「オフショア開発を検討しているが、社内に英語ができる人がいない。それでも発注できるのか」——オフショアを検討し始めた企業の担当者から、こうした相談をよく受けます。日本語対応と言われても細かいニュアンスが伝わるのか、ブリッジSEに任せきりでその人次第にならないか、英語で直接やり取りしたほうが安くて速いのか。言語の問題は、検討の最初の壁になるものです。
結論から言うと、オフショア開発に英語が必要かどうかは「国と体制」で決まります。ベトナムは日本語人材とブリッジSEが厚く、日本人PMをフロントに置く体制なら発注側に英語は要りません。インドやフィリピンは英語が前提です。そして英語で進めるにせよ日本語で進めるにせよ、精度を決めるのは語学力ではなく「要件の言語化」と「確認の型」だというのが実情です。
言語の選び方と伝え方の型を先に決めておけば、どの国のどの体制でも仕様のずれは小さくできます。逆に、「日本語対応だから大丈夫」「英語ができるから大丈夫」と語学力だけで安心すると、3か月目に画面が想定と違う、という失敗のもとになります。この違いは、契約前の設計で決まります。
本記事では、英語が必要かの結論と英語・日本語・ブリッジSE経由の3パターン比較(コスト・精度・スピード・向く案件)、英語で進める場合のコツと使える表現(仕様書の書き方・曖昧語の排除・図と表・チケット運用・確認の型)、日本語で進める場合の限界と日本人PM・ブリッジSEの役割、当社の位置づけと英語ベースが合う案件、よくある質問の順に解説します。
私は人材業界の出身で、2018年からホーチミンでベトナムオフショア開発の体制づくりに携わり、約100社の相談に乗ってきました。言語で失敗した相談に共通するのは、たった2つです。この記事を読み終えるころには、自社の案件でどの言語・どの体制を選べばよいか、そのときに何を用意すればよいかが判断できるはずです。
目次
- オフショア開発に英語は必要か
- 国で決まる: ベトナムは日本語人材とブリッジSEで日本語、インド・フィリピンは英語前提(白書2025年版)
- 3パターン比較表(コスト・精度・スピード・向く案件): 英語で直接 / 日本語で直接 / ブリッジSE経由
- 「英語で直接」のメリットと代償
- 判断基準は2つ: 社内に英語で仕様を書ける担当がいるか、日本語で細かく詰める案件か
- 英語で進める場合のコツと使える表現
- 仕様書の書き方(表): 日本語の癖→伝わる書き方(1文1要件、数値化、受け入れ条件、図と表)
- 曖昧語の排除
- チケット運用と確認の型
- 翻訳ツール・生成AIの使い方と限界
- 日本語で進める場合の限界と、日本人PM・ブリッジSEの役割
- N1でも業務用語・行間・「察してほしい」は伝わらない
- ずれを誰が埋めるか(表): 要件の言語化・優先順位・レビューは日本人PM/ブリッジSEの仕事。個人依存を仕組みで補う
- 当社の位置づけ: 日本語N1〜N2相当を含む人財データベースと日本人PMフロント。発注側は英語不要
- 英語ベースのチームが合う案件
- オフショア開発の英語に関するよくある質問
- Q1. 英語が全くできなくても発注できますか?
- Q2. 翻訳ツールや生成AIがあれば英語は要りませんか?
- Q3. ブリッジSEの英語力や日本語力はどう見ればよいですか?
- Q4. 日本語対応のエンジニアがいれば安心ですか?
- Q5. 英語で直接進めるのと日本語で進めるのは、どちらが安いですか?
- まとめ: 英語が要るかは国と体制で決める
オフショア開発に英語は必要か——答えは「国と体制で決まる」。英語・日本語・ブリッジSE経由の3パターン比較

「オフショア=英語が必須」というイメージは根強いものの、当社がホーチミンで約100社の相談を受けてきた実感では、日本語で回せる委託先は年々増えており、英語は必須ではありません。ただし「必須ではない」で終わると判断材料になりません。この章では、英語が要るかどうかを国と体制の2軸で整理し、英語で直接・日本語で直接・ブリッジSE経由の3パターンをコスト・精度・スピード・向く案件で比較します。
国で決まる: ベトナムは日本語人材とブリッジSEで日本語、インド・フィリピンは英語前提(白書2025年版)
第一の軸は国です。オフショア開発白書2025年版(オフショア開発.com、2026年9月21日確認)では、日本企業の委託先はベトナムが43%で1位、中国21%、インド14%、フィリピン5%です。ベトナムは長年の対日実績で日本語対応のブリッジSEが厚く、日本語学習者も約17万人と多いため、日本語で細かく詰める継続開発の受け皿になっています。私が拠点を置くホーチミンでも、日本語能力試験N1〜N2相当のエンジニアが日本向け案件の中心です。
一方、インドは英語が中心で時差3.5時間、フィリピンは英語が公用語で時差1時間です。どちらも日本語人材はベトナムより少なく、社内に英語で回せる担当がいるか、日本人ブリッジSEを置く会社を選ぶのが前提になります。つまり、同じ「オフショア開発」でも、ベトナムを選べば日本語で進める選択肢があり、インドやフィリピンを選べば英語で進めることになる。国の選び方の全体像は「オフショア開発 国別比較」の記事にまとめています。
3パターン比較表(コスト・精度・スピード・向く案件): 英語で直接 / 日本語で直接 / ブリッジSE経由
第二の軸は体制、すなわち「誰が要件を言語化して開発チームに渡すか」です。発注側が英語で直接渡すのか、日本語で直接渡すのか、ブリッジSE(または日本人PM)が間に立って渡すのかで、費用と精度、スピードが変わります。
パターン | コスト | 精度 | スピード | 向く案件 |
|---|---|---|---|---|
英語で直接(発注側が英語で仕様を書き、エンジニアとやり取り) | ブリッジSE費用(当社公開単価で月3,000USD・約45万円)が不要。代わりに発注側の言語化・管理工数が増える | 発注側の英語仕様書の質に依存。日本語の癖が英語に出ると下がる | 往復が1段階で最も速い。ただし確認が甘いと手戻りで遅くなる | 英語圏向けサービス、社内に英語で仕様を書けるPMがいる、インド・フィリピン活用 |
日本語で直接(日本語ができるエンジニアに日本語で依頼) | ブリッジSE費用は不要だが、日本語人材の単価はやや高め。発注側の管理工数は残る | エンジニアの日本語レベルに依存。N1でも業務用語・行間は伝わらない | 往復は1段階。ただし「分かったつもり」のずれが後で出やすい | 小規模の改修・保守、発注側に要件を日本語で細かく書ける担当がいる |
ブリッジSE経由(日本人PMまたは日本語ブリッジSEが要件を言語化して渡す) | ブリッジSE/PM費用がかかる(当社は日本人PMフロント+2〜3人月で月額約80万円〜)。発注側の管理工数は最も軽い | 要件の言語化・優先順位・レビューをブリッジSEが担うため最も安定。ただしその人の能力に依存 | 往復は2段階で伝達に時間がかかる。会議体を決めれば週次で回る | 要件が動く継続開発、発注側に英語・技術の担当がいない、日本語で細かく詰める案件 |

費用の欄は当社の公開単価(1USD=150円換算目安)を使いましたが、他社では体制やスキルスタックにより変動します。注意していただきたいのは、「英語で直接」が最も安いように見えて、発注側の言語化と管理の工数を金額に換算すると差が縮まることです。ブリッジSE費用を削って社内の担当が月40時間を仕様の英訳と確認に使えば、削減分は消えます。
「英語で直接」のメリットと代償——委託先と人材の選択肢が広がり、ブリッジSE依存が減る。代わりに言語化と管理工数が発注側に残る
英語で直接進めるメリットは、当社が約100社の相談を受けてきた経験から次の3点に整理できます。第一に、委託先と人材の選択肢が広がります。インドやフィリピンのように英語が中心の国も候補になり、「英語が話せる×技術力がある」人材は「日本語が話せる×技術力がある」人材より圧倒的に多い。第二に、ブリッジSEや通訳の費用と、伝達の1段階分の時間が要りません。第三に、ブリッジSE個人への依存が減り、その人の退職でプロジェクトが崩れるリスクが下がります。
代償は、要件の言語化と日々の管理が発注側に残ることです。英語で直接進めた相談で失敗に至った例に共通するのは、英語力の不足ではなく、「日本語の会議の議事録をそのまま英訳して仕様書にした」ことでした。主語のない文、「適宜」「いい感じに」といった曖昧語、行間で察してもらう前提は、翻訳の精度に関係なく仕様をずらします。英語で直接進めるなら、次章の「伝わる仕様書と確認の型」を先に整えることが条件です。
判断基準は2つ: 社内に英語で仕様を書ける担当がいるか、日本語で細かく詰める案件か
以上を踏まえると、判断基準は2つに絞れます。1つ目は「社内に英語で仕様を書き、週次で確認を回せる担当がいるか」。いれば英語で直接が候補になり、インド・フィリピンまで選択肢が広がります。いなければ、日本語で回せるベトナムでブリッジSEか日本人PMを置く体制が現実的です。2つ目は「日本語で細かく詰める案件か」。業務システムの継続開発や日本の商習慣に沿ったUIのように、日本語の要件が頻繁に動く案件は、日本語で言語化できる体制のほうが手戻りが少なくなります。
私が相談を受けるときも、この2つを最初に確認します。「英語ができないからオフショアは無理」ではなく、「英語ができないなら、日本語で回せる国と体制を選ぶ」が正しい判断です。では、英語で進めると決めた場合、何を用意すればよいのか。次章で仕様書の書き方から確認の型まで、使える表現とあわせて整理します。
英語で進める場合のコツと使える表現——伝わる仕様書、曖昧語の排除、図と表、チケット運用、確認の型

英語で進めると決めた場合に用意すべきものは、ネイティブ並みの英語力ではありません。オフショア開発のやり取りは技術的なトピックが中心です。中高生レベルの英語とテキストベースの運用があれば、意思疎通は成立します。私自身、ベトナムの大手IT企業でプライム案件を上流から下流まで担当した経験から言えるのは、精度を決めるのは語学力ではなく「要件の言語化」と「確認の型」だということです。この章では、仕様書の書き方、曖昧語の排除、チケット運用と確認の型、翻訳ツールの使い方の順に、使える表現とあわせて整理します。
仕様書の書き方(表): 日本語の癖→伝わる書き方(1文1要件、数値化、受け入れ条件、図と表)
日本語の仕様書には、日本人同士なら通じる「癖」が入っています。主語を省く、複数の要件を1文に詰める、「使いやすく」「適切に」で済ませる、完成の条件を書かない、文章だけで画面遷移を説明する。これらは英訳しても残り、エンジニアは自分の解釈で埋めるしかありません。次の表は、私が相談先の仕様書をレビューするときに直してもらう5つの癖と、伝わる書き方です。
日本語の癖 | 何が起きるか | 伝わる書き方 | 英語での例 |
|---|---|---|---|
主語と対象を省く(「保存できるようにする」) | 誰が・何を・どこに保存するのかが解釈任せになる | 主語・対象・条件を毎回書く。1文1要件 | The user can save the draft to the server by clicking "Save". |
1文に複数の要件を詰める | 一部だけ実装され、残りが抜ける | 番号付きで要件を分ける。1行1要件で箇条書き | 1. Validate the email format. 2. Show an error message below the field. |
形容詞で済ませる(「速く」「使いやすく」) | 基準がないので検証できない | 数値と条件に置き換える | The list must load within 2 seconds for up to 1,000 records. |
完成の条件を書かない | 「できました」の基準が発注側とずれる | 受け入れ条件(Acceptance Criteria)を要件ごとに書く | Done when: the test cases 1–5 pass and the PR is reviewed. |
画面遷移や状態を文章だけで説明する | 分岐や例外が抜ける | 図(画面遷移図・フロー)と表(状態×操作)で示し、文章は補足に | See Figure 2 for the screen flow. Table 1 lists each state and the allowed actions. |

大事なのは、この5つが「英語の問題」ではなく「日本語の要件の問題」だという点です。日本語のまま日本語のエンジニアに渡しても、同じずれが起きます。仕様書を英語で書く前に、日本語の段階で主語・対象・数値・受け入れ条件・図表を揃えておけば、英訳は機械翻訳でもかなりの精度で通ります。
曖昧語の排除——「いい感じに」「適宜」「なるはや」、和製英語・略語・二重否定
仕様書だけでなく、日々のチャットにも曖昧語は紛れ込みます。「いい感じに調整して」「適宜対応で」「なるはやで」は、日本人同士でも解釈が分かれる表現で、英語にすると意味が消えます。「いい感じに」は基準を、「適宜」は条件を、「なるはや」は期日を、それぞれ具体的に書き換えるのが原則です。たとえば「なるはやで」は "by Thursday 18:00 JST" のように日付と時刻とタイムゾーンで書きます。
当社が現場で繰り返し注意している翻訳時の落とし穴は3つです。日本独自の略語(「メアド」「リスケ」)は元の語に戻してから訳す、二重否定(「悪くはない」)は使わない、和製英語(「クレーム」は complaint、「ノートパソコン」は laptop)に気をつける、の3つです。加えて、私が必ず伝えているのは「依頼と情報共有を分ける」ことです。"FYI"(参考まで)と "Action required"(対応が必要)を件名や冒頭に付けるだけで、エンジニアが動くべきメッセージか判断できるようになり、「言ったのに動いてくれない」という不満の多くは消えます。
チケット運用と確認の型——1チケット1論点、完了の定義、復唱と書面合意。使える表現集(表)
英語でのやり取りは、口頭よりテキストが基本です。やり取りの大半をテキストに寄せれば、発音やリスニングの不安はチケットとチャットで補えます。チケット運用の原則は3つ。1チケット1論点にして複数の話題を混ぜない、完了の定義(Definition of Done)をチケットに書く、口頭で決めたことは必ずチケットかチャットに書き戻す、です。
確認の型は「復唱と書面合意」です。指示を出したら相手に自分の言葉で言い直してもらい、会議の最後に決定事項を箇条書きで送って "Please confirm" と締める。相手の "Yes" や "OK" は「理解した」ではなく「聞いた」の意味であることが多いため、誤解がないかの確認を怠らないことが最大のコツです。次の表は、私が相談先に渡している最小限の表現集です。
場面 | 使える表現 | 補足 |
|---|---|---|
依頼(対応が必要) | Action required: Please implement the validation described in ticket #123 by Friday. | 件名や冒頭に Action required を付ける。期日を明記 |
情報共有(対応不要) | FYI: The client has approved the design. No action is needed. | 依頼と分ける |
理解の確認(復唱依頼) | Could you summarize your understanding of the requirement in your own words? | Yes/No で終わらせない |
完了の定義 | This ticket is done when all acceptance criteria are met and the PR is approved. | チケットの末尾に定型で置く |
不明点の確認 | Just to confirm, do you mean A or B? | 二者択一で聞くと答えやすい |
決定事項の書面合意 | Here is the summary of today's decisions. Please confirm by replying "Confirmed". | 会議の最後に必ず送る |
遅れの報告を促す | If you expect any delay, please let me know as early as possible with the reason. | 遅れの報告を責めない文化を先に作る |
優先順位の指示 | Please prioritize #45 over #46. #46 can wait until next week. | 「両方」ではなく順番を明示 |
表現は平易なもので十分です。難しい英語より、短い文で条件と期日を書き、復唱してもらう。この型を守ったチームは、英語力にかかわらずずれが小さくなります。
翻訳ツール・生成AIの使い方と限界——曖昧な日本語は曖昧な英語になる
機械翻訳と生成AIの精度は上がり、テキストベースのやり取りなら読み書きの負担はかなり減りました。他の解説記事も揃って翻訳ツールの活用を勧めていますが、限界も一致しています。翻訳結果は必ず見直すこと、略語や誤字が混じると正しく訳されないこと、そして最終判断は人が行うことです。私が付け加えるなら、「曖昧な日本語は曖昧な英語になる」という一点です。「適宜対応してください」を翻訳ツールに入れても、出てくるのは同じ曖昧さの英語で、精度は上がりません。
翻訳ツールは、この章で整えた日本語(主語・対象・数値・受け入れ条件・期日が揃った文)を英語に写す道具として使うのが正しい使い方です。生成AIに「この仕様書の曖昧な表現を指摘して」と頼み、指摘された箇所を日本語の段階で直してから訳す、という使い方も有効です。教訓は一つ。英語で進めるときの敵は英語力ではなく、日本語の曖昧さです。ここを整えずにツールに頼るのは失敗のもとです。
日本語で進める場合の限界と、日本人PM・ブリッジSEの役割——当社の位置づけと、英語ベースが合う案件

「日本語対応のエンジニアがいるなら、英語の心配はないですね」——ここで安心するのは早い、というのが約100社の相談を受けてきた私の実感です。日本語で進める体制にも限界があり、その限界を誰が埋めるかを決めておかないと、英語で進める場合と同じずれが起きます。この章では、日本語で起きる3つのずれ、それを埋める日本人PM・ブリッジSEの役割、当社の位置づけ、そして英語ベースのチームのほうが合う案件を正直に整理します。
N1でも業務用語・行間・「察してほしい」は伝わらない——日本語で起きる3つのずれ
日本語能力試験のN1は、新聞の論説や抽象度の高い文章を理解できる水準ですが、測っているのは日本語の理解力であって、日本の業務知識や暗黙の前提ではありません。日本語で進める案件で起きるずれは、主に3つです。第一に業務用語です。「締め処理」「消込」「稟議」「月次」といった言葉は、N1のエンジニアでも実務で触れていなければ意味が分かりません。第二に行間です。「前回と同じ感じで」「よしなに」は、前回の文脈を共有していない相手には伝わりません。第三に「察してほしい」という前提です。日本の顧客の要望を、言われていない部分まで汲み取って実装することを期待すると、実装は発注側の想像と違うものになります。
日本語対応と聞いて安心し、「いい感じに」「適宜」のまま依頼した相談が失敗に至るのは、この3つが原因です。エンジニアの日本語レベルの問題ではなく、要件が言語化されていないことの問題であり、前章の「伝わる仕様書」の型は日本語で進める場合にもそのまま要ります。
ずれを誰が埋めるか(表): 要件の言語化・優先順位・レビューは日本人PM/ブリッジSEの仕事。個人依存を仕組みで補う
3つのずれを埋めるのは、発注側の担当か、日本人PMか、日本語のブリッジSEです。誰がどこまで担うかを表にしました。
ずれ | 発注側だけで進める場合 | 日本人PM/ブリッジSEを置く場合 | 個人依存を補う仕組み |
|---|---|---|---|
業務用語が伝わらない | 発注側が用語集を作り、毎回説明する | PM/BrSEが業務を理解し、用語集と仕様書に落とす | 用語集をリポジトリで共有し、チケットの語彙を統一 |
行間・前回の文脈が伝わらない | 発注側が毎回背景から書く | PM/BrSEが文脈を保持し、背景を補って指示する | 決定事項ログと設計ドキュメントを残す |
察してほしい要望が実装されない | 発注側が要望を要件と受け入れ条件に書き換える | PM/BrSEが顧客の要望を聞き取り、要件に翻訳する | 設計レビュー・コードレビュー・リリース前チェックで検知 |
優先順位が伝わらない | 発注側が順番を明示する | 週次の定例でPM/BrSEが優先順位を整理する | バックログを1本にし、順位を可視化 |
ブリッジSEに求めるものは、英語力や日本語力の高さそのものではありません。業務を理解して要件に翻訳できるか、優先順位を整理できるか、レビューで品質を止められるか、の3点です。「ブリッジSE 英語」で検索される方が気にする語学力は、この3点を満たすための手段に過ぎません。そして前の委託先でブリッジSEの退職と同時に品質が落ちた、という相談が示すとおり、個人の能力に依存した体制は要注意です。用語集・決定事項ログ・レビューの仕組みで、人が替わっても精度が保てるようにしておく必要があります。役割の詳細は「ブリッジSE」の記事と「オフショア開発 日本人PM」の記事で整理しています。
当社の位置づけ: 日本語N1〜N2相当を含む人財データベースと日本人PMフロント。発注側は英語不要
当社(TALENTBASE VIETNAM)は、言語の壁を個人の語学力ではなく体制で越える立場です。グループの人材紹介事業が持つ2,000名以上のIT人財データベース(日本語N1〜N2相当を含む)から直接アサインし、推奨するパターンAでは日本人PMまたはブリッジSEをフロントに置きます。発注側は日本語で要望と優先順位を伝えるだけでよく、英語は不要です。日本人PMが要件を言語化して設計レビューを行い、Gitプルリクエストによるコードレビューを標準化し、リリース前にダブルチェックする3点で、前節の「個人依存を補う仕組み」を体制に組み込んでいます。契約前にはお客様と候補者が面談し、1名から最短2週間で開始、増員は約1週間、交代は1か月単位です。
介護記録SaaS「CareViewer」の事例では、日本語ブリッジSE1名とフルスタックエンジニア2名の体制で、お客様は英語を一切使わず、週次の優先順位判断だけで開発を回し、コストは従来の半分以下になりました。「想像以上にエンジニアのレベルが高い」という声をいただいていますが、これは日本語の巧拙ではなく、要件を言語化して渡す体制が機能した結果です。
英語ベースのチームが合う案件——英語圏向けサービス、インド活用、社内に英語で回せるPMがいる場合は正直にそちらを
一方で、当社の日本語前提の体制が最適でない案件もあります。第一に、英語圏向けのサービス開発です。UIの文言や顧客サポートまで英語で作るなら、仕様も英語で書いたほうが一貫し、フィリピンや英語ベースのチームが向きます。第二に、AI・データ分析や大規模SIでインドの技術層を使いたい案件です。白書2025年版でインドの単価は二桁下落しており、英語で回せる体制があるなら有力な選択肢です。第三に、社内に英語で仕様を書き、週次で確認を回せるPMがいる場合です。この場合はブリッジSE費用を省いて英語で直接進めるほうが、コストと速度の両面で合理的なことがあります。
こうした案件に日本語前提の体制を勧めることはしません。逆に、日本語で細かく詰める継続開発で、社内に英語・技術の担当がいないなら、当社の体制が最も無理のない選択肢です。自社の案件はどちらに近いでしょうか。次のFAQで、相談の場でよく聞かれる疑問に答えます。
オフショア開発の英語に関するよくある質問

オフショア開発と英語について、相談の場で繰り返し聞かれる質問を5つにまとめました。社内で言語と体制を検討するときの材料にお使いください。
Q1. 英語が全くできなくても発注できますか?
できます。日本語人材とブリッジSEが厚いベトナムで、日本人PMまたは日本語ブリッジSEをフロントに置く体制を選べば、発注側は日本語だけで進められます。当社のパターンAはこの体制で、1名から最短2週間で開始できます。ただし「日本語で要望と優先順位を言語化して伝える」役割は発注側に残ります。
Q2. 翻訳ツールや生成AIがあれば英語は要りませんか?
読み書きの負担はかなり減りますが、曖昧な日本語は曖昧な英語になります。主語・対象・数値・受け入れ条件・期日を日本語の段階で揃えてから訳し、翻訳結果は必ず見直してください。口頭の会議は翻訳ツールだけでは難しいため、テキスト中心の運用と復唱・書面合意の型を組み合わせるのが現実的です。
Q3. ブリッジSEの英語力や日本語力はどう見ればよいですか?
語学の資格より、業務を理解して要件に翻訳できるか、優先順位を整理できるか、レビューで品質を止められるかの3点で見てください。契約前の面談で、自社の業務の説明を聞いてもらい、その場で要件を言い直してもらうと実力が分かります。当社では契約前にお客様と候補者が面談します。
Q4. 日本語対応のエンジニアがいれば安心ですか?
安心とは言えません。N1のエンジニアでも、業務用語・行間・「察してほしい」要望は伝わりません。要件を言語化する担当(発注側か日本人PM/ブリッジSE)と、用語集・決定事項ログ・レビューの仕組みを用意してください。
Q5. 英語で直接進めるのと日本語で進めるのは、どちらが安いですか?
単価だけならブリッジSE費用(当社公開単価で月3,000USD・約45万円)を省ける英語直接のほうが安く見えます。ただし、発注側の仕様の英訳と確認の工数を金額に換算すると差は縮まり、手戻りが出れば逆転します。決め手は単価ではなく、社内に英語で仕様を書いて週次で回せる担当がいるかどうか。
まとめ: 英語が要るかは国と体制で決める——精度を決めるのは語学力ではなく言語化と確認の型
オフショア開発に英語が必要かどうかは、委託先の国と体制で決まります。白書2025年版でシェア43%のベトナムは日本語人材とブリッジSEが厚く、日本人PMをフロントに置く体制なら発注側に英語は要りません。インド(英語中心・時差3.5時間)やフィリピン(英語公用語・時差1時間)は英語が前提です。英語で直接・日本語で直接・ブリッジSE経由の3パターンは、コスト・精度・スピード・向く案件が異なり、判断基準は「社内に英語で仕様を書いて週次で回せる担当がいるか」「日本語で細かく詰める案件か」の2つです。
英語で進める場合も日本語で進める場合も、精度を決めるのは語学力ではなく、主語・対象・数値・受け入れ条件・図表を揃えた仕様書、曖昧語の排除、1チケット1論点と完了の定義、復唱と書面合意という確認の型です。翻訳ツールや生成AIは、整えた日本語を写す道具として使ってください。日本語で進める場合も、N1のエンジニアに業務用語・行間・「察してほしい」要望は伝わらないため、要件を言語化する日本人PM・ブリッジSEと、用語集・決定事項ログ・レビューの仕組みで個人依存を補う必要があります。
当社は日本語N1〜N2相当を含む2,000名以上の人財データベースから直接アサインし、日本人PMをフロントに置く体制を1名から最短2週間で組むことで、発注側が英語を使わずに継続開発を回せるようにしています。一方で、英語圏向けのサービス、インドの技術層を使う先端案件、社内に英語で回せるPMがいる場合は、英語ベースのチームのほうが合います。体制の全体像はオフショア開発の進め方と体制設計、日本人PMの役割はオフショア開発の日本人PMもあわせてご覧ください。現在の体制と要件をお聞かせいただければ、どの言語・どの体制が向くかの整理と概算見積もりでお答えします。合わない案件にはその旨も率直にお伝えします。