「DXのために内製化を進めてほしい」と経営から言われた。しかしエンジニアの求人を半年出しても、応募は数件。提示できる年収では採用市場に勝てない。一方で外注費は年々上がり、削減目標まで付いている——情報システム部門の責任者から、こうしたご相談をいただくことが増えました。内製か外注かで悩んでいる方の多くは、実は「採用できない前提で、どうするか」で悩んでいます。
先に結論を書きます。内製か外注かは二択ではありません。多くの企業にとっての現実解は、判断は内製、手は外注という形です。技術の意思決定と要件の決定を社内に持ち、実装する手は外に持つ。この形なら、エンジニアを採用できなくても技術の判断力は社内に残りますし、外注費も工数に応じて調整できます。完全内製と完全外注のあいだには、準委任のラボ型という第三の選択肢があります。なお、契約形態についての本記事の記述は一般的な整理であり、法的助言ではありません。個別の契約の判断は弁護士にご確認ください。
比較の前提もひとつ変える必要があります。費用を単年で比べないことです。内製の人件費だけを外注費と並べると内製が安く見えますが、採用費、教育の時間、離職のリスク、案件がないときの待機コストまで3年で積み上げると、順位が入れ替わることは珍しくありません。この記事では、その試算の型もお見せします。
私はTALENTBASE VIETNAMでCOOを務めています。人材業界の出身で、エンジニア採用市場の相場と難度を実務で見てきました。2018年以降、約100社のご相談を受けていますが、情報システム部門が1〜3名という企業からのご相談が最も多いのが実情です。当社はラボ型(準委任)で、日本人PMがフロントに立ち専属チームを月額で提供しています。最小構成は日本人PM+2〜3人月で月額約80万円から、1名から最短2週間で開始でき、増員は約1週間です。単価も実務3年1,500USD、5年2,000USD、ブリッジSE3,000USD(1USD=150円換算が目安)と公開しています。
この記事では、内製と外注を5つの観点で比べた表、3年間の費用試算、4つの判断軸のチェックリスト、そしてハイブリッドの4パターンを順に整理します。読み終えたら、自社のシステムを一覧にして、コアか周辺かで仕分けてみてください。全社を一括で決めようとすると議論は止まりますが、システム単位なら答えは出ます。
目次
- 内製と外注は何が違うのか
- コスト構造・スピード・ノウハウ・柔軟性・リスクの比較表
- 費用は3年で比べる
- 「外注はノウハウが残らない」は契約で解ける
- どちらを選ぶか
- コア業務か、改修頻度は高いか、社内に人はいるか、規制はあるか
- 内製の前提は「採用できて、辞めない」こと
- 2026年の前提
- 現実解はハイブリッド
- ハイブリッドの4パターン
- 判断は内製、手は外注
- 内製化でよくある失敗と、避け方
- よくある質問
- Q1. 情報システム部門が2〜3名でも内製化はできますか
- Q2. 外注のほうが高いのではないですか
- Q3. ラボ型は最低何名から始められますか
- Q4. 海外に委託すると時差や送金が問題になりませんか
- Q5. 将来内製化する前提で外注できますか
- まとめ: 判断は内製、手は外注
内製と外注は何が違うのか——5つの観点で比べる

比較記事はたくさんありますが、観点を絞らないと表が長くなるだけで判断に使えません。実務で効くのは5つです。コスト構造、スピード、ノウハウ、柔軟性、リスク。この5行で並べると、どちらが優れているかではなく、何を引き受けるかの違いだと分かります。
コスト構造・スピード・ノウハウ・柔軟性・リスクの比較表
観点 | 内製 | 外注 |
|---|---|---|
コスト構造 | 固定費(人件費)。案件がなくても発生する | 変動費。使った分だけ。ただし単価は市場相場 |
スピード | 立ち上げは遅い(採用と育成)。軌道に乗れば速い | 立ち上げは速い。要件のすり合わせに時間がかかる |
ノウハウ | 社内に残る。ただし担当者に属人化しやすい | 契約と運用しだい。放置すれば残らない |
柔軟性 | 増員は採用しだい。減らすのは難しい | 増員も減員も契約で調整できる |
リスク | 離職、属人化、技術の陳腐化 | ベンダー依存、品質のばらつき、情報の取り扱い |
内製は固定費、外注は変動費という違いが、意思決定の本質です。開発の量が年間を通じて一定なら内製が有利になりますし、波があるなら外注のほうが合理的です。自社の開発量が今後3年でどう推移するかを見ないと、この判断はできません。
費用は3年で比べる——採用費と待機コストを入れる
単年の比較は誤解のもとです。内製エンジニア1名を採用する場合、年収に加えて、採用費(人材紹介を使う場合は理論年収に対する成功報酬)、社会保険などの法定福利費、機材とライセンス、教育の時間が乗ります。さらに、辞めたときに振り出しに戻るリスクがあります。
3年で並べると、次のような構造になります。
費目 | 内製(1名) | 外注(同等の工数) |
|---|---|---|
初年度 | 採用費+年収+法定福利費+立ち上がり期間の非稼働 | 月額×12。初月から稼働 |
2年目以降 | 年収+法定福利費+昇給 | 月額×12。工数の増減が可能 |
案件が少ない月 | 費用は変わらない | 減員または一時停止ができる |
退職が発生 | 採用費と立ち上がりをやり直す | 交代の依頼で対応 |

当社は単価を公開しています。実務3年のエンジニアで月額1,500USD、5年で2,000USD、ブリッジSEで3,000USD。1USD=150円換算が目安です。相場の約1/2の水準になります(当社調べ)。ここで申し上げたいのは自社の宣伝ではなく、外注側の数字が見えていれば、内製との比較を数字で行えるということです。単価が非公開の見積もりしか手元にないと、比較の土俵に乗りません。
「外注はノウハウが残らない」は契約で解ける
外注の弱点として最もよく挙げられるのがノウハウです。これは半分正しく、半分は運用の問題です。ソースコードのリポジトリを自社側で持ち、設計書と運用手順を納品物に含め、主要な技術判断の経緯を議事録に残す。この3つを契約と運用に入れれば、外注でも資産は残ります。当社もGitでのコード管理とドキュメントの納品を標準にしています。
残らないのは、手を動かした経験だけです。それを重視するかどうかが、次の判断軸につながります。
どちらを選ぶか——4つの判断軸と、2026年の前提

全社のシステムを一括で内製化するか外注し続けるか。この問いの立て方をしている限り、議論は前に進みません。判断はシステム単位で行います。基幹システム、受発注、社内ポータル、顧客向けアプリ。それぞれ性格が違うからです。
コア業務か、改修頻度は高いか、社内に人はいるか、規制はあるか
次の4軸で、システムごとに点数をつけてみてください。
判断軸 | 内製に寄せる条件 | 外注に寄せる条件 |
|---|---|---|
コア業務か | 事業の差別化に直結する。競合に見せたくないロジックがある | 業務の効率化が目的。標準的な機能で足りる |
改修の頻度 | 週次・月次で変更が入る。仮説検証を繰り返す | 年に数回。安定稼働が主目的 |
社内のスキル | 担当できる人が在籍し、後任も見込める | 担当できる人がいない、または1名に依存している |
規制・ガバナンス | 個人データや決済を扱い、監査要件が厳しい | 一般的な業務データで、契約と管理で対応できる |
4軸すべてが内製寄りなら内製、すべて外注寄りなら外注です。混在する場合——多くの企業はここに来ます——が、後述するハイブリッドの出番になります。
この仕分けには、もうひとつ効用があります。経営会議で「なんとなく内製化」を止められることです。仕分けの結果を見せれば、どのシステムを先に手をつけるかの議論に移れます。
内製の前提は「採用できて、辞めない」こと
内製が有利とされる根拠は、スピードとノウハウの蓄積です。これは正しい。ただし前提があります。必要なときにエンジニアを採用でき、その人が辞めないことです。
私は人材業界の出身で、エンジニア採用の相場と難度を実務で見てきました。2026年時点で、経験者の採用は求人を出せば集まる状況にありません。求人を半年出して応募が数件というご相談は、珍しいものではないのです。加えて、採用できたとしても指導する人が社内にいなければ、戦力化には時間がかかります。1名採用して、その人が孤立して辞める。この失敗は本当に多い。
当社にご相談いただく企業は、情報システム部門が1〜3名という規模が中心です。この規模で内製チームを立ち上げるには、採用・育成・維持の3つを同時に成立させる必要があります。できないという話ではありません。前提が崩れているなら、前提のほうを設計し直すべきだという話です。
2026年の前提——AIで作れる範囲は広がったが、決める仕事は残る
2026年の議論では、生成AIを外せません。実装の効率は確かに上がりました。当社もAIを活用した開発体制を組んでいます。少人数でも動くものを作れる範囲は広がりました。
ただし、何を作るかを決める仕事、品質の基準を定める仕事、そして本番環境を守る仕事は残ります。AIで実装が速くなるほど、決める人の不足がボトルネックになります。内製化の議論で採用すべきなのは、手を動かす人より先に、決められる人です。逆に言えば、決める人さえ社内にいれば、手は外に持てます。
現実解はハイブリッド——第三の選択肢としてのラボ型

4軸で仕分けると、多くの企業は内製と外注が混在します。ここで無理にどちらかへ寄せる必要はありません。組み合わせを設計するほうが、結果的に速く、安く収まります。
ハイブリッドの4パターン
パターン | 内容 | 向いている状況 |
|---|---|---|
コアは内製、周辺は外注 | 差別化に直結する部分だけ社内で作る | コア業務が明確で、社内に1名以上の担当がいる |
初期は外注、運用は内製 | 立ち上げを外注し、運用と改善を引き取る | 早く立ち上げたい。運用フェーズで人を育てたい |
外注チームと社内チームの協業 | 同じバックログを共有して並走する | 開発量が多く、社内だけでは足りない |
判断は内製、手は外注 | 意思決定者だけ社内に置き、実装を外に持つ | 採用が難しく、当面は人を増やせない |

4つ目が、この記事で最もお伝えしたい形です。社内に置くのは、要件を決める人と技術の意思決定ができる人。手は外に持つ。これなら1名の確保で始められます。
判断は内製、手は外注——ラボ型(準委任)という置き方
この形を実現する契約が、準委任のラボ型開発です。請負が完成責任と引き換えに仕様を固定するのに対し、ラボ型は一定の体制を一定期間提供する契約で、月額が先に決まります。優先順位は毎月組み替えられます。自社の開発チームに近い使い方ができる、というのがラボ型の特徴です。
当社の場合、日本人PMがフロントに立ち、要件の整理、仕様の文書化、進捗管理を担います。最小構成は日本人PM+2〜3人月で月額約80万円から。1名から始められ、面談を経て最短2週間で開始、増員は約1週間、1か月単位でリプレイスメントにも対応します。エンジニアは2,000名以上の人財データベースから直接アサインします。
採用で同じ体制を作ろうとすると、募集から戦力化まで数か月から1年かかります。その期間、事業は止まります。ラボ型は、採用リスクを負わずにチームを持つための手段だとお考えください。もちろん、社内に人材が集まり、育成の仕組みもある企業なら内製が有利です。伺った状況から内製のほうが適していると判断すれば、当社はその旨を率直にお伝えします。
内製化でよくある失敗と、避け方
最後に、内製化でつまずく典型を4つ挙げます。ひとつ、コスト削減だけを目的にすること。人件費は固定費なので、開発量が少ない年は逆に高くつきます。ふたつ、1名採用して孤立させること。相談相手のいない環境では、技術の判断も品質も安定しません。みっつ、外注先が属人化していること。担当者が抜けた瞬間に止まるのは、内製の属人化と同じリスクです。よっつ、なんとなく内製化を続けること。年に一度は4軸で見直してください。
避け方は共通していて、システム単位で仕分けること、そして決める人を社内に確保することです。自社のどのシステムから始めますか。
よくある質問

内製と外注の比較について、実務でよく届く質問に答えます。いずれも、体制の方針を決める場面で繰り返し聞かれる内容です。
Q1. 情報システム部門が2〜3名でも内製化はできますか
システム単位なら可能です。全社のシステムを一括で内製化するのは現実的ではありませんが、改修頻度が高くコアに近い1システムに絞れば、少人数でも回せます。残りは外注に置いてください。
Q2. 外注のほうが高いのではないですか
単年ではそう見えることがあります。3年で採用費・法定福利費・教育の時間・案件が少ない月の待機コストまで入れると、順位が入れ替わることは珍しくありません。当社は単価を公開しているため、この試算を数字で行えます。
Q3. ラボ型は最低何名から始められますか
1名から始められます。最小構成は日本人PM+2〜3人月で月額約80万円から、面談を経て最短2週間で開始、増員は約1週間です。1か月単位でのリプレイスメントにも対応しています。
Q4. 海外に委託すると時差や送金が問題になりませんか
ベトナムと日本の時差は2時間です。当社は日本国内法人で日本法に準拠した契約のため、海外送金は不要で、円建てでご請求します。
Q5. 将来内製化する前提で外注できますか
できます。ソースコードのリポジトリを自社で持ち、設計書と運用手順を納品物に含め、技術判断の経緯を議事録に残してください。初期は外注、運用は内製というパターンへの移行。
まとめ: 判断は内製、手は外注——採用を前提にしない内製化から始める
内製か外注かは二択ではありません。比較はコスト構造・スピード・ノウハウ・柔軟性・リスクの5観点で行い、費用は単年ではなく3年で見てください。内製は固定費、外注は変動費です。内製の人件費だけを外注費と並べると内製が安く見えますが、採用費(人材紹介を使う場合は理論年収に対する成功報酬)、法定福利費、教育の時間、案件が少ない月の待機コスト、離職したときのやり直しまで積み上げると、順位が入れ替わることは珍しくありません。
判断はシステム単位で行います。軸は4つです。事業の差別化に直結するコア業務か、改修の頻度は高いか、社内に担当できる人がいて後任も見込めるか、規制やガバナンスの要件が厳しいか。全社を一括で決めようとすると議論は止まりますが、システム単位なら答えが出ます。多くの企業は内製と外注が混在し、そこがハイブリッドの出番になります。コアは内製で周辺は外注、初期は外注で運用は内製、社内チームと外注チームの協業、そして判断は内製で手は外注。この4パターンのどれかに落ち着きます。
内製化でつまずく典型は、コスト削減だけを目的にすること、1名採用して孤立させること、外注先が属人化していること、なんとなく続けることの4つです。避け方は共通していて、システム単位で仕分け、決める人を社内に確保することです。2026年時点では、生成AIで実装の効率は上がりましたが、何を作るかを決める仕事は残ります。採用すべきは手を動かす人より先に、決められる人です。契約形態の違いはラボ型開発とSESの違い、費用の読み方はシステム開発の見積もりの内訳もあわせてご覧ください。当社のラボ型は準委任で、日本人PMがフロントに立ち、最小構成は日本人PM+2〜3人月の月額約80万円から、1名・最短2週間で開始できます。現在の体制と要件をお聞かせいただければ、内製との比較を含めた概算見積もりでお答えします。内製のほうが適していると判断した場合は、その旨も率直にお伝えします。