、規模が小さいうちはASP型が主流で、年商が伸びるほど基幹連携や独自の販売ロジックが増え、初期費用も運用費も上がっていきます。こちらも金額の帯は一次統計がないため示しませんが、選び方の原則ははっきりしています。自社の現在の年商ではなく「3年後に目指す年商」で構築方法を選ぶと、1〜2年での作り直しを避けられます。
同じ方式でも見積もりが数倍違う5つの要因
方式を固定しても、見積もりは大きく動きます。当社が相見積もりの相談を受けるときは、その要因を5つに分けて確認しています。①カスタマイズの範囲と独自機能の量、②デザインの作り込み(テンプレートかフルオーダーか)、③外部システム連携の有無(在庫・基幹・CRM・物流)、④開発体制(自社対応か外注か、その配分)、⑤保守・サポート体制の充実度、の5つです。
相見積もりを比べるときは、総額の大小ではなく、この5つのどこに金額が乗っているかを分解してください。A社が安いのは連携が見積もり範囲外だからかもしれませんし、B社が高いのは24時間サポートが含まれているからかもしれません。私が現場で見てきた限り、金額差の正体は技術力の差より「見積もり範囲の差」であることのほうが多いのが実情です。では、その範囲から外れやすい費用には何があるのか。次章で項目ごとに並べます。
見積もりに含まれない費用——決済・物流・基幹連携・データ移行・撮影・運用改善

ECサイトの見積書は、たいてい「サイトを作る部分」しか含んでいません。ところが実際に事業を回すには、決済を通し、在庫と基幹をつなぎ、商品データを移し、写真を撮り、公開後に直し続ける必要があります。ここでは、見積もりの外側に出やすい費用を項目ごとに並べます。発注前にこの表を開発会社に渡し、含まれるか含まれないかを一行ずつ確認してください。
含まれない項目のチェック表(初期費用・月額・手数料の3列で確認する)
項目 | 初期費用の目安 | 月額・継続費用の目安 | 見積書に含まれやすいか |
|---|---|---|---|
決済代行の導入(接続方式の実装) | 一次統計がなく非掲載 | 一次統計がなく非掲載 | 実装のみ含む・契約は別 |
決済手数料 | — | 決済代行会社の公表料率による(売上連動) | 含まれない(売上連動) |
物流・WMS連携(倉庫・3PLとの受注/出荷連携) | 一次統計がなく非掲載 | 一次統計がなく非掲載 | 別見積もりが多い |
基幹システム(ERP)・在庫・CRM連携 | 一次統計がなく非掲載 | 一次統計がなく非掲載 | 別見積もりが多い |
商品データ移行(既存サイト・モールからの移設) | 一次統計がなく非掲載 | — | 含まれないことが多い |
デザイン(テンプレート改変〜フルオーダー) | 一次統計がなく非掲載 | — | 範囲が曖昧になりやすい |
撮影・ささげ業務(商品登録) | 一次統計がなく非掲載(商品点数で決まる) | 新商品追加分は都度 | 含まれないことが多い |
SEO初期設計・GA4などの計測環境構築 | 一次統計がなく非掲載 | — | 含まれないことが多い |
サーバー・SSL・CDN・バックアップ | 一次統計がなく非掲載 | 一次統計がなく非掲載 | インフラ費は別建て |
公開後の運用改善(バナー更新・LPO・改修) | — | 一次統計がなく非掲載 | 含まれない(保守契約は別) |

上表は、どの項目が見積書の外に出やすいかを当社の受注・相談の経験から整理したものです。各項目の金額は、公開された一次統計が確認できないため掲載していません。依頼先と要件で大きく変わるため、発注前に一行ずつ金額を出してもらってください。
決済まわり: 決済代行の初期費用と月額、売上に連動する決済手数料
見落としが最も大きいのが決済です。決済代行サービスとの契約には初期費用と月額固定費が発生し、そのうえで取引額に応じた決済手数料がかかります。決済手数料の料率は決済代行会社が公表しており、契約するサービスと決済手段で変わります。越境ECではさらに高くなるのが一般的です。売上に比例して増える費用なので、年商が上がるほど絶対額が大きくなります。
この費用は見積書には載りません。売上が立ってから発生するためです。しかし事業計画上は最も大きな固定的コストの一つになるため、手数料率の差が0.5%あるだけで年間の利益が数十万円変わります。開発会社を選ぶ段階で、どの決済代行と接続する前提か、手数料率はいくらかを必ず確認してください。
物流・WMS連携、基幹システム連携、商品データ移行——後から出てくる三大追加
私は2018年からホーチミンで約100社の開発体制の相談に乗ってきましたが、ECの相談で最も多いのが「初期費用の安さで選んだら、基幹連携と商品データ移行が別見積もりで200万円追加になった」というものです。この3つは仕様が発注側の既存システムに依存するため、見積もり段階では「別途お見積り」と書かれやすい領域です。
避ける方法は単純で、相見積もりを取る前に、連携先のシステム名、APIの有無、移行する商品点数と項目、テストの範囲を一枚にまとめて全社に同じ条件で渡すことです。この一枚がないまま総額だけを比べるのは、失敗のもとです。
デザイン、撮影とささげ業務、SEO初期設計、公開後の運用改善
デザインは、既存テンプレートを改変するのか、ブランドの世界観をゼロから作り込むフルオーダーなのかで工数が大きく変わります。撮影と商品登録(ささげ業務)は商品点数に比例して効きます。画像と商品情報を渡して登録してもらうのか、紙のパンフレットから起こすのかで1点あたりの作業量が変わり、点数が多いほど総額への影響が大きくなります。
そして最も抜けやすいのが、公開後の運用改善です。ECは公開した時点が出発点で、売上はそこからの改善で決まります。構築費に予算を使い切ってしまい、改善に手が回らないまま1年が過ぎる——これがECの外注で最も多い失敗です。改善の予算をいくら残すかは、第4章で具体的に置きます。
越境EC・多通貨多言語の追加コストと、セキュリティ要件(カード情報の非保持化)

海外にも売りたい、という要件が入った瞬間に、見積もりは一段上がります。経済産業省「令和6年度 電子商取引に関する市場調査」(2025年8月26日公表)によると、2024年の日本の消費者による越境EC購入額は4,410億円(伸び率4.8%)で、中国の消費者が日本事業者から購入した越境EC額は2兆6,372億円(前年比8.5%増)にのぼります。海外の消費者に売る機会は着実に広がっており、検討する企業は増えています。ここでは越境対応の追加コストと、国内・越境を問わず避けられないセキュリティ要件を分けて整理します。
越境EC・多言語の機能別コスト(通貨・決済・配送・翻訳)
カテゴリ | 主な機能 | 費用が膨らむ条件 |
|---|---|---|
通貨対応 | 多通貨表示切替、為替レート連携、国別価格設定、関税自動計算 | 国別価格と関税計算を自動化するほど重くなる |
決済対応 | 国際カード、PayPal、現地決済(Alipay等)、3Dセキュア、決済代行連携 | 現地決済を増やすほど連携先が増える |
配送対応 | 国際送料自動計算、配送業者API連携、住所バリデーション、通関書類、海外倉庫連携 | 通関書類と海外倉庫連携まで含めると大きくなる |
翻訳対応 | 翻訳管理システム連携、AI翻訳+人力レビュー、多言語商品DB、hreflang設計 | 商品点数と言語数の掛け算で効く |
金額は、SaaS(Shopify等)の機能で足りるのか、カスタム開発が要るのかで桁が変わります。見積もりを取るときは、この4カテゴリを分けて、どこまでを自動化するかを先に決めてください。
翻訳は初期費用だけでなく継続費用になる点に要注意です。新商品を追加するたびに多言語の商品情報が要ります。翻訳費は「商品点数×言語数」で積み上がるため、商品数が多いほど効いてきます。AI翻訳をベースにネイティブがレビューするハイブリッド方式が、費用と品質の折り合いとして実用的です。
言語数と対象国で変わる——日英2言語から段階的に広げる
言語を1つ増やすたびに、翻訳・決済・法規制の対応が積み上がります。対象国でも差が出て、米欧はStripeやPayPalで大部分をカバーできる一方、中国向けはAlipay/WeChat Payの連携に加えて、ICP登録と個人情報保護法(PIPL)への対応が別途必要になります。
現実的な進め方は、まず日英2言語で立ち上げ、売上データを見ながら3〜5言語へ広げることです。全言語を同時に立ち上げると、初期費用が膨らむだけでなく、翻訳の更新と多言語のカスタマーサポートという継続負荷が一度に来ます。
セキュリティ: カード情報の非保持化かPCI DSS準拠か、EMV 3-Dセキュアと脆弱性対策
クレジットカードを扱うEC事業者は、2018年6月1日施行の改正割賦販売法とその実務指針である「クレジットカード・セキュリティガイドライン」により、カード情報の「非保持化」または「PCI DSS準拠」のいずれかが求められています。非保持化とは、自社が保有する機器・ネットワークでカード情報を保存・処理・通過させない状態を指します(日本クレジット協会「加盟店(クレジットカードを取り扱うお店)の皆様へ」)。
費用の観点では、この選択が大きな分岐になります。決済代行のトークン決済やリンク型決済を使えば実装工数だけで非保持化を実現できますが、PCI DSSに準拠する道を選ぶと、12要件に基づく設計、毎年の審査または自己問診(SAQ)、四半期ごとの脆弱性スキャンといった継続的な設備投資と人員が必要になります。カード情報を自社で持つ積極的な理由がなければ、非保持化を前提に設計するのが定石です。
加えて、同ガイドラインは不正利用対策として原則すべてのEC加盟店にEMV 3-Dセキュアの導入を求めており、その期限は2025年3月末でした。ECサイトの脆弱性対策もあわせて求められています。2026年に新規構築するなら、非保持化の接続方式、EMV 3-Dセキュア、脆弱性診断の3点は見積もりの前提条件に入れておくべき項目です。なお当社は、開発側の品質担保として日本人PMによる設計レビュー、Gitのプルリクエストによるコードレビューの標準化、リリース前のダブルチェックを標準運用にしており、決済アプリの開発ではStripeなどの決済代行APIの統合と二要素認証を実装してきました。セキュリティ要件を「あとで足すもの」にしていないか、見積書を確認してみてください。
公開後の保守と改善の費用感、内製と外注の切り分け

ECサイトは作って終わりではありません。むしろ売上は公開後の改善で決まります。ここでは、毎月かかる保守の相場、改善にいくら残すべきか、そして何を社内に残し何を外に出すかの線引きを整理します。予算表の「2年目以降」の行を埋めるための章だと考えてください。
保守費用の相場と、保守契約に何が含まれるか
保守費用は、サイトの規模と機能の多さで変わります。機能が多い自社ECや越境ECほど、障害対応と改修の範囲が広がるぶん高くなります。金額の相場は、他社が独自に集計したものしか存在せず公開された一次統計が確認できないため、本記事では示していません。加えて、サーバー・SSL・CDN・バックアップ・セキュリティ対策といったインフラ費が、保守費とは別に毎月発生します。
問題は、この金額に何が含まれるかが会社によって違うことです。契約前に、①障害対応の受付時間と一次応答までの時間、②プラットフォームやライブラリのバージョンアップ対応、③脆弱性が公表されたときの緊急対応、④バナー差し替えなど軽微な更新の月間上限、⑤上限を超えた場合の時間単価、の5点を確認してください。月額の金額だけを見て安いと判断しても、④が含まれない契約なら、実際の運用費は倍になります。
「作って終わり」にしないための改善予算——初年度は構築費の2〜4割を残す
ECの売上は、アクセス数・購入率(CVR)・顧客単価・リピート率の4つの掛け算です。この4つはいずれも公開後のデータを見ないと改善できません。にもかかわらず、構築費に予算を使い切って改善に回す資金がない状態は、上位の解説記事でも共通の失敗例として挙げられています。
当社が相談を受けるときにお伝えしている目安は、初年度の開発予算のうち構築に6〜8割、公開後の改善に2〜4割を残すという配分です。500万円の予算なら、構築350万〜400万円、改善に100万〜150万円という形です。改善の内容は、カゴ落ち導線の修正、検索と絞り込みの改善、レコメンドの追加、決済手段の追加、表示速度の改善など、データを見てから決まるものばかりです。だからこそ、金額ではなく「毎月動かせる工数」として確保しておくほうが機能します。当社の介護記録SaaS「CareViewer」の案件では、日本語ができるブリッジSE1名とフルスタックエンジニア2名の体制で、週次に優先順位を判断しながら継続開発を回しています。
内製と外注の切り分け表——分析と改善は社内、構築と定型作業は外へ
業務 | 推奨 | 理由 |
|---|---|---|
アクセス分析・CVR改善・客単価/リピート率の施策立案 | 内製 | 意思決定の速度が売上に直結する。外に出すと依頼・抽出・確認で時間を失う |
サイト構築・システム連携・機能開発 | 外注 | 専門スキルと工数が必要で、常時必要とは限らない |
商品登録(ささげ)・受注処理・在庫更新などの定型作業 | 外注 | 手順化でき、点数で費用が読める |
デザイン・撮影・クリエイティブ制作 | 外注 | 専門職を常時雇うより費用対効果が高い |
カスタマーサポート | 状況次第 | 顧客の声が改善の入力になるため、初期は内製、規模が出たら一部を外注 |
集客(SEO・広告運用) | 併用 | 最初は外注でノウハウを吸収し、段階的に内製へ移すのが現実的 |
※内製と外注の切り分けは、当社が約100社の相談で用いている実務上の整理です。外注すべきかどうかの判断基準は、通販マーケッターEight!「ECサイトの外注費用と業務内容」も参照しています。
要は、売上の因数に直接効く判断は社内に残し、手を動かす部分と専門性の高い構築を外に出すという線引きです。内製と外注の比較をもっと広く整理したい方は、「システム開発 内製 外注 比較」の記事もあわせてご覧ください。ここまでで費用の全体像は揃いました。最後に、継続的な改善を前提にした場合の体制と費用構造を、当社の例で具体的に示します。
オフショア・ラボ型で継続的に開発する選択肢——当社の費用構造と向き不向き

ここまでの整理で、ECサイトの費用は「構築」より「公開後にどれだけ手を入れ続けられるか」で決まることが見えてきたはずです。継続的な改善を前提にすると、都度見積もりの請負より、専属チームを月額で確保するラボ型のほうが噛み合う場面があります。当社の費用構造を公開したうえで、向く案件と向かない案件を正直に書きます。
当社の公開単価と最小構成(日本人PM+2〜3人月で月額約80万円〜)
当社TALENTBASE VIETNAMは、ホーチミンを拠点にベトナムオフショア開発の体制づくりを支援しています。2,000名以上のIT人財データベース(日本語N1〜N2相当を含む)から直接アサインするため、協力会社や紹介経由の仲介マージンが乗りません。
開発単価は公開しています。実務3年目安で月1,500USD(約22.5万円)、5年で2,000USD(約30万円)、10年クラスやブリッジSEで3,000USD(約45万円)です(1USD=150円換算目安)。当社調べでは市場相場の約1/2にあたります。最小構成は日本人PMをフロントに置いた2〜3人月で、月額約80万円からです。1名から契約でき、開始は最短2週間、増員は約1週間、縮小と交代は1か月単位で調整します。契約と支払いは日本国内法人・日本法準拠で、海外送金は不要です。
たとえば月額約80万円の体制を12か月続けると、年間で約960万円です(1USD=150円換算の目安)。中規模以上のECを一から作る場合の初期構築費と同じ規模感ですが、違いは、その予算が「一度きりの構築」ではなく「12回の改善サイクル」に変わる点です。
ECまわりの実績——ヘッドレスCMS構成のサイトと、決済アプリの新規開発から週次保守まで
当社の実績には、ヘッドレスCMS構成のWebサイト構築と、決済アプリの新規開発があります。決済アプリでは、Stripeなどの決済代行APIの統合、二要素認証、ウォレット機能、取引履歴のPDF出力を実装し、リリース後は週次でセキュリティ更新とバグ修正を行う保守体制に移行しました。ECサイトで必要になる決済・認証・帳票まわりと、フロントとバックエンドを分離する構成は、同じ技術領域です。
体制はパターンAの日本人PM/ブリッジSE+エンジニアを推奨しています。品質は日本人PMによる設計レビュー、Gitのプルリクエストによるコードレビューの標準化、リリース前のダブルチェックの3点で担保し、AWS認定11冠のエンジニアが在籍しています。
向く案件と向かない案件——継続的な改善があるかで決まる
向く案件は、①公開後も月単位で機能追加と改善が続くEC、②越境対応や多言語対応を段階的に広げていく計画がある、③基幹・物流・CRMとの連携改修が継続的に発生する、④既存サイトの保守と改善を引き継ぎたい、の4つです。改善のネタが半年分以上あるなら、月額の体制は無駄になりません。
逆に向かないのは、①要件が固まった単発の構築で、公開後の改修予定がほとんどない、②月30万円以下の小規模・不定期な開発、③既製のSaaSカートの標準機能で足りる、④社内に優先順位を判断する担当を置けない、の4つです。とくに①は、都度見積もりの請負か、既製のASP・SaaSを素直に使うほうが安く済みます。要件が固まった単発の構築に継続型の体制を当てるのは、失敗のもとです。当社にご相談いただいた場合も、その旨を率直にお伝えしています。継続開発の費用感をもう少し詳しく知りたい方は、「ラボ型開発 費用」の記事もあわせてご覧ください。
ECサイト開発の外注費用でよくある質問

ECサイトの費用について、相談の場で繰り返し聞かれる質問を5つにまとめました。社内の予算説明にもお使いください。
Q1. ECサイトの開発を外注すると、最低いくらかかりますか?
モール出店やASP・SaaSのテンプレート利用なら、サービスの利用料だけで始められます。ただし、オリジナルデザインと基本的な外部連携を外注する前提なら、制作費が別に必要です。基幹システム連携や独自の販売ロジックが入ると、要件定義から作り込むことになり、費用は一段上がります。金額の相場は、公開された一次統計が確認できないため本記事では示していません。必要な機能と連携先を一覧にしたうえで、複数社に同じ条件で見積もりを取るのが最短です。
Q2. 「一式500万円」の見積書は、どう分解すればよいですか?
要件定義・設計、デザイン、システム開発、外部連携、データ移行、商品登録、テスト、公開作業、初期の保守の9項目に分けて、それぞれの金額と工数(人日)を出してもらってください。加えて、決済代行の契約費用と手数料、サーバーとSSL、撮影、SEO初期設計、公開後の改善が含まれるかを一行ずつ確認します。この分解に応じない会社は、追加費用で揉める確率が上がります。
Q3. Shopifyのような既製SaaSと自社開発、どちらを選ぶべきですか?
標準機能とアプリで要件の8割以上が満たせるなら既製SaaSです。残り2割のためにフルスクラッチを選ぶと、初期費用が10倍近くなり、保守も自社負担になります。逆に、代替できない独自の販売フローや基幹との深い連携がある場合のみ、カスタム開発やヘッドレスコマースの構成を検討してください。
Q4. 公開後の保守費用はいくら見ておけばよいですか?
金額の相場は公開された一次統計が確認できないため示しませんが、サイトの規模と機能の多さに比例して上がります。これとは別に、改善のための予算として初年度は構築費の2〜4割を確保しておくことをお勧めします。保守契約に軽微な更新が何件まで含まれるかは、契約前に必ず確認してください。
Q5. オフショア開発にすれば本当に安くなりますか?
継続的な改善があるなら効きます。当社の公開単価は実務3年目安で月1,500USD(約22.5万円)、日本人PMフロントの最小構成で月額約80万円からで、当社調べでは市場相場の約1/2です。一方、要件が固まった単発の構築だけを安く作りたい場合は、立ち上げの学習期間があるぶん効果が出にくく、既製SaaSや国内の請負のほうが合理的な選択。
まとめ: 費用は方式ではなく要件の分解で決まる——初年度総額と3年総額で比べる
ECサイト開発を外注する費用は、どの構築方法を選ぶかで桁が変わります。モール型・ASP・SaaS型のように既製の仕組みに乗せる方式から、オープンソース型・パッケージ型、さらにフルスクラッチ型やヘッドレスコマースのように設計から作り込む方式まで、必要な工数がまったく違うためです。構築方法ごとの金額の相場は、他社が独自に集計したものしか存在せず公開された一次統計が確認できないため、本記事では掲載していません。同じ方式でも、カスタマイズ範囲・デザイン・外部連携・開発体制・サポート体制の5要因で数倍動きます。
見積もりを比べるときは、総額ではなく範囲を比べてください。決済代行の初期費用と月額、売上に連動する決済手数料、物流・WMS連携、基幹システム連携、商品データ移行、撮影とささげ業務、SEO初期設計、そして公開後の運用改善は、見積書の外に出やすい費用です。越境ECや多言語対応を加えるなら、通貨・決済・配送・翻訳の4カテゴリを別枠で見込む必要があります。カード情報の非保持化とEMV 3-Dセキュア、脆弱性対策は、2026年の新規構築では前提条件です。公開後は保守費とインフラ費を別枠で確保し、改善予算として初年度の構築費の2〜4割を残してください。
そのうえで、分析とCVR改善は社内に残し、構築と定型作業を外に出す。この線引きが、ECの外注で費用対効果を最大にする条件です。継続的な改善が続く案件なら、当社のように日本人PMをフロントに置いた2〜3人月・月額約80万円からの体制で、毎月改善を回す選択肢もあります。逆に、要件が固まった単発の構築や月30万円以下の小規模開発には向きません。内製と外注の線引きはシステム開発は内製か外注か、継続開発の費用の内訳はラボ型開発の費用相場もあわせてご覧ください。現在の体制と要件をお聞かせいただければ、どの構築方法が合うかの判断と概算見積もりでお答えします。合わない案件にはその旨も率直にお伝えします。